落書き帳

あまり触れられないことに触れる
内容は備忘録のため、誤解等含め随時改変

エンジン技術_2 過給と軸燃費率

2014年03月14日 | エンジン・自動車

前回の、負荷(BEMP)-メカロス(FMEP) 特性を使い、過給時燃費率を検討する。

無過給の特性を(無責任に)過給域に直線で外挿するだけ。

メカロスは、P-V線図の圧縮膨張行程のみの図示平均有効圧(IMEP)の関数と仮定。

吸排気行程は大気圧との差が小さいので、メカロスに対する影響はないとする。

 

FMEP換算メカロス(bar) =0.0667×[IMEP  (bar)]+0.807

 

① フツウの無過給、

② 大気圧=2気圧になったときの無過給、

③ 吸気密度=2倍 ( 264kPa ) 過給   

面倒なのでインタークーラー無し 熱力学計算上は結果が大同小異 エンジン技術_7 P-V線図

上記3仕様の軸燃費率を比較。

図示燃費率は、無過給、大気圧=1気圧の状態から、変わらないものとする。

←この仮定はガソリンエンジンの現状では大嘘になる。過給するだけでは点火時期リタード+燃料増量でどんどん悪くなる。

時間概念は無しで吸排気弁絞り損失=0

 

過給機全断熱効率=100% 吸気密度2倍断熱圧縮(264kPa) の過給機駆動仕事は

FMEP換算=0.60bar  吸気行程でクランク軸に回収される分はさし引いてある 上死点→下死点で絞り損失=0で過給機押し込み仕事を100%回収 FMEPに換算する過給機駆動仕事は内部圧縮仕事のみ

 

軸燃費率は、(フツウのNA=240g/kwh と仮定)

                                                                            

 

理想的条件を仮定しても、そうそう燃費率が下がるものでもない。目玉を上に広げるのが精一杯。

過給機仕事=0の「大気圧=2気圧」でも、231/240=0.96掛けまでしか下がらない。

極限全断熱効率(100%)の機械式過給機+絞り損失(圧力低下)=0で過給機押し込み仕事をクランク軸に100%回収して238/240=0.99掛け。現実世界では過給機駆動損失その他損失が勝ってBSFCは悪くなると考えるのがフツウの人。

現実は、ノッキング→点火時期リタード、燃料増量、絞り損失、過給機効率等々で・・・

全負荷BSFCは表に出せないから沈黙して部分負荷での排気量ダウン効果だけを宣伝。

 

ターボ過給は、超単純化して、次回ふれる。

 

機械式過給+ミラーサイクルも計算。

空気密度4倍過給(696kPa)+吸気ストローク半分(実圧縮比約半分)

傾向をはっきりさせるため思い切り変える。 

 

過給機仕事が増える分、燃費率は悪化する。図示燃費率が変わらない(リタード・増量ロスがない+膨脹比を維持)+過給機仕事は理想極小極限値としても、過給圧を上げる+吸気ストロークを短縮して逃げるだけでは燃費率はどんどん悪化する。実際はインタークーラー付で、

・圧縮膨張行程の圧力が下がる分、FMEPで得をする

・圧縮膨張行程の温度も下がるので、冷却損失は得をする

・圧縮終わり温度、圧力は下がるので、ノッキングでは得をする

このへんのせめぎ合いになるが、インタークーラーポン付けだけでは無過給より悪くなるから高負荷BSFCは公表しない。←競争商業社会では当然の話

 

オマケ

過給ミラーサイクルを最大限単純化したモデル

 

過給率を上げるほど、過給機駆動FMEPは増大、ノッキングはシビアになる。製品化例は、

・ほどほどの過給率

・ほどほどにダウンサイズ

・膨張比維持orアップ

・公言するのは車両燃費(カタログ燃費)だけで燃費率マップは公表しない

は共通。燃費率マップが非公表でも、過給域は悪くなる要素だらけなので想像がつく。部分負荷とモードネンピ良ければ全て良し~とならないのは落書きで、欠点は欠点と書く。

過給域はあくまでも加速用で、常用すれば燃費はメチャ悪、ターボディーゼルのように「じゃんじゃん使ってくれ!」の過給域(目玉がほぼ全負荷まで突き抜ける)ではない。ネックはまずノッキングなので、イマなら直噴一択になる。

 

全域」高過給直噴ディーゼル並BSFC+BEMPが実現すれば、km/Lは3割アップする。現状は周知の通りで、

「排気量アップ+最高rpm大幅ダウンした方がマシ」

(←初期設備投資を無視すればタダ同然 耐久性・信頼性等は無問題)からどれほど脱却できたかは疑問。冷静に離れて眺めれば、

「あの程度では、全てが中途半端だから後が続かない」

 

オマケ インタークーラー無し過給エンジン

むかしむかしは、ガソリンディーゼル問わず結構あった。

理由は

過給圧が低かった(←諸々の信頼性、過給機性能等)

に尽きる。オマケ程度の過給圧では、¥、レスポンス悪化、圧力損失等で付ける気にならないし圧縮空気の温度が大して上がらない。

 

