通常の嘔吐だと…ノロ6人死亡、病院対応に遅れ
2012年12月24日(月)10:16
(読売新聞)
「ノロウイルスと認識するまでの対応が甘かった」。宮崎県日南市南郷町東町の医療法人春光しゅんこう会「東ひがし病院」で起きたノロウイルスが原因とみられる集団感染。
全国的な大流行が懸念され、厚生労働省などが予防の徹底を求めていたが、死者は6人を数え、病院の対応の遅れが被害の拡大を招いた可能性もある。県は衛生管理に問題があったとみて調査を進める。
「6人の患者が亡くなったことは大変遺憾。報告が遅くなり申し訳ない」。宮崎県庁で23日、記者会見を開いた春光会の宮路重和理事長は深々と頭を下げた。
12日に最初の発症が確認された際、同病院は普通の嘔吐おうとと判断したという。2日後にこの患者が死亡。県日南保健所に連絡した17日にもさらに2人が死亡していた。宮路理事長は「(ノロウイルスの感染と)確信が持てず連絡しなかったが、手落ちだった。職員がノロウイルスと意識しないまま、患者を触り、感染を拡大させてしまった可能性がある」と悔やんだ。
18日の同保健所の立ち入り検査で、職員らのエプロンは、患者の排せつ物を処理した後は着替えるよう指導されたが、徹底されていなかったという。ウイルスが付着した可能性があるエプロンに素手で触れていたことも判明。さらに、死者が出たことを県に報告したのは、22日になってからだったという。
ノロ、世界的な流行 遺伝子変異で新種出現も
2012年12月24日(月)08:08
産経新聞
ノロウイルスは、日本だけでなく世界各国で猛威を振るっている。厚生労働省などによると、米国や中国のほか欧州諸国などでも感染が報告されている。流行の背景には、ウイルスの遺伝子が変異した新種の出現も指摘される。ノロウイルスにはワクチンなどの予防法がなく治療も対症療法に限られることから、抵抗力の弱い高齢者や子供がいる施設では感染をいかに拡大させないかがカギとなる。
日本では、医療法人春光会東病院(宮崎県日南市)で入院患者6人が死亡した事例などが明らかになったが、米ワイオミング州でも今月、160人以上がノロウイルスが原因とみられる胃腸炎にかかるなど、世界的に感染が広がっている。
そもそもノロウイルスは遺伝子の種類が多く、免疫ができても別タイプのものに再び感染する場合がある。この冬が平成18(2006)年以来の大流行となった要因として、ウイルスの遺伝子が変異した新種の出現も挙げられる。
国立感染症研究所によると、新種ウイルスは今年1月に採取した北海道や大阪市の患者の検体から発見。6年前の大流行を引き起こしたウイルスの遺伝子が変異したとみられる。
感染を予防するにはどうしたらいいか。北里大学の和田耕治准教授(公衆衛生学)は「対策の基本は、こまめな手洗い」と強調する。調理や食事の前、トイレの後や患者の汚物処理の後などには、せっけんを使って手のひらや甲、爪の間、手首までをしっかり洗うことが重要だ。
患者が日常的に嘔吐(おうと)や下痢をしている場合でも、ノロウイルスへの感染を疑い、吐いた物や便の処理は慎重に行うことが必要だ。便が付着した衣類やカーペットなどは捨てることが望ましい。また、ノロウイルスはアルコール消毒では死滅しないため、市販の塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム入り)が有効だ。
ノロウイルスによる感染性胃腸炎は例年、11~2月がピーク。
和田准教授は「抵抗力の弱い高齢者などがいる施設では、常日頃から対策を怠らないことが重要だ」と指摘している。
免疫すり抜ける「変異型」ノロ、大流行の兆し
2012年12月24日(月)12:17
読売新聞
この冬、ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎は大流行する兆しを見せている。厚労省は、重症化しやすい子どもや高齢者らに特に注意を呼びかけている。
国立感染症研究所が、全国約3000の小児科病院から報告を受けている定点調査によると、1医療機関当たりの感染性胃腸炎の平均患者数は、12月3~9日の1週間で今季最高の19・62人に達し、過去10年間で最も多かった2006年に次ぐ水準となった。
感染研によると、今シーズン流行しているウイルスは、人間の免疫をすり抜けやすい性質に変異しており、感染が広がる一因になっている。同じ変異型のウイルスは、世界的に流行しているとみられるという。
国内では今月に入り、大分県竹田市の病院に入院していた男性患者(当時84歳)が死亡したほか、京都市左京区の病院でも80歳代と90歳代の男性患者が死亡。広島市でも1000人以上が集団食中毒にかかるなどした。西日本での流行が目立っているが、北海道や静岡など東日本の各地でも集団感染が確認されている。