ガラスの動物園 テネシー・ウィリアムズ

2010-01-25 00:24:10 | 読書
■ガラスの動物園 テネシー・ウィリアムズ 新潮文庫

この戯曲も小田島雄志さんの訳である。
「欲望という名の電車」より2年前、34歳の時の作品で、彼のデビュー作ですね。

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舞台はセントルイスの安アパート。

アマンダはローラ(姉娘)とトム(息子)とつましく暮らしていた。
裕福な家庭で育ち、取り巻きの中で華やかに過ごしていたアマンダが零落したのは結婚がきっかけだった。
なんの前触れもなく夫が姿を消してしまったからである。
アマンダひとりで育て上げた二人の子供は成人し、今では息子のトムが一家を支えている。

脚が不自由で引っ込み思案のローラをなんとかして結婚させ、そうしたらトムも妻を迎えることができるだろう。
トムが今の生活を不満に思っていることは知っているがどうしようもない。
この貧しい暮らしから抜け出るには、ローラの結婚相手を探すこと。 まずはそこからだ。

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24歳のローラは極端に臆病で対人恐怖症だったから、働きに出ることすらできなかった。
大切にしているのはガラス細工の動物たちのコレクション。
自分の部屋でガラスの動物たちを磨いたり話しかけることが、ローラを穏やかな気持ちにさせてくれた。

母親にやいのやいの言われたトムは、同僚のジムを家に招くことにした。
万に一つ、姉のローラを気に入ってくれるかもしれない。
そうしたら僕はこの家から開放される。 好きなことができる。
父さんのようにここから出て行くんだ。 自由な生活が僕を待っているだろう。

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もちろんそんな夢物語があるわけがない。
ジム青年は颯爽と登場してアマンダとローラの心をときめかせたが、アマンダの企みに気づいたジムは、
自分には婚約者がいる、今夜は彼女と会う約束があるからとさっさと辞去してしまうのである。

一瞬のときめきと予想通りの失望。
必要以上に傷つくまいとする心の切なさ。

ローラはジムが自分の初恋の人だと気づいた時に、大切なガラスのコレクションを彼に披露した。
でも、ジム青年はガラスの動物をつまみあげ、滑り落として壊してしまった。
人生なんてそんなものだ。

切ないですね、狂おしいまでに切ない。
何も起きない、何も変わらない、誰も思いをわかってはくれない。 そして埋没していく自分。
「欲望という名の電車」は特殊な状況設定だからお芝居と割りきって鑑賞できますが、こちらの戯曲は等身大であるだけに
シンクロナイズ度が高い。




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