落書き帳

あまり触れられないことに触れる
内容は備忘録のため、誤解等含め随時改変

エンジン技術_6 燃費の目玉(6) VC-T

2018年10月13日 | エンジン・自動車

自技会誌 2018/09  Nissan VC-T 「ほぼ」全域BSFCマップ

将来排気規制対応(RDE等)、ターボラグ等の関連する他性能に関しては一切考慮しないでBSFCの結果だけを見比べる。

RDEでキツクなるのはエンジン技術_11 過給エンジンの吸排気弁オーバーラップ中の掃気

RDEは意識せず異臭がするから書いただけで、オイシイところだけのネタはあった試しがなく¥の話は除いて「欠点なし」に拡大しても数えるほどしかない。マズイところは誰もが隠すが技術的な隠し事はそのうち表に出る。「技術」の話は第三者が検討・検証できる。

大オーバラップによる掃気の「程度問題・領域問題・頻度問題」の制約がRDEでキツクなる。と書いて思いつくのは欧州エンジニアリング会社の伸縮コンロッド。2段切替だが、ε=8.0まで下げれば低回転高負荷(過給圧の立ち上がり領域)のBEMP、BSFC確保はド派手掃気に頼らずともメチャ楽になるはず。単純銭勘定では¥の元を取れなくても「排気対応デバイス」と捉えれば話が変わる=クソ馬力を維持できる=車両予算がつく。2段切替ということは、中~大パワー域(=中~大rpm)のBSFCを捨てる(低圧縮比=低膨張比)ということ。トレースノック設定による損失は低rpmほど大きい。この点では2段切替も連続可変のVC-Tも同じで、行く先はクソ馬力になることも同じ。

 ターボラグで思いつくのが電動W/G。部分負荷ネンピ重視なら部分負荷はW/G全開だが過給域への加速レスポンスが悪くなる。部分負荷内での応答性はW/G全開でカイゼンされるはず。各エンジンが個別にどうしているかは関心外につき知らない。過給域への加速レスポンスをカイゼンするにはサッサと低圧縮比に飛ばしたくなる。

 

自技会誌 2018/09 左図の「230」は「240」の誤記と思われ。

 

2019 QX-50 owner's manual をコピペ。

Use unleaded premium gasoline with an octane rating of at least 91 AKI (Anti-Knock Index) number (Research octane number 96).

Use unleaded premium gasoline for maximum vehicle performance.

RON96と書いてあるからVWと「1」しか差がないと字面だけを読むべからず。「96」は規格上の下限値(全てのガソリンが完全に満たすべき数字)のはずで、業界通常区分では「RON98」「ハイオク」。と何かに書いてあるの?と言われても見た覚えはないが、どの社でもそのように言う。規格上の下限値を業界通称とはしていない。かような扱いをするのは、ギリギリまで性能を取りに行くからで、各社が申し合わせたようには思えないが考え方はどの社も同じ模様。欧州の通称「RON95」も規格上の下限値はいくつ?

VC-TのBSFCマップは元々のサイズが小さすぎるので関心外の低負荷はスルーしてVWと比較すると↓

□囲みがVW。VC-Tの排気量はBEMP計算では最大値(1997cc ε=8.0の状態)とする。杓子定規に言えば「その時の排気量」で計算すべきだが、やったところでBEMP(排気量)は最大1.4%差にしかならない。道具は目的に沿った使い方をする。ここでの目的は全体像を描くことで、BSFCの1.4%は気にすべきだがMAPの縦軸の1.4%はどうでもいい。デカイ数字を使うのは「税金を決めるから」

・VC-Tは全域λ=1に非ず。黙っている=増量域あり、が業界不文律。(たぶん)世界記録のVW 1.5L 110kW版のλ=1限界 73kW/Lから100kW/Lへの特大飛躍を果たせばドヤ顔どころではない。「全域空燃比フィードバック」(全域λ=1に非ずの宣伝用語で黙ってやるだけの話)と低圧縮比ε=8.0で増量域がぼかされているがBSFCは正直である。

