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ブログ版「泥鰌の研究室」

 信州飯田周辺の方言(飯田弁)を発信しながら、日本語について考えていきます。

ナメ(滑め)

2004-12-21 | 飯田弁語彙の解説と考察
飯田弁で「ナメ」といえば、道路などに氷が張り、凍結した状態を言う。「あそこの道のまがりかどがナメになっとるで、気をつけなよ」といった感じで使う。
近隣の方言集などをしらべたところ、同様の記載があったものは、岐阜県の岩村町に見られたが、他の資料には見あたらない。

愛知県に常滑市という町がある。「常滑」という語は、万葉の時代から見られる語であり、「川の中で水苔がついて常に滑らかになっている石を指し、多くは「永久」を意味する。

また、登山(山岳)用語で、「ナメ」というと「滑らかな岩の上を薄く水が流れている場所で、きわめて滑りやすい岩盤」を指す。単に「ナメ」あるいは「滑床(ナメトコ)」と言う。この「ナメ」が滝のように傾斜した部分を「滑滝(ナメタキ)」と言う。いずれも現在、登山用語として生きている語である。

古語辞典によると「ナメ」とは、ぬるぬるしているものを指すとされている。

以上のことから解釈すると、「ナメ」とは、ぬるぬるしていて、絶えず水が流れて滑りやすい場所ということになり、「日本方言大辞典」(小学館)でも同様の解釈が記述されている。同書では、飯田弁で言う「ナメ」の記述が採録もれとなっている。(東条操の「全国方言辞典」には、長野下伊那の語として採録されている。)

全国的(特に西日本)には、「絶えず水が流れて滑りやすい場所」をさす「ナメ」が、飯田近辺では、「氷が張り凍結した状態(場所)」で、全国的な傾向の意味とは少し違う点が興味深いところである。

「生きている日本の方言」 佐藤亮一著

2004-12-18 | お薦め!この1冊
日本人の心のふるさとである方言は,日本語に新たな活力をあたえるエネルギー源。本書は,共通語とのちがい,方言の起源や発祥の由来にふれて,そのぬくもりと豊かな表現の世界を紹介しながら,方言の面白さをわかりやすく語る。
本書を読んでいると、方言は「民衆の想像力から生まれたことばの世界」であることを発見できる。かつて福沢武一が「方言は父祖が生活の中から編み出した」と言ったことばを彷彿させる一冊と言えよう。

新日本出版社
判型:4-6判 / 190 ページ
定価 1,995円 (本体 1,900円)

「北信方言記」 福沢武一著

2004-12-17 | お薦め!この1冊
福沢方言学の集大成というべき一冊。
福沢は、平成15年5月に逝ったが、平成13年10月に本書をまとめた。福沢が教鞭をとった屋代高校の教え子たちが、福沢逝去後に奔走し、本書の刊行に至った。
福沢の語源への探求には鬼気迫るものがある。本書を通じて、真の学問のあり方を垣間見ることができよう。

ほおずき書籍 A5版 232ページ 1,995円(税込み)

福沢は、本書の序で次のように述べている。

 方言を集めるだけでは学問でない。面白がって眺めているだけでもならない。一語々々の本義を把握しなければならない。その際、一番大事なのは比較だ。遠近の資料が不可欠だ。・・・・(中略)・・・・何もかも不足がないはずなのに、ないものがある。それは何か?日本語に欠けていることが自明でありながら、放置されているもの、もはやそれは言うまでもないはずだ、-語源への探索欠如だ。探索する意欲の欠如だ。その必要性を理解していない。そのことを私はとっくに警告した。・・・・(中略)・・・・。
 事の重要さに改めて身震いする。北信方言の考察が進むにつれて、欠如は救いがたいことが明確になってきたからだ。日本語は、方言も共通語も、根無しかずら同然である。この現状が今後も続くばかりだ。
 哀れな予言と共に私は間もなくお陀仏である。・・・・(後略)・・・・。

福沢の逝去後、こうして福沢の声を聞くことになるとは思いのほかであった。あの温厚な福沢の顔が懐かしく思い出される。
この序に記された福沢のことばを、これから方言研究を続ける者への遺言として受け止めて、改めて方言について考えていきたい。

福沢武一先生のご冥福を重ねて祈るばかりである。

イッテキマシタ

2004-12-17 | これって、方言(飯田弁)?
仕事先、学校などから帰宅すると玄関をあけて「イッテキマシタ」という。帰宅途中、ご近所の方々と会って「イッテキマシタ」と挨拶を交わす。飯田周辺でよくみかける風景である。
あたりまえに「イッテキマシタ」と使っているせいか、これが「方言」だと聞いて、ほとんどの飯田人は仰天する。共通語では「タダイマ」と使う。ただし、「タダイマ」は、帰宅したときにはじめて使うものであるが、「イッテキマシタ」は、ご近所との「挨拶語」でもあり、このような意味からすると、使われる範囲は、「タダイマ」より広い。

ネットでみつけた飯田弁

2004-12-10 | 方言に関するブログ記事
ネットでみつけた「飯田弁」のあるサイト、ブログを紹介します。
このほかにもたくさんあることと思います。ほかに見つけられた方、よろしかったらコメントらんへ書き込んでください。

コロコロミントさん
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ohgai/3927/
 「飯田弁」ボタンをクリックすると飯田弁サイトに切り替わります。

Kuwaさん
http://park11.wakwak.com/~kuwa/index1.htm
 伊那谷の写真もとてもすてきです。

ロバさん
http://www.inadani.jp/
 「伊那谷てんこもり」の中から「方言講座」をクリックすると伊那谷の方言がたくさん登場。

MHさん
http://www.clio.ne.jp/home/mhigo/index.htm
 日常使われる方言を知ることができます。

芹沢亜衣さん
http://www.h6.dion.ne.jp/~serizawa/
 掲載されている「小説」の中に飯田弁が登場します。

遠山健康堂さん
http://www7.plala.or.jp/kenkoudou/
 鍼灸師の健康堂さん、治療の合間に収集された方言が紹介されています。

NINECUBEさん
http://www.ninecube.jp/blog/archives/000153.html
 ブログの投稿記事に飯田弁を発見しました。

鴨池農園さん
http://www.i-chubu.ne.jp/~tuduki/
 松川町へ引っ越してきてりんご農園を経営されています。

私のサイトはこちら「泥鰌の研究室」です