自分史・・純粋バカ一代・・ZAIYA友二 ・・デビルモンスター回顧録……旧タイトル 515の放浪

デビルモンスター逸話集・・そののちにアメリカ人たちから『デビルモンスター』と呼ばれた『オレ』の思い出話・・

第1話 【年下の男の子という場所にて】 《第8章》

2013年08月25日 23時59分00秒 | 515の放浪
「どうしたいか? キザワさんと話していだけです」
「キザワと何を話すつもりなんだ」
う~ん。まだ友達をかばわねばという気持ちがあるんだろうな。この人けっこう『いい人なのかも。
「ただ、事情を聞きたいだけです。それだけです」
ここは、端的にきっぱり短く言った方がいいと思った。自分でも、説得されるとき長々と言われるといやだったしね。
しばし沈黙のあと
「ちょっと、待っててくれ」
おお、この人キザワさんを説得にまわったか。
あるいは、キザワさんの居所でも調べてるのかな。

「もしもし」
さっきと違う声だ。暗くかすれた声だ。
「キザワさんですか?」
「ああ…ヤマザキか」
「そうです!ヤマザキです!よかった!ほんとによかった!…じゃあ、これで電話切りますね。また電話します。さようなら」
「おい。いいのか…」
「いいんです。キザワさんの無事が確認できたんで。お姉さんに知らせてきます。さようなら」
『さようなら』って あまり言ったことなかったな。『じゃあな』か『じゃあね』くらいしか言ったことないのな。
「あ、そうそう、キザワさん、そこから動かないでくださいよ。食べ物は大丈夫?その友達がなにか食べさせてくれてるの?」
「いや…自分で何か買ってきたりしてるけど…」
「あ、そう。じゃあ大丈夫だね。夕方までには また電話します。さようなら」

 3度使い慣れない『さようなら』を言って、相手がなにか言いたそうなのも かまわず電話を切った。

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第1話 【年下の男の子という場所にて】 《第7章》

2013年08月25日 23時30分00秒 | 515の放浪
「お姉さんが今東京に来てて心配してます。キザワさんが急に姿を消したんで、自殺かもしれないとか。警察に捜索願い出さなくっちゃとか…」
これでどうだ。
「キザワが自殺?しないだろ」
「あなたは、自殺してないって証明できますか?」
「なんだとお!」
なんで怒るの?

「いえ、キザワさんに会うか。電話で声を聞くまでは、自殺ではないとは確認できないんですよ」
「…う~ん。他は探してみたの?」
「いえ。キザワさんから電話番号聞いてたのはあなただけですから。あなたしかいないんです。キザワさんを探す手がかりがないんです。お願いです。協力してください」
よくこんなにペラペラしゃべれたな。自分でもびっくりした。

 相手は少しの間沈黙の後
「で、協力って何をすればいいの?」
ヨシ!やっとこっちのペースで答え始めたな。

「キザワさんを電話口に出してもらえませんか」
キザワさんが、そこにいると読んで勝負だ。実際にそこにいないのなら次の手かな。『次の手』が、頭がもあもあしてて考えつかないけど。

「キザワを俺がかくまってるって思ってるのか?」
『いないよ』ではなくて『かくまう』って言葉か。オレはそんなふうに言った事がないのに、わざわざそう言ってくるってことは、かくまっている感覚があるってことだな。

「はい!いると思っています。あなたの背中のほうに…」
もう一発勝負発言。そこにキザワさんがいるなら、きっと彼に背を向けてオレと話してるはずだ。

「背中のほう?…」また沈黙。
どうやら当たったかも。次に何を言うか待つか。

「あのさぁ、もしキザワがここにいるとしたら…したらだよ。どうする?」
「どうもしません。あなたには感謝します。物やお金ではお礼もできませんけど…キザワさんに話が聞きたいだけです」

「いや、お礼はいいけど…キミは何者なの?」
「何者でもないです。ただの後輩です」
「後輩ねぇ…将来何になろうとしてる?」
「将来?…探偵です」
「探偵かぁ…」
将来探偵?知らねぇよ。今その話かよ。

