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罪の報い
「ひ……!!」
もしも今のが人体にやられたしたら、どういう結果になるのか?
そんなのは想像するまでもなかった。
おそらく高確率で死ぬ。
たとえ死ななくても、生きながらにして地獄を一足早く経験することになるだろう。
壮前は、そんな経験は絶対に嫌だった。
「た、助けてくれ。
わしらの非礼は謝る。
金輪際あなた達の関係者には、一切手出しもしない。
いや、今日限り、わし達は解散してもう世の中には一切の迷惑はかけない。
だから、どうか許してくれっ!」
壮前は床に額を擦り付けんばかりの勢いで土下座した。
「随分虫のいい話だな。
そんなのが通ると思っているのか?
お前達が殺した人間達は、泣いて許しを請うただろう?
それをお前達はどうした?」
「そ、そのことは後悔している。
同じ立場に置かれて、なんて非情な真似をしたのかと悔いている。
それは一生かけて償っていくつもりだ。
それに、わしにはまだ小さな娘がいるんだ。
何年も寝たきりになっている父親もいる。
ここでわしに何かあったら、残された妻一人で面倒を見ていかなければならなくなるんだ。
遺された者が苦しむことになる。
そんなのはあんたの本意じゃないだろう?
わしは確かに、殺されても仕方が無いようなことをしてしまったかもしれんが、わしの家族にまで恨みが有る訳でもないだろう?
わしではなく家族を助けると思って、どうか命ばかりは……!」
深々と頭を下げる壮前を見下ろしながら、誓示は大きく嘆息した。
「そんな使い古されたお涙頂戴の命乞いなんて、今時はやらないな……」
そんな誓示の呟きに、壮前はビクリと身を震わせた。
情に訴えかけて見逃してもらうという手は、通用しなかったようだ。
では、次はどのような手段でこの場を凌ごうか、そう素早く計算し始めたその時、
「家族に感謝するがいい……」
「そ、それでは……?」
意外な言葉が誓示から返ってきた。
(今のデタラメが通じたのか。
思いのほか相手は甘ちゃんだったな)
と、壮前は内心でほくそ笑んだ。
壮前は独り身で、両親もすでに他界していたのだから──。
が、誓示からは更に意外な言葉が返ってくる。
「これから長い長いリハビリ生活を送らなければならないお前の面倒を、見てくれるのだからな」
その言葉に壮前はガバリと顔を上げた。
すると、彼の眼前に誓示は呪符を突きつけていた。
彼を見下ろす誓示の瞳は冷たい光をたたえ、一切の感情が消えていた。
それは壮前にかける情けも、全く無いということだ。
「お前達が殺した人間には、家族がいなかったと思うのか?
そんな自分だけが例外だなんて、甘い話は通らないよ」
「ひ……」
天は、壮前の「どうか命ばかりは」という願いを聞き入れてくれた。
誓示も、壮前の願いを聞き入れてくれた。
だが、結果は壮前の理想とは全く異なる。
壮前は、どうにか命だけは取り留めたが、何年にも亘る厳しい治療とリハビリを、支える家族も無く、一人で孤独に耐えていかなければならなくなった。
しかも結局彼の身体は、生涯完全な健康体に戻ることはなかったという。
その日──壮前建設は、死者こそ出なかったが、何者かよって関係者のほぼ全員が重体にされるという凄惨極まりない攻撃を受けた。
しかも、多くの者が健常者としての再起を見込めないほどの傷を負っていた為、壮前建設という組織は再建も見込めず、事実上壊滅した。
しかしこれだけの大きな事件でありながらも、不思議とそのニュースは新聞の地方欄の片隅で反社会勢力団体同士の抗争事件として、小さく扱われただけだったという。
ただ、この壮前建設の一件は、裏の社会で都市伝説のごとく畏怖の対象として噂されている、とある除霊事務所に関する一エピソードとして、末永く語り継がれるようになり、その語りの結びは決まって、
「もし除霊事務所が交渉にやってきたら、絶対に逆らうな」
──というものとなった。
次回へ続く(※更新は不定期。更新した場合はここにリンクを張ります)。
罪の報い
「ひ……!!」
もしも今のが人体にやられたしたら、どういう結果になるのか?
