中国大気汚染 近畿にも影響? 「呼吸器系疾患の人は注意を」
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/snk20130202590.html
2013年2月2日(土)22:48
(産経新聞)
中国で深刻化している大気汚染の原因の一つとみられ、車の排ガスや工場の排煙などに含まれる直径2・5マイクロメートル以下の超微粒子物質「PM2・5」が、西からの風で日本に運ばれ、近畿や九州など西日本各地に影響を及ぼしている可能性が出てきた。環境基準を超えて観測される地域が複数確認されており、専門家は呼吸器などに疾患のある人は注意が必要と呼びかけている。
「PM2・5」は、粒子が小さく気管を通りやすいため肺の奥にまで入り、肺がんやぜんそく、気管支炎などの増加につながると指摘されている。
近畿では1月下旬以降、複数の観測局で1時間ごとの測定値が、基準値(1日平均1立方平方メートルあたり35マイクログラム以下)を超えている。環境省のデータでは、1日も1時間ごとの測定値で、大阪市大正区で63マイクログラム、堺市東区で60マイクログラム、神戸市中央区で41マイクログラムを記録した。大阪府環境保全課は「地域でばらつきはあるが、全体的に数値が上がっている」という。
富山県・立山で約10年前から、積雪や雨、霧の成分を調査している富山県立大の渡辺幸一准教授は、汚染物質粒子のデータと気象データをあわせて判定することで、有害物質が中国から運ばれてきたことを確認。「特に黄海沿岸の工業地帯から運ばれてきた可能性は高い。シミュレーションでは九州、山陰の日本海側を中心に、近畿から太平洋側にも及んでいる」と話す。
中国などから飛散する大気汚染粒子の拡散予測システムを開発した九州大学の竹村俊彦准教授も「中国からの越境大気汚染の影響は大きい」と話す。
中国で発生した大気汚染物質は、日本に到着するころには中国都市部の10分の1以下の濃度になるが、冬季は放射冷却で冷たい空気が地上付近にたまり、濃度が高まりやすいとされる。
竹村准教授は「健康な人に急激な影響はないかもしれないが、呼吸器や循環器系の疾患がある人は注意が必要」と指摘。市販のマスクではPM2・5の粒子が素通りしてしまうので、医療用のマスクを用いるか、外出を控えるなどの対策が有効という。
「蔵王の樹氷に飛来」 中国大気汚染、深刻な影響
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/snk20130203067.html
2013年2月3日(日)08:05
産経新聞
中国で観測されている汚染された大気が風に運ばれ、アイスモンスターと呼ばれる山形・蔵王の樹氷に汚染の恐れが出ている。1月29~30日には九州に、31日には日本海付近に到達したことがNASA(米航空宇宙局)の人工衛星MODIS画像で確認された。樹氷の汚染状況を研究している専門家は「樹氷にも汚染物質は飛来している」と指摘する。
研究しているのは山形大理学部の柳沢文孝、東北大東北アジア研究センターの工藤純一の両教授チーム。
柳沢教授らは平成3年から蔵王山頂の樹氷を採取して調査。樹氷は1600メートル以上の高度ででき、周辺に大規模工業地帯がないため、遠距離飛来の影響が反映されやすいという。
採取当初は酸性化を示すpHは平均5・6だったが、13年には4・5に。23年2月2~6日は3・2と、過去20年で最も酸性化が進んだ。4・0で生態系に影響が出るとされる。
原因は硫酸で、23年2月は硫黄の同位体比が中国東北部・山西省の石炭に含まれる硫黄と成分が一致。肺がんなどを引き起こすとされる微粒子状物質「PM2・5」濃度も通常の約10倍となった。
今冬はpHが4・0~4・5。健康被害が出るレベルではないとされるが、柳沢教授は「気圧配置など条件が重なると、一昨年のような汚染物質の大量飛来が起きる可能性がある」と指摘している。(杉浦美香)
「新型肺炎より怖い」 中国大気汚染 年内に防止条例
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/snk20130203068.html
2013年2月3日(日)08:14 産経新聞
【北京=川越一】自動車の排ガスや石炭燃焼などを原因とした深刻な大気汚染に見舞われている北京市は2日までに、大気汚染を防止する条例を年内に制定する方針を決め、状況の根本的な改善に乗り出した。しかし、専門家はかつて大流行した新型肺炎(SARS)以上の危険性を指摘しており、市民の不安は膨らむばかりだ。
北京では1月中旬以降、濃霧が晴れず、車の排ガスなどに含まれ、肺がんなどを引き起こすとされる直径2・5マイクロメートル以下の微粒子状物質「PM2・5」の濃度が、何度も警戒レベルまで達した。市政府は市民に外出を控えるよう通達。マスクはもちろん、数千元もする空気清浄機を買い求める市民が急増した。日本人学校などでも、屋外での体育授業を控えるなどの自衛措置が取られたという。
当局の「無策」に市民の不安と不満が膨らむ中、北京市政府は1月29日、大気汚染の改善に向けた緊急対策会議を開催し、汚染源と指摘される自動車の排ガスを減らすため公用車などの使用を制限し、市内の工場103カ所に操業を一時停止するよう命じた。この措置は今月2日までには解除された。
中国気象局は濃霧警報を発令する際の指標として初めてPM2・5を採用。28日から、視界といった曖昧な指標だけに頼らない、より科学的な警報を出し始めた。
同市では1日になってようやく太陽が顔をのぞかせたが、気象衛星の観測によると、中国中部や東部では大気汚染を助長する濃霧が続いており、その面積は約27万平方キロに及ぶという。 また、1日には河南省三門峡市の高速道路に架かる橋で爆竹や花火を積んだトラックが爆発し、9人が死亡、11人が負傷する事故があったが、これも濃霧が原因との見方が出ている。
中国メディアによると、政府直属の研究機関、中国工程院の専門家は「大気汚染は呼吸器系の疾病を引き起こす重要な原因だ。北京ではこの10年で肺がん患者が60%も増加した」と指摘した。
のどや目の痛みといった現下の問題に加え、長期的な身体への影響も憂慮されている。中国では2002年から03年にかけてSARSが社会問題となったが、専門家は「隔離などの対処法がない大気汚染は新型肺炎よりも恐ろしい」と指摘。PM2・5に照準を当てた条例の制定を求める意見も出ている。