ついでに、ターボ+ミラーサイクル

ガスエンジン(定置 発電用等)では昔から実用化例がある。動作範囲(回転負荷)が広い+低速トルク命+ターボラグとにかく短く、の要求がある自動車用では例を知らない。

上の機械式過給機で書いたように、等エンジン吸入空気量に対してより高い過給圧が要求される→より多くのコンプレッサ仕事が必要→より高い膨張行程終わり圧力が必要

ここがジレンマのはず。発電用の常用域は定格点≒最大出力点。部分負荷でダラダラ動かす使い方は経済性が×。三相交流出力(同期発電機)なら自然と2極電機子(armature)コイル(フツウは固定子stator)で、50Hz=3000rpm、60Hz=3600rpm。ここにターボの効率の目玉を合わせる。回転が高いので冷却損失は小さく排気【圧力】エネルギーが高い(無過給全負荷の膨張終わり気筒内圧が高い)のでミラーによる過給圧アップ要求は問題にならず効率向上につながる。気筒容積大でrpm高すぎならrpmを下げるだけ。4極の電機子コイルならrpmは自動的に2極の1/2になって1500/1800rpm。気筒容積大なら冷却損失が減るので、低rpmでも無過給膨張行程終わりの気筒内圧は小気筒容積に対して高くなる。

EGRによるノッキング改善も、発電用で初めて眼にした記憶がある。EGRはノックに悪いとか、残留ガスはノックに悪いとか、運転領域と筒内ガス温度を考慮しない「常識」が横行していた頃の話。「ある運転条件で等点火時期のままEGRをかけたらノッキングした」→「EGRはノックに悪い」とした「専門家」がいたらしい。昔の話だからhot EGRである。「ノッキング改善」を(制御は好き勝手にできる)現代流に定義すれば「ノックするしない」ではなく「等空気量点でトレースノック点のBSFCが良くなるか リタードロスが減るか 仮想MBTトルクにどれだけ近づいたか」 

自動車用ではインターセプト点にターボの効率の目玉を合わせる。これ以上の回転にならないと排気【圧力】エネルギーは余らない。ターボラグのある加速中は、排気【圧力】エネルギーが余るのはもっと高い回転数になる。目玉を意図的にインターセプト点から外す例もあるようだが個別論議は中の人の日常にお任せ。

ミラーが唯一有効そうなのが、高回転域のパワーカット用。ウエイストゲート開の、膨張行程終わり排気【圧力】エネルギー余り領域は、吸気ストロークを短縮して過給機パワーバランスをとる。高回転は冷却損失が少ない=排気損失が多い。回転を上げれば膨張行程終わり圧力はどんどん高くなる。(≒排気温度が上がる)

注)

【圧力】とシツコク書くのは、「タービン駆動エネルギー」の大元は【膨張行程終わりの気筒内圧】だから。排ガス温度とか流量とかは副次的存在。シリンダーヘッド~タービン間の排圧どうのこうのも(適合実務家には重要だが)初歩の原理理解には邪魔な話。無過給全負荷膨張行程終わり気筒内圧<排圧になっているエンジンは存在するのか?これではピストンの排気押し出し損失でタービンを100%駆動することになり効率メチャメチャ悪。

高回転ミラーサイクルで吸気ストロークカット(圧縮比ダウン、膨張比維持)すれば、排気温度も下がる。ダウンサイジング勢は、とっくに実行済?細部の制御性に問題があるなら、ウエイストゲート併用で一向に構わない。吸気ストロークだけで過給機パワーバランスをとるのは、応答性+収束性に問題がありそうの意味。

これで燃費率がよくなるか?いろいろ微妙なところを並べる。軸トルク(吸入空気量)、機械的(公称)圧縮比等、吸気ストローク以外の仕様は同じとする。

① オットー ウエイストゲート開

② ミラー ウエイストゲート閉

ウエイストゲートは高圧高速排気の一部がタービンを通過せずにそのまま捨てる。文字どうり無駄だが「waste」の字面だけにこだわるのは見方が一面的。←誤解の元になるので「高温排気」とは一切書かない 。「温度」はいくら高くてもここでは既に直接的には役立たず。

②は①よりも過給圧を上げなければ同一トルクは得られない。

・コンプレッサ(=タービン)回転数:①<② 等空気量で過給圧が高い タービンパワー:①<②

排圧(排気弁出口)について筋立った説明をする能力&知識はないが(タービン通過排ガスの質量と圧力[静圧]と速度が関係する)、おそらく

・排圧(排気弁出口の[静圧])   ①<② 

 

燃費向上要因

・実圧縮比ダウン、圧縮温度、圧力ダウン(当然インタークーラー付が前提) 点火時期進角 混合比ストイキ化

燃費悪化要因

・排圧(排気弁出口)増 (ピストンの排気押し出し損失増)、高温残留ガス増によるノッキング特性悪化→点火時期リタード

 

こう書いて整理してみると、最高出力点のタービン回転数は①<②なので、低速トルク(低空気量の過給圧)と最大空気量(タービン回転数)のトレードオフがここでも顔を出す。

 

181013追記

2015年にAudiがターボ+ミラーサイクルを発売、2016年にVW。ターボでも無過給に対して

BEMPを上げて同時にBSFCを下げられる領域がある】

エンジン技術_6 燃費の目玉(6)

VGT、過給ミラーサイクル、LP-EGR (2016年 三菱重工) 

背景には、ターボのワイドレンジ化+ターボ総合効率(タービン×コンプレッサ×メカ)アップ+可変動弁の標準装備+DI化があるものと思われ。ターボ総合効率は着実に良くなっているはずなので自社製品の実力変遷を堂々と宣伝すべし。

 

高回転は等パワーで切るトルクカーブを見ると、出せるだけ出すぶち回しは貧乏臭い化石スタイルに見える。ぶち回し領域はメチャメチャ濃い空燃比で、BSFCはメチャ×3悪。CVTを使わなくても、ギヤ位置1段程度の差に関係なく加速に最後までフルパワーを使える。エンジン排気温度限界要求、燃料増量極小化要求にも合致する。