あるベーシストの平穏な日常

ネタに困った男が暗中模索する綱渡り的な日記

プロローグは無駄に長い

2011年07月08日 02時11分10秒 | シルク労働

最近では〔普通自動二輪〕って言うようですね。

ワタクシのようなオッサン世代には〔中免〕と言った方が分かり易いかもしれません。
まあ、要は400ccまでのオートバイが乗れる免許の事ですな。


18歳の頃、その免許を所得したワタクシですが、当時は車を買ってローンに追われる日々という事もあり、
『いつか余裕が出来た時にでもバイク買って…』
…なんて思いながら、全く余裕が出来ずに今に至る事になってたりします。


26歳の頃…
勝幸先生はYAMAHAのTW200というオートバイに乗っていました。

その勝幸先生、『冬は寒いけん乗らん!』とかヌルイ事を言って冬眠させていたので、
『じゃあ、冬の間だけ貸しちゃってんない!』という流れになり、ワタクシはワガモノ顔で4ヶ月ほど乗り回していました。

楽しい日々はあっという間に過ぎ去り、暖かくなって来た3月上旬、TWとお別れの日がやって来ました…


仕方ないよね…だって俺のじゃないんだもの…

ま、いっか。どうせまたすぐに逢えるのだから。
根性の無い奴の事、どうせ11月になれば『寒い、寒い!』とか言い始め、無事にワタクシの許へと帰って来るのだから。
それまで、ほんの少しのお別れなのだから…


と、思っていたのですが……

実はその頃、某・木村さんが美容師役で出演したラヴいTVドラマの中でTWに乗っていて、その影響でTW人気が過熱。
当然、価格は急騰。新車は1年待ちは当たり前、中古相場が新車価格を上回るほどのカオスっぷり。

そんな中、あろうことか勝幸先生…

金に目が眩んで売り飛ばしやがったのです!!


ワタクシに何の相談も無しに…

銭ゲバの悪モノのせいで、恋する2人は永遠の別れを迎えてしまったのです…




それから1度もオートバイに乗る事も無く11年…
何故か、年明け辺りから無性にオートバイが欲しくなりました。

とは言え、相変わらず〔余裕〕という言葉には縁の無いワタクシ。
ヤレ10万だ、ホレ20万だ、と大金を右から左へ動かせるほどの甲斐性は持ち合わせていない。
バイク店で購入するという選択肢などハナっから無く、ヤフオクを漂流する日々が始まりました。


…と、ここまでの話の流れから行くと、思い出のTWと劇的な再会を果たし…
みたいな展開になりそうな勢いですが、残念ながらそうはなりません。

実はワタクシ、TWってあんまり好きじゃないんですよね、昔から
身近にあったから乗った。ただそれだけでして…
思い入れなんて全く無いんですよねぇ…

あ、勝幸先生には内緒ですよ。




ま、そんな感じでヤフオクを漂流し始めて早々、自分の考えが如何にスイーツだったのかを知りました。
オークションとはいえ、実働車両にはとてもじゃないが手が出せない。

実働車は諦め、早々に不動車…いわゆるジャンク品狙いにシフトチェンジ。


それから色々な車種を見て回ったワタクシですが、妙~に惹かれるオートバイに出会いました。




HONDA シルクロード (CT250S)


XL系の4サイクル単気筒4バルブエンジン搭載、〔スーパー・ロー〕という超低速ギアを装備し、
CB250RSの兄弟車として'81年に鳴り物入り(?)でデビューするも、
あまりにも売れず、僅か2年余りで生産中止になったという、いわゆる不人気車…との事。

更に、走行距離が2万キロを超えた頃にはシリンダーヘッド周辺からオイルが漏れ出し、
更に更に、スターターモーターが空回りし始める…
という、スリリングなオプション(欠陥とも言う)まで付いて来るのだそうな。


うむむむむ…

またか…いつもそうだ…

ワタクシが好むモノは、何故か高確率で世間一般からズレてしまう…
当初は、ホンダのGB250クラブマンとかカワサキのエストレアとか、タマ数の豊富なベタな車種を狙っていたハズが、
気付けば30年も前に絶版したマイナー車種、世に言うアングラ路線に行き着いてしまう…

しかし、駄目だと分かってはいても、見れば見るほど惹かれてしまう…

同類相憐れむ、という事なのでしょうか…?

〔不人気〕なんて、まるでワタクシを見ているかのよう…
〔空回り〕なんて、もはや他人のような気がしません…


腹を括ったワタクシ、購入車種をシルクロード1本に絞り、ヤフオクを徘徊してみると、ナカナカ良さげな物件を発見。

長期放置で現在は不動、所々に錆やら傷やらあるものの、放置直前までは元気に走っていたそうで、
運が良ければキャブレターの清掃程度で復活するかも…というシロモノ。

現状渡しで3諭吉。充分に予算の範囲内ではあります。

しかし問題が…

出品者が千葉在住という事で、送料が3万…合わせて6万円…
ノグチに換算すると60人…ヒグチにしたって12人ですよ、12人!!