・VC-Tの低中回転は全負荷λ=1か?は不明なので、「λ=1限界BEMPグラフ」は?付きのままとする。

BSFCマップ上のあの線を見るとVC-Tの増量域はこの辺では・・・程度の想像はできる。マップの4800rpm打ち切りを見るとBSFC等高線は右下に曲がってA/F設定はこのくらい、っと。ε=8.0で設定がメチャ楽になったのだから6000rpm迄公表したら?設定は楽になるが低圧縮比=低膨張比=8.0のためλ=1と思われる領域でもBSFCはそれなりで最良点でも260g/kWh以下にならない。

VC-TとVW 96kWの最適燃費線上のBSFCを比較すると↓ 

横軸はkW/Lにし排気量の影響を(大部分)排除する。

VC-TがVWに勝るのは低kW/L域(図では18kW/L以下)BSFCと最大kW/L。低kW/L域以外のBSFCはVWに負け。低kW/L域でもVWが気筒休止で勝つ領域がありそうだがVC-TのBSFCマップは判読しづらいので省略。

まとめ 〇〇は読者が数字を入れる

① λ=1限界kW/L ベンチマーク65kW/L VC-T 〇〇kW/L

② BEMP=20barのBSFCは、ベンチマークに対し低圧縮比=低膨張比=8.0 により VC-Tは中高回転で 〇〇g/kWhの悪化 

低回転は世間並みだがノッキング制約がキツイ(トレースノック設定ではリタードロスがデカイ)領域なので低圧縮比=低膨張比=8.0 により世間並みBSFCは楽勝、比較は中高回転で。

 

 

「ε=8~14(市販状態)」に続き、「全域ε=8.0」「全域=14.0」を眺める。「多分こうだろう」は想像できるが、実際マップ的にどうなるかは見たことがない。

全域ε=14.0/全域ε=8.0 の2000rpmBSFCを拾う。

圧縮比のバリエーションがあり全域BSFCマップがある

・VW ε=12.5  1.5L  96kW(64kW/L)

・Audi  ε=11.7  2.0L  140kW(70kW/L)

・Audi  ε=9.6  2.0L  170kW(85kW/L)

を追加する。全エンジンEGR無し。

 

① ε=8.0 の目玉の底が異様に深い。フツウはこうならず太点線になるはずで、何やってるの?

② 中間圧縮比を使う領域は狭く高負荷はε=8.0に飛ばしている。

③ 2000rpmのBSFCを眺める限りでは、VW/Audi並みに高負荷を欲張りたくなる。ここを連続可変圧縮比にすれば、定常的には赤点線あたりまで取りに行けそうに見えるが中負荷以上はε=8.0。

・「耐ノック性」が劣るので(最大kWを取りに行くバルタイ、エンジン本体、過給機系、その他の影響)定常的に取りに行けない

・定常的には取りに行けるが、過渡を成立させるのが不可能or面倒なのでやらない

・CVT専用なので定常的に居座らないからやらない

が理由の候補。

3000rpmで比較↓ 2000rpmと似ているが、ε=8.0の「異様に深い目玉の底」は消えてフツウのε=8.0なりのBSFC曲線になっている。「異様に深い目玉の底」領域はε=8.0の240g/kwh等高線で囲まれた部分。原因はともかく結果では「目玉の深さ」で負けるようになる。グラフを眺める限りでは、Audi、VW並みにするのは不可能で、ε=14~8の切り替え部分は圧縮比を目一杯取りに行っているように見えるがベンチマーク水準に届かず。

前回の最適燃費線上BSFCにAudi 170kWを追加↓ VC-Tが中~大パワー域で負ける理由のうち、↑の「CVT専用なので・・・」が除外される。最適燃費線上で負けていてはCVT云々は関係ない。

