徒然日誌(旧:1日1コラ)

1日1枚画像を作成して投稿するつもりのブログ、改め、一日一つの雑学を報告するつもりのブログ。

雅の月、花と霞の里にて 7

2019-11-02 20:46:18 | 小説








 本文詳細↓



 「そういうこっちゃないんだけど」
 文句を言いながら見下ろせば、アダムは自分の分のお猪口と徳利を持って座っていた。
 「あれ、あっちはいいのか?」
 「酔った勢いで掴み潰されそうだったから避難してきたのだ!」
 「ああ、なるほど……」
 僕もあの妙に圧いパワーにあてられて、申し訳ないが少し疲れた。アダムと並んで座ってしばらくぼーっとしていると、ヤクシャ童子さんがやってきてちょっと困ったように笑った。
 「二人揃って休憩か? スマンな、加減が出来んで」
 「まったくよな。気がいいのは大いに結構だが、酒が入りすぎると容赦ないアレはどうにかならぬか」
 アダムが珍しく長ーいため息をついた。でもお酒はしっかりともらうらしい。ヤクシャ童子さんが注いでくれたお酒を飲んで、ぷはーっと満足そうだ。
 「いつもあんな感じなんですか?」
 「うーむ……。今日はいい酒が入ったし、久しぶりの友も来た。少しはしゃいでおるかもしれんな」
 「まあ我としては、みな息災であったのが分かってなによりだがな」
 つかの間、ヤクシャ童子さんの目が泳いだ。それに気がついただろうに、アダムは今度は手酌でお酒をお猪口へ満たしながら、「それはそれとして」と言葉を続けた。



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