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小室直樹を読む  天皇恐るべし を読む

2010-02-20 08:44:27 | 日記
第七章 天下大乱

崇徳天皇が皇位を奪われ、鳥羽上皇と美福門院とのあいだの皇子体仁(ナルヒト)親王が3歳で即位した。近衛天皇である。
永治元年1141年の冬であった。

崇徳天皇は23歳で上皇にまつりあげられた。しかし実権は鳥羽上皇が握ったまま、為す事も無く過ぎた。

それから14年・・・突然近衛天皇が崩御した。宝算17歳。
近衛天皇は皇子も無く崩御した。

崇徳上皇はまだ37歳。ほくそえんだかどうか・・・


皇位継承は当然鳥羽上皇第一子である崇徳上皇が再び継ぐか、彼の皇子重仁親王に継がせるしかない。

ところがここに出てきた美福門院
「わが子近衛天皇が死んだのは、崇徳上皇が呪詛したからです」と鳥羽上皇に訴えた。

鳥羽上皇は美福門院にメロメロ。美福門院のいいなり。
「なにお小癪な崇徳め」といったかどうか。皇位継承レースから崇徳は外された。

皇位を継いだのは、鳥羽上皇第四子雅仁親王であった。後白河天皇である。
美福門院の強い推薦があった。

この人選に公家さんも世人も驚いた。後白河誰?
まったく評判になったことのない親王であったからだ。

しかし、驚きのより根本的な理由は、その相続順序であった。

栗山潜鋒は力説する・・・・
以下「保建大記」を意訳

「皇位ほど貴いものは無く、天人これにすがり生きていける。ゆえに皇位継承順序ほど大切なものは無い。
 それを鳥羽上皇は恣意的に一婦人の意見によって皇嗣を決定した。
その上、関白忠通までもが美福門院に諂い、こんな暴挙に賛成した・・・」
「皇位継承は天倫の序によって決められるべきで、恣意的に決めるものではない・・」

これが「保建大記」のテーマの一つである。

栗山潜鋒のいう「天倫の序」とは、長子相続法のことである。

長子相続とは相続順位が、父子相続を基本として、兄から弟へ、姉から妹へと順位が一義的に決められていることをいう。

鳥羽上皇から崇徳天皇の相続は、父(実父かどうかについては異論もある)から第一子相続である。

崇徳天皇から近衛天皇は、第一子から第八子、兄から弟への相続である。

それが近衛から後白河は、第八子から第四子への相続となり「天倫の序」が崩れる。

皇位継承は日本の根本規範である。
この根本規範が天皇家自らによって壊された。
しかも政権を支える関白(関とは:あずかる 白とは:もうす の意)忠通までもが共同謀議するとは。

栗山潜鋒の追求が始まる
「自分の家を自分で壊すということであれば、他人がこれを止めさせることは出来ない。
 自壊する国は、人の力でとめる事は出来ない」

これが潜鋒の「保建大記」の要諦である。
彼はいう
「歴史の本を読んできて、ここのところへくると、本を閉じたくなる。涙があふれてどうしようもなくなる。こういうことは必ずしも昔の仁人志士だけではない・・・」

皇位継承という国の根本規範が崩壊した。
その他の規範もつぎつぎと融解するだろう。

自壊する国は、人の力で止めることはできない・・・・

社会は大混乱する・・・・・・・

第七章 天下大乱 はこれで終わります

次回は第八章 日本皇道の失墜 を読みます。