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小室直樹を読む  奇蹟の今上天皇 を読む

2010-05-15 16:29:21 | 日記
第四章 日本人は「天皇教」だ

日本人は元来、行動を合理的に計画することが下手であった。非合理的な衝動や情念に動かされやすい。

このような行動様式を、徹底的に変えたのが軍隊である。
日本の軍隊とは天皇教のための禁欲を作り上げるための修道院の役割をしたのではないのか。

人々が非合理的な衝動や情念に動かされること無く、目的合理的に行動するようになる事。
これぞ、近代軍隊や、近代経済(資本主義あるいは社会主義)がまともに動く要件である。

日本人の行動様式を、前近代的非合理なものから、近代的目的合理的なものにしたこと。
ここに天皇教の修道院たる帝国陸海軍の最大意義がある。

もっとも、大多数の軍人の行動は目的合理的行動からほど遠いものであった。
しかし、軍隊教育による目的合理的行動教育の重要性は強調されすぎることは無い。

戦前において「禁欲」と目的合理的行動は、天皇の軍隊の中だけにあった。

その軍隊の中だけにあった「天皇教」が、敗戦後復員してきたものたちによって、社会の中に入っていった。

それは、中世ヨーロッパにおいて、「禁欲」がカトリック修道院の中だけにあったものが、カルバン派などの禁欲的プロテスタンティズムによって、この「禁欲」を世間一般の倫理としたように。

天皇教によって、「禁欲」と目的合理的行動が広く社会一般の倫理となり、資本主義社会を
構築する条件ができた。
そして、わが国は戦後驚異的経済発展をとげたのである。

※若干疑問もわく。小室は戦後の経済発展は、天皇の奇蹟を強調するためなのか、戦争中吹かなかった神風がまとめて吹いたため、としていたのでは。小室の天皇教分析に従うと、経済発展は軍隊教育にあるのであって神風の奇蹟ではなくなる・・・・・のでは
それはさておき、先に進みます。

日本人は天皇教徒であり、その典型的な例が小野田氏と横井氏である。
その天皇教も危うく倒れんとした事がある。言うまでも無く大東亜戦争である。

この危機を天皇は見事に乗り切った。何が天皇と天皇教を守ったのか。


孔子は、政治で一番大事なものは「信」であるといった。

子貢が孔子に問うた
「政治に大切なものはなにか」
孔子曰く
「食糧と軍備と、人民に信を持たせることだ」
子貢はさらに
「この三つのうち、やむを得ず捨てるならどれを先に捨てるか」
孔子
「軍備だ」
子貢はさらに
「どうしてもやむを得ず捨てるとしたら、この二つのうちどれか」
孔子
「食糧をすてる。昔から誰にも死はあるが、人民は信がなければ安定しない」
  論語 顔淵 第十二

信のなかでも政治的に特に重要なのが、君主と国民のあいだの信頼関係である。
君臣間の信頼関係がないと、無規範状態(アノミー)が発生して、国は成り立たない。いつ革命が起きてもおかしくないのだ。

経済破綻と食糧難で、餓死者がでるようになっても、信頼関係さえあれば国民は必死に働き、経済復興できる。

敗戦により経済破綻することとなった対米英戦争。この戦争こそ天皇が最も虞れ、その阻止のためあらゆる努力を集中した。

では、なぜ天皇は最後には開戦の許可を与えたのか。
終戦のときの如く、聖断によって開戦をくい止めることはできなかったのか。

この疑問をもつものは多い。
このなぞを解くことこそ本書のテーマの一つなのである。

鍵はまず、宣戦の大詔の中に見出される。

「朕ハ汝有衆ノ忠誠勇武ニ信依シ・・・・・速ヤカニ禍根ヲサンジョシテ東亜永遠ノ平和ヲ確立シ以テ帝国ノ光栄ヲ保全セムコトヲ期ス」

すなわち、
日本国民は東亜永遠の平和を確立し、日本の光栄を保全するのに充分なだけ忠誠勇武である。天皇はそれを、信ずればこそ世界相手の大戦争も決行する。というのである。

日本国民に対する、かくのごとき絶対の信頼が、すべての前提となる・・・・・・