そんなのは想像するまでもなかった。
おそらく高確率で死ぬ。
たとえ死ななくても、生きながらにして地獄を一足早く経験することになるだろう。
壮前は、そんな経験は絶対に嫌だった。
「た、助けてくれ。
わしらの非礼は謝る。
金輪際あなた達の関係者には、一切手出しもしない。
いや、今日限り、わし達は解散してもう世の中には一切の迷惑はかけない。
だから、どうか許してくれっ!」
壮前は床に額を擦り付けんばかりの勢いで土下座した。
「随分虫のいい話だな。
そんなのが通ると思っているのか?
お前達が殺した人間達は、泣いて許しを請うただろう?
それをお前達はどうした?」
「そ、そのことは後悔している。
同じ立場に置かれて、なんて非情な真似をしたのかと悔いている。
それは一生かけて償っていくつもりだ。
それに、わしにはまだ小さな娘がいるんだ。
何年も寝たきりになっている父親もいる。
ここでわしに何かあったら、残された妻一人で面倒を見ていかなければならなくなるんだ。
遺された者が苦しむことになる。
そんなのはあんたの本意じゃないだろう?
わしは確かに、殺されても仕方が無いようなことをしてしまったかもしれんが、わしの家族にまで恨みが有る訳でもないだろう?
わしではなく家族を助けると思って、どうか命ばかりは……!」
深々と頭を下げる壮前を見下ろしながら、誓示は大きく嘆息した。
「そんな使い古されたお涙頂戴の命乞いなんて、今時はやらないな……」
そんな誓示の呟きに、壮前はビクリと身を震わせた。
情に訴えかけて見逃してもらうという手は、通用しなかったようだ。
では、次はどのような手段でこの場を凌ごうか、そう素早く計算し始めたその時、
「家族に感謝するがいい……」
「そ、それでは……?」
意外な言葉が誓示から返ってきた。
(今のデタラメが通じたのか。
思いのほか相手は甘ちゃんだったな)
と、壮前は内心でほくそ笑んだ。
壮前は独り身で、両親もすでに他界していたのだから──。
が、誓示からは更に意外な言葉が返ってくる。
「これから長い長いリハビリ生活を送らなければならないお前の面倒を、見てくれるのだからな」
その言葉に壮前はガバリと顔を上げた。
すると、彼の眼前に誓示は呪符を突きつけていた。
彼を見下ろす誓示の瞳は冷たい光をたたえ、一切の感情が消えていた。
それは壮前にかける情けも、全く無いということだ。
「お前達が殺した人間には、家族がいなかったと思うのか?
そんな自分だけが例外だなんて、甘い話は通らないよ」
「ひ……」
天は、壮前の「どうか命ばかりは」という願いを聞き入れてくれた。
誓示も、壮前の願いを聞き入れてくれた。
だが、結果は壮前の理想とは全く異なる。
壮前は、どうにか命だけは取り留めたが、何年にも亘る厳しい治療とリハビリを、支える家族も無く、一人で孤独に耐えていかなければならなくなった。
しかも結局彼の身体は、生涯完全な健康体に戻ることはなかったという。
その日──壮前建設は、死者こそ出なかったが、何者かよって関係者のほぼ全員が重体にされるという凄惨極まりない攻撃を受けた。
しかも、多くの者が健常者としての再起を見込めないほどの傷を負っていた為、壮前建設という組織は再建も見込めず、事実上壊滅した。
しかしこれだけの大きな事件でありながらも、不思議とそのニュースは新聞の地方欄の片隅で反社会勢力団体同士の抗争事件として、小さく扱われただけだったという。
ただ、この壮前建設の一件は、裏の社会で都市伝説のごとく畏怖の対象として噂されている、とある除霊事務所に関する一エピソードとして、末永く語り継がれるようになり、その語りの結びは決まって、
「もし除霊事務所が交渉にやってきたら、絶対に逆らうな」
──というものとなった。
次回へ続く(※更新は不定期。更新した場合はここにリンクを張ります)。