VC-Tの2000rpm最適燃費線は約10kW/L、3000rpmは約27kW/L。30kW/L付近のBSFCは30年前の無過給PFI(燃費の目玉に一致)と同水準で、気絶するような機構を使ったのに全域圧勝できないようではアホらしくなるのがフツウの人。

VW/Audiは30~35kW/Lに目玉の底がある。BEMPはちょうど過給が始まる(バルタイフツウの無過給全負荷BEMPを超える)あたり。他に思いつくものがないので「掃気」「過給機特性」がキーのようだと書いておく。何かを足さないと無過給の目玉(ε=10.5 PFI)に対してここまで落とせない。VW/Audi(ε=11.7)は「早閉じミラー」だが、具体的回転負荷領域と遅閉じに対する儲け代は不明。「rpmとBEMPで早閉じ遅閉じの得失がある」ということにしておく。

Audi170kW(ε=9.6 ミラーサイクル無し)も30kW/L以上で他を引き離す。VC-Tは連続可変圧縮比だからAudi/VWの包絡線までBSFCを下げて当然と考えるのがフツウの人。

VC-Tは27%モードネンピカイゼンとの触れ込みだが、モードネンピは低パワー域のBSFCカイゼンと排気量ダウン3.5L→2Lでヒネリ出している。この種の数字はT/M、車両側のカイゼン込み。↑にあるように現行米国モードは左下の高圧縮比領域に収まる。kW/L軸で27%BSFCカイゼンした領域を探しても見つかるワケがないが、g/kWhでネンピが表現できない0kW(無負荷・アイドル)ネンピ(L/h)は「排気量当たり」を外せば2.0L/3.5L=0.57掛けで43%削減される。モードネンピのカラクリは大昔から計算プログラムがあって無負荷L/hを含むBSFCマップ(燃料流量L/hのマップがあれば事足りる)、スロットル(アクセル)開度マップ、変速機諸元、トルコン特性、変速線、車両諸元等々を放り込むとそれなりの数字を言ってくる。

BSFCヲタは↓だけガン見する。

VW 2L DIターボディーゼルは http://glanze.sakura.ne.jp/great_trials.html より

 

最適燃費線勝負で、VW/Audi(ε=11.7)が30~35kW/L(目玉の底)で圧勝する理由   

VWと1988 OPELを重ね書きしてVWの目玉をつつく。

・VW ε=12.5の目玉 12.3bar MBT運転はDI化だけでは無理。この位の圧縮比のDI+NAのBSFCマップを見れば明らかで目玉は3500rpmで9~10bar。ε=10.5 PFIに対し、目玉は深くなるが目玉の位置は変わらない。DI化分は圧縮比アップで使い切っている。

→VWの目玉12.3barは過給ミラーサイクル ブーストマップがあれば明確にわかる

・VWの目玉のBEMPは無過給+α程度の12.3barだが、ミラーサイクルでそれなりの過給運転 フツウの過給エンジン(otto)よりも低BEMPで過給を開始しなければならないので排気量に対し「小サイズターボ」になる。実際のVW 1.5L 96kW版はVG-T使用。 ↓ はエンジン技術_3 ターボ過給に置いた絵で直接関係ないが参考用。

・VWの燃費の目玉付近に過給機総合効率(タービン×コンプレッサ×メカ)の目玉がある→低排圧で過給圧が上げられる

・過給ミラーサイクル(I/C前提)+掃気で、ε=12.5 12.3barでMBTが取れる

・ε=12.5のNAではEGRを入れないと目玉222g/kWhは困難だが、ターボ高効率過給点のご利益で【膨張行程終わりの気筒内排気圧力エネルギー】をクランク軸に回収してBSFCを儲けている P-V線図があれば儲け代がわかる

・「掃気」と書いたが、低回転高負荷でよくやる「大O/Lのド派手掃気」ではなくそれなりに掃気

 

