兵士
君という予定された死者よ
まだ君は無名の兵士だが
やがて もっとも有名な兵士となる
祖国の英雄となる
君という
予定された死者よ
君の血が流れるのは
君がたくさんの「敵」を殺したあとか
水や食糧を運んでいるときか
それとも
戦地にむかう戦車のなかで
平和のために行くのだと
そう自分に言い聞かせているときか
ああ 君という
待たれている死者よ
君のママは
君の血で染まった国旗を抱くか
誇らしいわが子よと叫んで
そして
獣のような目をぎょろつかせる
独裁者のその熱い声に
大きくおおきく頷(うなず)くか
─彼に続け!
彼の命を無駄にするな!
彼のいのちを奪った者らに
報復の銃を取れ!
さあ、次は君だ
君が英雄になれ!
そうわめく独裁者の熱い声に
東京はきょう青空だ
東京はきょう青空だ
花粉や黄砂(こうさ)が
眼や鼻をおそってくるが
砲弾はとんでこない
空襲警報は鳴りひびかない
ウクライナはきょう青空か
さっき月をみた
春が近い町の空
これから夕食がはじまる家々
テレビのニュースがもうじき伝える
真冬の町 戦場の家々
月がみえない地下壕(ちかごう)のひとびとの事
●ご訪問ありがとうございます。
いくつもの国々に避難したウクライナ国民、国内にとどまっているウクライナ国民、そのつらさをテレビの画面越しでしか知るすべがありません。
また、多数の死者となったロシア兵やウクライナ兵のことは、もっと分かりません。
町が壊され、家族が引き裂かれるこの厳しさ、傷を負い、命さえ奪われるこのむごさ、早くはやく終わることを!