万暦十五年 一五八七「文明」の悲劇

2015年08月10日 09時38分37秒 | 巻十六 読書感想
黄仁宇 著。

学生時代、学校の図書館でたまたま手に取ったこの本に引き込まれた。

特に興味を引かれたのは、
傍論部分の武宗正徳帝に関する論考で、
その破天荒で示唆に富んだ生きざまに衝撃を受けた自分は
気がついたら彼を研究テーマにしていたくらいだ。

その後絶版となった本書を手に取る機会はしばらく失われ、
このたびやっと古書を入手できた。



明王朝(果ては中国文明)という巨大な生き物が長年摂取してきた薬物が、
静かに人知れず致死量を越えていた。
万暦年間はその象徴的時代であった。

致死量、と言っても別にかの文明は滅んだわけではなく、
満洲族の支配から西欧列強の侵略、辛亥革命、内戦を経て共産党政権が成立し
気がつけば巨大な人口と経済規模を持つ国家として存在している。

しかし今の中国を見るに
法治の重要さを敢えて声高に叫ばなければならないくらい、
逆に言えば法による公正な秩序が築けてないということだろう。

黄仁宇氏は、明代におけるその原因を
硬直しすぎた道徳中心主義に見いだしていると思われる。

現在の中国はお世辞にも道徳が上位の理念になっているとは考えられないが、
それに代わる支配的な考え方は、ある種の拝金主義とかそういうものなんだろうか。

万暦に象徴される病巣は取り除かれたのか。変質したのか。変わらないのか。
すでにオーバードーズな気がしなくもない。
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