結論 効果が大きそうなものから

① 過給ミラーサイクル+掃気によってε=12.5 12.3barでのMBT化 図示熱効率アップ 

設定点火時期不明+点火時期を振ったデータ無しでMBTと断定する理由

リタードしていたらε=12.5 で222g/kWhになるワケがない。リタードで圧縮比ガー、フリクションガー、ポンピングロスガー等々の1円玉拾いは全て帳消し。

② ターボによるクランク軸への若干のエネルギー回収 無過給の目玉は部分負荷のポンピングロスが残るがここを+に変える

③ IMEPアップにより若干のメカロス割合減

目玉222g/kWh @35kW/L 12.3barで圧勝。240対222でkW/Lが上がると更に差が開く。目玉を9~10bar →12.3barに引き上げて更に222g/kWhに下げたのが過給ミラーサイクル。タダでできる圧縮比だけをいじっても取りに行けない。

VWの最適燃費線はスッピン無過給全負荷トルクのチョイ上にあるのが特徴で、ここをひたすらミラーサイクルで下げている。ミラーサイクルの回転領域は不明だが、目玉rpm付近の負荷方向は全負荷までミラーサイクルに見える。ここは過給機性能(過給圧+効率+排圧)とバルタイの取り合い。

VC-Tの30~35kW/Lは、実際の作動はともかく結果的にはフツウのNA(otto)と変わらないBSFCで、結果だけを見ればフツウのNA運転。フツウのNA運転をすると必然的にフツウのNAのBSFCになる。↓はVC-Tのコンプレッサー性能マップにエンジン動作想像線を追加で、VC-Tの中BEMP域は過給ミラーサイクルではなく無過給otto運転と思われ。

 

 

オマケ

三菱重工技報 Vol53 No3 (2016)

可変容量ターボチャージャーの開発

「図2」を引用 大量EGR前提の図だが、イメージがわかりやすい。

三菱重工技報 Vol56 No2 (2019)

次世代ガソリンエンジン向けVGターボの開発

「臭いモノにはフタ」ではなく「臭いモノ」にも触れている。

 

過給ミラーサイクルに関するmemo 

儲かる領域、条件があり無条件で儲かるワケではない。

 

 

圧縮比違い重ね書き

〇×ガーは抜きにして

連続可変圧縮比で↓のBSFCを全部取り。

全部取り妄想BSFCマップは↓の包絡線を作って左下のε=14と全負荷ε=8をくっつけて25barまで上げれば完成。

最後に目玉の底掘り下げ自称世界一のT社の目玉の底だけいただく。ε=14のHEVは軽負荷が嘘臭いのでε=13のコンベ。EGRでも過給ミラーでも、儲かりそうなモノを入れてつなく。

最適燃費線上BSFC妄想は↓ 100kW/L全域λ=1妄想の行き先BSFC予想は最大出力点300g/kWh。ここまでやってもディーゼルに届くのは10kW/Lまで。

「パワー(加速)とネンピの両立」は大昔から宣伝の謳い文句だが看板は「全部込み」の話だけ+苦手な領域は全スルーなのでヲタ的にはツマラナイ。どこまでやれば「両立」したと言えるか?

妄想エンジンを2L 200kW→1L 100kW に排気量ダウンして(横軸の単位はkW相当になる)横軸の50を100kWに読み替えて2Lディーゼル(100kW)と比較する。最大出力100kWに対し24kW以下(横軸の数字は12)ならディーゼルに勝ち、その先の24~100kWは負け。

妄想エンジン2L 200kW(赤) と妄想エンジン1L 100kW(黒) を比較

アイドルネンピが削減率最大で半分になるが、イマドキはアイドルストップしてオシマイ。「アイドルネンピ50%削減」はエンジン単体での話で、車両のアイドリング状態ではATCVTオイルポンプ負荷、Dレンジならトルコン負荷、発電負荷、エアコン負荷等の外部負荷がかかるので削減率は目減り。ググると引っかかるモノは全て車両状態で、外部負荷がかかっているから「エンジン単体」の実力に非ず。横軸kW、縦軸燃料流量L/hのグラフを使えば丸わかりで、排気量を半分にすれば0kWでの燃料消費L/hは半分になるがkWが上がると差が詰まってどこかで逆転する。逆転するのは横軸の12付近(赤と黒が交差するところ)で横軸50が最大出力100kWなので24kW以上は負け。「24kW」がディーゼルとの比較の場合と同じ数字なのは偶然の一致。 