「それで、どうすればいいんだっけ?」
よしよし!。こっちのペースになり、次はこっちがリードできるようになったか。

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第1話 【年下の男の子という場所にて】 《第6章》

2013年08月25日 23時00分00秒 | 515の放浪
自分の部屋に戻って考えた。
 キザワさんなんで消えたのか。それを解決するにはどうしたらいいのか。いったい、どこにいるんだ。どこを探せばいいんだ。途方にくれそうな時、ある手がかりを思い出した。
 以前、キザワさんから「親友なんだ」という人の電話番号を書いたメモをもらったっけ。携帯電話のない時代、家電を部屋に引いてる若者は、お金持ちという状況をオレに説明してたっけ。いや、裕福な友人がいるんだということを オレに自慢してるみたいだったな。だから、これが証拠だよと番号を書いたメモをわざわざオレに渡したみたいだ。

 よし、その「親友」にかけてみよう。10円玉をいっぱい持って公衆電話へ出かけた。
その番号にかけると、なかなか出なかった。
 長い呼び出し音の後、やっと「はい」とだけしゃがれた男の声が聞こえた。瞬時に、そうこちらも沈黙の時間は長くとれないので、瞬間的に『キザワさんがいるな』と感じた。だから「おい、電話だぞ。おまえさがしてるんじゃないか。どうする」という会話があった分、電話にでるのが遅れたか。そうかも…だけど。

「あっ。すいません。キザワさんの親友と聞いてお電話してます。キザワさん そちらに居られます?」
「シンユウ?」そこんとこだけ引っかかって聞いてきたか。音だけでは『親友』という言葉は伝わらなかったか。あるいは、『ただの知人』を相手が『親友』と言っているから、納得がいかないか。

「ええ。キザワさんの大切なお友達と聞いています。そちらにキザワさん来てませんか?」
「あんた 誰?」
すぐに『キザワはいないよ』とは言わないんだ。オレが何者なのか気になる?
「キザワさんの後輩です。キザワさんに伝えたいことがあるんですよ。そちらにいないんならどこにいるかご存知ありませんか?」
「伝えたいことってなに?」

ほぉう。こちらが質問したキザワさんの所在には答えずに、そこかよ。
「できれば本人に会うか電話で直接伝えたいんですけど…そちらから、キザワさんに伝えることできますか?」
「だからさぁ~…」面倒くさそうに…いや、どうするか考えてるのかな。
「キザワに伝えることってなに?」
そうかい。それがどうしても気になって聞きたいなら、そこが突破口になるかも。
 しかも、相手はこちらの質問を ことごとくはぐらかしている。『キザワ』には触れてほしくないということかも…

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第1話 【年下の男の子という場所にて】 《第5章》

2013年08月25日 22時00分00秒 | 515の放浪
 翌日の朝刊配達時間になっても、キザワさんは来なかった。

 所長はと見ると「キザワのやろー部屋にもいねぇんだよ。昨日飲みに行って帰ってこねぇのか」意外に あわてても怒ってもいないように見える。

 そのころの新聞販売店の店主ってのは、サラリーマンの平均年収の倍以上の収入があったらしい。そういう『経営者』には、配達が1日穴が開いたなんてちいさいことだったんだろう。代わりに所長が配達してたみたいで、朝の運動お疲れ様。

 キザワさんの部屋に行こうとすると、途中でお姉さんに会う。おでかけですか、消えた弟はほっといて。オレはけっこう心配してるんだけどねぇ。お姉さんはオレを見ると、さすがにすまなそうな顔をして「今日は、前から約束してた友達のところへ行ってくる。ごめんね」

 ふ~ん。「女の友達?」さほど男か女かが気になったわけでもないんだけど…会話として返す言葉ってそれくらいしかなかったんだよね。お姉さんは、急に顔を近づけてきた。鼻の毛穴が見える。「気になる?女友達か男友達か」オレは、急接近した年上の女性の顔に圧倒されて ただたじたじしてた。

「むふふぅ。女の子だよ。友達って」口は笑って 目はネコみたいににらんでる。
「あ、そう、いってらっしゃい」それしか言いようがない。

 せっかく東京へ出てきたんだから、高校時代の友人などと再会するのは自然なことだろう。でも消えた弟はいいのか。実姉がでかけてしまって、弟捜索はオレがやるのかと思い込んできた。

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