泣く泣く落札を見送る事にしたワタクシですが、やはり気にはなるモノで、ウォッチリストに登録し、行く末を見届ける事にしました。

しかし、入札者は現れる事無く、翌週、また翌週…と繰り越され続け、気付けば1ヶ月以上が経過…


これはもう、俺が買うしかないのでは…?
俺の入札を待っているのでは…?

ワタクシにとって6万円は大金です。
だが、どうだろう?
6万円握り締めてパチンコ屋に戦いを挑んだ、と仮定してみたら…


いやいや、待て待て…
貧乏人のワタクシは1勝負に6万も注ぎ込んだ経験は無いなぁ…

よし、ここはひとつ、身近な友人の体験談を盛り込んでみよう、うん。

ワタクシの友人K君は正月に9万ブチ込んでNO当たりを喰らい、
開店から夕方まで、僅か6~7時間で燃え尽き、真っ白な灰になったそうな…

そう考えてみると、6万など4時間も持たずに消え失せる程度ではないか?

勢いでこのオートバイを買ってみたとしよう。
確かに、直せるかどうかは未知数ではある…
でも、何だカンだとイジり倒し、余裕で3ヶ月も4ヶ月も遊べるのでは…?

4時間VS4ヶ月…
ギャンブルを嗜む人間特有の、よく分からない論理ではあるが、もはや比べるまでも無いのではないか!?


よし、決めた。
落札しちゃおう。
ポチッといっちゃおう。

しかし、ビビリなワタクシの事…
終了時間直前になって怖気付く事も充分に予想できる…

そうだ、飲んで挑もう。
酒の力を借りよう。
酔った勢いでポチッといっちゃおう。



…そんな事を考えながら仕事をしていた、とある2月下旬の土曜日…

ワタクシの携帯にメールが届きました。
単勝で万馬券を叩き出せるほど人気薄なワタクシ、着信はもとよりメールすら滅多にありません。

「チッ、また〔Amazonお買い得情報〕かよ…」

と、悪態を吐きながら受信フォルダを開くと…


アレ?珍しいな…K君やん。

普段、全くと言っていいほどメールなどしない男、かつ……もとい、K君。
ワタクシが送ったメールに電話で返答してくる男、かつ……もとい、K君。
メールを打つ指先がジイさん並みにヨボヨボな男、かつ……もとい、9万ブチ込んだK君。



何事だろう?と思い、メールを開いてみると、タイトルに『いるや?』とだけ書いてあり、本文は無し…

「はぁ?」と思い、よく見てみると、何やら画像が添付されている御様子。
メールに疎い勝幸先生(あ、言っちゃった)、送ってくる写メがまたオモい、オモい。
平気で500KB以上の画像を送って来るので、いちいちダウンロードしなければなりません。


「チッ」


歳を取るとイライラしていけません。


数秒後、画像を見たワタクシは思わず声を上げてしまいました。






   


シ…シルクロード!!


欠品パーツ多数、サビサビのボロボロで、オマケに妙チクリンなタンクを搭載、サイレンサーはどうやら建築足場用の単管パイプっぽいぞ…
しかし、独創的なエキパイの形状は見紛うべくもない、これは間違い無くシルクロード!

大興奮のワタクシ。江川もビックリの鼻血ブー状態。




『シルクロードが欲しい』という話は、何の気無しに勝幸先生にしていました。

勝幸先生は保険関係の仕事をしているのですが、提携(?)している修理工場のヤードに数年前から放置されている車両の事を思い出し、
フラっと見に行ってみたら、それが偶々シルクロードだった、と。



なんと…!

こんなマイナーなオートバイが、目と鼻の先に…
しかも、悩みに悩んだ挙句、ドブ川に6万円捨てるくらいの覚悟で落札を決めた当日に…

こんな偶然ってあるのだろうか?

いや、これはもう偶然ではない。必然だ。いや、運命なのだ。赤い糸で繋がっているのだ。

ワタクシと運命の赤い糸で結ばれている相手はカワイコちゃんではなく、鉄のカタマリであったという現実には眩暈すら覚えずにはいられないが、
今日だけは気付かないフリを決め込む事にしよう。


上の空で無難に夕刻まで仕事をこなし、ダッシュで帰宅。
いざ、勝幸先生の待つ、件の修理工場へ。
徒歩5分、走れば2分。その日のワタクシはスキップだったので4分ほどで到着。

勝幸先生と二言三言の挨拶を交わし、遂に運命の出会いを果たしたワタクシと鉄クズ……もとい、シルクロード。


勝幸先生に口先だけの御礼の言葉を述べ、20分掛けて押して帰りました。



帰宅後、マジマジと眺めてみました。

ボロい。ハッキリ言ってボロい。写真を見て予想していた以上にボロい。
が、そんな事はどうでもよろしい。
何せタダなのだから。
たとえボロとだとしても、書類アリの250ccのオートバイを0円で入手できるチャンスなど滅多に無いのではなかろうか?



やはり、持つべきものは友ですな。
キン肉マンとテリーマンも真っ青の友情パワーではないか。

美しい…


しかし、ただひとつだけ、別れ際の勝幸先生の言葉が引っ掛かります。



『お前、これから俺に絶対服従じぇ。』



タダより高いモノは無い…


非常に厄介なオプションが付いてきました…