 

最適燃費線上の燃料流量L/hでダウンサイズ【だけ】の効果(2L→1L)を眺める 

気筒容積500ccのまま固定し、4→2気筒化を想定 2気筒では振動(トルク変動による間接的なものを含む)が×だがここでは無視する  

VC-T(市販)のBSFCを使用

アイドル燃費(仮定) 2L: 0.6L/h  1L: 0.3L/h

結果は↓ 全くダウンサイズのメリットがないように見える。

0~10kWを拡大表示 

【素】で比較すれば絶無視差はこの程度で、比率もkWが上がれば小さくなって最後は逆転する。

燃費逆転ポイントを拡大 19kW付近で逆転

 

1988 OPEL 2L(112kW)でもやってみる

アイドル燃費(仮定) 2L: 1.1L/h   1L:0.55L/h 

メチャ悪だが、この位でないとBSFCマップと不整合。当時の欧州車はアイドルネンピに無頓着なものが多く、イマとなっては並の出力だが高出力版となれば・・・BSFCマップがあれば、ソコソコの精度でアイドルネンピの推定は可能と思われ。最適燃費線に沿ってkWを下げていくと、0kWのg/kWhは無限大だが燃料流量L/hがアイドルネンピのはずである。300、400、500g/kWhあたりの等高線が2本位はそれなりの精度で引かれていないと推定は苦しくなる。

何故アイドルデータ無しでアイドルネンピL/hに至るのか?は

「最適燃費線をたどらせる拘束条件による」

「最適燃費線上」の拘束条件付きでの0kW着地点がアイドルネンピL/h。0kWで最低ネンピになるのがアイドルだから最適燃費線を延長すればアイドルに行き着く。

要求主力2kWとする。最適燃費rpmに固定してアクセルを2kWに調整→

要求主力1kWとする。最適燃費rpmに固定してアクセルを1kWに調整 →

「最適燃費」の拘束を外してエンジンはフリー回転 アクセル開度=0 行先は0kW、アイドル状態でrpmはアイドル回転

アイドル回転調整後性能マップの測定を行うので、BSFCマップ上にアイドル回転情報まで(陰に)含まれている。    

低kW域BSFC等高線が読み取れるデータを全て並べてみると、大きな違和感はない。VC-Tは等高線が読み取り難いが話の成り行き上掲載。イマドキアイドルネンピ推定は、エンジン技術_8 アクセル開度~エンジントルクマップ作成 に大昔データから推定した数字を書いた。

 

本題の1988 OPELに戻ると↓ これまたダウンサイズ効果がないように見える。

0~10kWを拡大 VC-Tに対しダウンサイズ効果が大きいのは、低パワー域ネンピ(アイドル含む)が悪いから

逆転ポイント 31kW付近で逆転

絶対パワーが半分なのに高kWまでダウンサイズ効果が続くのは、OPELの高パワー域ネンピが低パワー域ネンピに対して相対的に良い、高パワー域の悪化が相対的に少ないため。

  

VC-Tのフリクションは「従来並み」の謳い文句だが、自技会誌の図はモータリング法(無負荷)または軽負荷ファイアリング法(指圧線図による)のはずで、中高負荷実働時のフリクションは不明。ピストンクランク周りがガラリと変わっているから「フリクションの負荷依存性は?」と疑うのがフツウの人。

 エンジン技術_1 フリクションの負荷依存性

 

BSFCマップが唯一の情報源だが3次元表現なので、断面を切らないと特徴が見えない。↓ に書いた

「全域ε=8.0の240g/kWh等高線はウソで存在しないのでは?」

は見破れない。

 

 

感心事まとめ

① ε=8.0 2000rpm付近の「異様に深い目玉の底」で何やってるの?

