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雲ひとつない水色の空に絶え間なく上がる花火の音さえ敵わないほど、行き交う人々の歓声は長く、高らかに街中を飛び回っていた。大通りを練り歩く楽団に拍手を送り、道端の大道芸人や動物使いに拍手を送った。この祭独特の空気に、柄にもなく浮かれていた。
「盛り上がっておるな! やはり、生きるというのはこうでなくてはならん!」
口の周りをソースでべたべたにしながらアダムもはしゃいでいた。僕は買ったパンを食べるために、人波から外れて近くの建物に寄りかかった。
「よく晴れたお祭り日和だな。特に今年は800年の節目の年だっていうし、本当めでたいよね」
「ふんっ、何がめでたいものか」
少なくとも祝い事を前にしているんだから、僕のセリフは間違ってなかったはずだ。逆に、僕のすぐ後ろから聞こえたその一言こそ、顰蹙を買いそうなものだった。
「何も知らずにのうのうと。お前たちの頭の中がめでたいと言うならそうだろうがな」
鋭く吐き捨てられたセリフに驚いて振り返った。そこには昨日見かけたコスモス色の髪の女の子が立っていた。年はきっと僕より少し下くらいで、水辺の葦のような緑の瞳が冷ややかに大通りへ注がれていた。
「ずいぶんとノリが悪い奴よ。祭にいったいなんの恨みがあるというのだ。多少人間たちの間でいざこざがあったとしても、祭に罪はあるまい」
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