http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/snk20131216544.html
2013年12月16日(月)20:08
(産経新聞)
ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富な玄米。体に良いと分かっていても「ボソボソして口に合わない」と続かない人も多い。そんな味や食感のマイナス面を熟成により解消した玄米ご飯が「もちもちしておいしい」と評判になっている。「酵素玄米」「寝かせ玄米」などと呼ばれ、新しいものではないが、木村拓哉さんら複数の芸能人が「食べるようになって風邪をひかなくなった」などと最近のテレビで発言し、健康面から注目度アップ。「和食」の国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産登録も追い風に、熟成玄米の和定食が見直されている。(重松明子、写真も)
小豆と塩を混ぜて圧力鍋で炊き、保温ジャーで4日間熟成させた「寝かせ玄米」ご飯を一口。柔らかな弾力の米粒から、うま味がじわりと広がる。
東京の下町、台東区蔵前。「食養研究家」の荻野芳隆さん(33)が経営する「結わえる」は、全50席がランチ時に2回転する大盛況だ。主なメニューは一汁二菜定食(800円)と一汁三菜定食(千円)。
近隣のIT企業に勤める福永康紀さん(49)は、昨年から平日は毎日通っている。「初めて食べたとき、従来の玄米との違いに驚いた。便通がよくなり、特に運動せずに2週間後に体重が3キロ落ちてアレ~!? 半年後の健康診断で腹回りが6センチ減り、やめられなくなった」
地元プロフットサルチーム、フウガすみだの須賀雄大監督(31)は、「週1回食べに来て、1週間分の玄米を買って帰る。チームの食事指導もこちらで受け、日本の伝統的食文化の素晴らしさや、人としてちゃんと生きていくことの基本が食にあると感じている。普段は粗食ですが、週に1度は好物のすしやラーメンも食べています」
健康体形を維持するパンツ1枚のお笑い芸人、小島よしおさん(33)も常連だそうで、男性の支持が高いのが特徴だ。
「肉ダメ、酒ダメ…という健康法には違和感を覚える」という荻野さん。食事をハレ(快楽食)とケ(基本食)に分けてメリハリを付けることを提唱。同店も夜は酒場に変身する。
「質素な食生活で健康を保ち、たまの好きな飲み食いでストレス発散…というのは、戦後廃れてしまった日本人の伝統的な食生活バランス。これが復活して大衆化すれば、肥満やがんが減って医療費を抑制。食料自給率向上など現代の諸問題が解決できる。そのために寝かせ玄米を事業化した」と荻野さん。創業5周年の来年、新業態のおむすび店を出店。5年で都心部20店の多店舗化を目指している。
JR高円寺駅北口の商店街を直進した早稲田通り沿いにある「つる来(き)」は、酵素玄米と発酵食品が食べられる店だ。5席のL字カウンターと小上がり一つの粋な小空間。酵素玄米ご飯に、肉、魚、野菜から主菜を1品選び、副菜2品に新香、みそ汁の日替わり定食が900円。
もっちりした赤飯のような味わいの玄米ご飯と、酒かすに漬けた焼き魚の相性が絶妙! 塩麹や甘酒などの自家製発酵食品が使われ、卵焼きにもふっくら自然な甘さがある。鼻水をすすりつつ夢中で食べていたら、1人で切り盛りしていたお母さんが手を止めて、「風邪ひいちゃったの? ティッシュはそこよ」。気配りにジーンときて、飛び込み取材を申し込んだ。
「もとは夫婦で営んでいた小料理屋でした」と吉村美枝さん(59)。仲良くカウンターに並ぶ日々も、平成20年に夫の一久さんががんのため62歳で亡くなり一変。残された美枝さんは、「これからは病気にかからない暮らしが大切」と酵素玄米の講習に通い、定食店に衣替えをした。「この食事をもっと早くに知って、主人に食べさせていたら…」。そんな切なさも込めて作るご飯は、かみしめるごとにやさしい味がして、心まで癒やされそうな気がした。