ε=8.0のままいきなり20g/kWh落とすネタは思いつかない。過給開始点程度のBEMPでε=8.0(RON98)ならフツウにMBTのはず。全域ε=8.0のはずのマップの一部に中間圧縮比のデータが紛れ込んでいるように見える。230と書いてある等高線は塗り分けを見れば240の誤記だが、この等高線自体が誤記と思われ全域ε=8.0では存在しないと考えれば違和感はなくなる。

と書いて思い出したのが前回書いたT社2.5Lの熱効率マップのうちHEVの低負荷熱効率はウソ臭い件

 

② 増量域に対して時と共に評価基準は変わり、イマは「増量域がある限りクソ馬力」

自技会誌には

「過給域まで含む広大な良燃費領域を得ることができた」とあるが「当社比」が抜けている。BSFC勝ちは低パワー域のみで、ε=8.0でBEMPを上げたが低膨張比の限界でBSFCはそれなり。

 

2007年N社のλ=1領域は40kW/L で1988年 OPEL C20XEと同水準。

エンジン技術_6 燃費の目玉(2) 過給ガソリンエンジン

 

③ 圧縮比可変動作の応答速度は?応答速度が遅ければ性能の取り代は目減りする。「定常的には取りに行けるが、応答速度が遅く過渡で取りに行けない」シーンが増える。

と書いたあと自技会誌2018/09を見返すと図があった。「目標圧縮比」をどう与えているのか不明なので「機構単体の応答性」についてはスルーだが、ステップ的踏み込みに対し「結果的には」 ε=14→8 に約1秒。「1秒間に何回転するか、何回点火するか、1秒の「ラグ」を感知できるか」を考えれば無視できる数字ではない。

定常BSFCマップ

と、圧縮比マップ

を見比べる。

BSFCマップ(定常運転)を見る限りは、2000rpm、3000rpmとも約16bar(255Nm)以上はε=8.0。↑ の圧縮比マップの3000rpmはε=8.0領域が明らかに高負荷側へずれている。

圧縮比マップに最適燃費線を重ねてみれば

[2000rpm ε=8.0領域 255Nm以上] は最適燃費線の遥か上にいる+無過給全負荷トルクは180Nm程度(バルタイフツウの前提)であることに注目。

フツウの全開ゼロ発進ではターボラグで [2000rpm ε=8.0領域 255Nm以上] はスキップ。

走行中(トルコンロックアップ)のアクセル踏込ではマニュアルモードでCVT_Ratioを固定しない限りCVTがダウンシフト+ターボラグで [2000rpm ε=8.0領域 255Nm以上] はスキップ。

ターボラグ、CVT変速速度、無過給全負荷トルク、最適燃費線(定常的な最終到達点)、可変圧縮比機構の応答遅れのカラミでこうなる。

↑は 「実車過渡モード(Dレンジ)での圧縮比現在値の分布」と思われ。「実車ではない simulationなのだ」とかの話はどうでもいい。全realでも部分realでも全virtualでも話の筋は変わらず。

玉虫色の塗り分けの ε=8.0 と判読できる領域をガン見して ε=8.0 の領域線を勝手に記入してみる。ヘンテコな凹凸があることに気がつく。「(車速基準の走行モードが固定された)過渡モードの現在圧縮比の分布」だからヘンテコ凹凸になる。

定常的な「目標圧縮比マップ」の中間圧縮比領域は↑より更に狭い。「実車過渡モード(Dレンジ)での圧縮比現在値の分布」は中間圧縮比領域が広く見える。

「クソ馬力だけなら2段切替で十分」と読むのがフツウの人。この程度の使い方なら¥払って使う客の立場では2段切り替えと変わらない。

「実質2段切り替えだが、過渡の点火時期制御に現在圧縮比の情報が必要で連続的に現在圧縮比のセンシングが必要なのだ」

アタリマエ性能の話は客は聞く耳持たないし理解する必要もない。

 

