しゃざい

現在の半分の歳、つまり18歳のころ、
会社の同期の人達と旅行に行った。

同期であるもののずっと歳上のお姉さんが
「ああ！すっごくお腹すいちゃった！！」
と言ってオムライスの大盛りを頼んだくせに
それを半分くらい残したのを見て
私は嫌悪を通りこして殺意を抱いた。

自ら大盛りを頼んでおいて残すとはなんと恥知らずな女だ！大盛りを頼んだのなら吐いてでも喰え！！


時が経って現在。
現在のわたしはあのときのお姉さんの気持ちがよく分かる。
「すごいお腹すいたっっ！」
と思っていても、いざ食べ始めるとどうにも箸が進まない。
そういうことが、35歳過ぎたあたりから時々起こるようになってきた。
逆に「あまり食べたくないな」と思っていたのに、食べ始めるとぺろっと食べてしまうということもある。

さすがに過去の自分に殺されたくないので大盛り頼んで残すという行為には及んでいない。というか、大盛りを頼まなくなった。いや、頼めなくなった。お腹がすいた！と思っても「ここなら間違いなくペロリと食べれるな」という確信がなければ大盛りはやめておく。なんだか寂しいことであるが仕方ない。

こういうときに、仕事で若いコたちに囲まれて旅行にでも行ったら。

つい浮かれて「大盛り！」と頼むかもしれない。
そして食べられなくて残すかもしれない。
無理に喰ったりしたら本当に吐いちゃうかもしれないもの。


あの時にお姉さんに何かを言ったわけでもないのだけれど（殺意は伝わってしまったかもしれないけど）、お姉さんのところに行って土下座して謝りたい気分である。