過渡的に遅れるなら定常的には中間圧縮比に戻して目一杯BSFCを取りに行けばいいじゃん!はフツウの思考だが

・面倒ダー モードネンピにはカンケーない

・過給ミラーをやろうとすると過給機性能ガー 過給機総合効率の目玉が広く過給機の【流量、過給圧】のレンジ(サージラインと最大流量=最高ターボrpmに挟まれた領域)が広くないと過給ミラーの取り代がない

位は誰でも思いつく。

 

④ 「全部載せ+連続可変圧縮比使い倒し」でどこまで下がる? 「全部載せ」の内容は限定せず何でもアリで妄想大歓迎 ~

ε=8.0に逃げ込むとλ=1 最小燃費率は260g/kwh以下にはならないが13bar程度までMBTがとれて(@2000rpm)フツウに高圧縮比otto運転するより(低回転)高負荷域はマシになる。これが低圧縮比=低膨張比の限界。可変圧縮比機構を作るず~っと前から分かり切っていた話。

 

⑤ 圧縮比連続可変をネンピ以外の目的に使えないか?

   思い付き例 触媒暖機中(冷機始動~触媒活性化まで)は燃焼安定限界を守って

      ①圧縮比は暖機後定常マップと同じ+リタード

      ②圧縮比を暖機後とは別モードの可変+リタード

    触媒昇温終了までのエンジンアウトエミッションを同じにしたとき燃料消費の少ない方が勝ち

    燃料消費を同じにしたときエンジンアウトエミッションが少ない方が勝ち

誰でも思いつく話で簡単に実験はできるので実施済みと思われる。

「最小冷機時排気となる圧縮比」なるものがガソリンエンジンで存在するのか自体が?で、テキトーに書いているだけ。

 

 

オマケ

「発電用」なる売り文句を耳にするが、発信源と思われる文書を拾った。

Nissan gasoline engine strategy for higher thermal efficiency

p4より

エンジン高さが低くなるのでロングストローク化が可能との主張らしい。strategyも大事だが、

「BSFCの真実」をカイゼンしろ!

がフツウの思考。

それなりの生産数を見込んでいるようだが、一度めのビックリはすぐに忘却される。

 

 

 

超高圧縮比の全負荷性能

VC-Tの2000rpmのBSFC比較図を再掲 ここで見るのは全域ε=14.0 

全域ε=14.0 の高負荷域はsimulation臭がするがここでは無視する。

VC-Tのグラフが全域λ=1かは不明だがここでは話の筋書き上、2000rpmは全域λ=1と仮定する。

ε=14の、「BSFC右肩上がり」に注目する。λ=1での右上がりBSFC絶壁急勾配の意味は

「空気を余計に入れてもトルクがほとんど変わらない」

↑は当然のRON98使用で、なんとかデータは採れているが、RON91を入れると

空気を余計に入れるとトルクが下がる

状況になると思われ。ノッキング以外の制約は無しと仮定したイメージモノ

ノッキング以外で最初に引っかかるのは騒音・不快音 (dP/dθ)

「ハイオクならこうならない」は誤りでRON100でも条件を厳しくすればこうなる。釣り針型なので fish hook curve と言う。fish hook curve engine でググると空燃比を変えたアタリマエ話は出てくるが

「ノッキング制約で空気を余計に入れてもトルク落ち」

は出てこない。現象としてはありふれた話で、使えない領域だからデータは表には出てこない。

毎度おなじみのM社2010年無過給妄想図

「何か未発見特効薬を入れない限り釣り針型が変わることはない」が(誰も言わない+どこにも書いていない)業界共通認識で、妄想図は釣り針がひしゃげている。ひしゃげた釣り針は役立たずで「釣り」にならず魚は逃げる。釣られたらマヌケで、上側にぐいっと矯正し妄想図→現実図とする。もっときつく曲げ直しが必要かも。

無過給4-2-1排気+DIは「未発見特効薬」ではなく、「それ自体は既知で、圧縮比を上げても全てをホドホドに収める」 圧縮比アップで「薬効」を使い切っているのでリタード+増量で高負荷BSFCが悪くなる「形」は変わらない。

燃料増量によるBSFC急勾配は別の話になるが、λ=1の限界BEMPはこんなところでも制約される。λ=1でのBSFC絶壁急勾配は安定性がなく実用性がない。BSFCの値だけではなく勾配にも意味がある。

「トレースノックに設定しているからEや~」「ノックコントロールで的確に吸収するからEや~」は絶壁急勾配に対してはキケン。「多少の環境変化、個体ばらつき、ガソリン性状差(RON/MONが全てを決めるワケではない)等でノック領域に入りやすい」とするのがフツウの思考。常時高負荷でノック判定→リタードしているようでは圧縮比もクソもない。

 

VC-T 全域ε=14.0 グラフ上での最急勾配部を拾ってみる。

12.0bar 290g/kWh → 12.5bar 340g/kWh

空気量=燃料量を (340/290)×(12.5/12.0)=1.22倍 にして

トルクは       12.5/12.0=1.04倍

これだけの空気を無過給で入れるのは無理で、↑の10barあたりから上は過給域では?と想像できる。

トルク/点火時期感度はケースバイケースだが、MBTから遠い(トレースノック設定ではリタードロスがデカイ)ので線形近似して(MBTに近い領域は点火時期~トルク感度は小さい)

過給ガソリンエンジン例 トルク1.85%/点火時期1°   

http://glanze.sakura.ne.jp/great_trials4.html

SKY-G トルク1.36%/点火時期1°

ε=13  EPA 1500rpm WOT近傍 9.4bar/8.8bar= 1.068倍 (ハイオク/レギュラーで点火時期5°リタード) 

 

4%のトルクアップは、2~3°のノックリタードで消えると想像でき、340g/kWhに対し更に4%BSFC悪化して354g/kWh。

例えば、12.5bar (340g/kWh)の運転点はマップ上は存在するが実用性がない。

フツウの感覚の持ち主は、BSFCが急激に悪くなる手前で止める。ε=14の図なら10bar、250g/kWhあたり。

「全負荷BEMP&BSFCで無理をしない」Prius (RON91 ε=13 PFI) 実績は9bar@2000rpmで止めている。

 

λ=1でのBSFC勾配限度 

感覚を数字で整理する。

題材は↑のVC-T ε=14と ↓のT社2.5L(ε=13 コンベ) 

HEVの低負荷がウソ臭いのは前回書いたが高負荷はそれらしく見える。今回はHEVを無視する。

高負荷域のみ切り取ってBSFC勾配を算出する。BSFCはここではチラ見だけにして「勾配」をガン見する。

BSFCの数字を見ると、T社の右端(全負荷ではない)は確実にλ=1。

T社のBSFC勾配は誰が見てもλ=1 限界BEMPで、これ以上のλ=1 BEMPは無理だが数字で整理する。あと0.1barでもカンバレ!とか言い出すのは↑の事情を知っていればバカ。↓は熱効率マップ等高線から拾ったので情報落ちがあり、制御(設計想定)上はあと0.2bar頑張っているかもしれないがここでの話には関係ない。

T社はcooled EGRで目玉の底を広げているが右端近辺はOFFでBSFCは急勾配で悪化する。急勾配区間幅は1barしかなくこれ以上目玉の底を広げるのは無理。無過給故EGRはカットして空気量を増やしてトルクを取りに行くがBSFCは悪くなる。

「これ以上目玉の底を広げるのは無理」と言われても一般人にはわかりにくいが、端的に理由の一つを書くと

一品仕上げ絶壁マッチングで目玉の底を広げた気分になっても、

「気分だけで実力が伴わない」

点火時期(ノックリタード)、EGRばらつき等の関係で「踏んでも加速しない・踏むと減速する」個体・領域が出現する懸念がある。