
(蒼い雪の影)
先の童話作家先生のおかげで、かつて、褒められたことが一度だけあった。
何も知らない私なので、会社の肝入りで、当時、マスコミの初歩を教える講座に通わせてもらっていた。
会社としては新人教育の一環として、モデルケースのようなものだったのだろう。
私は、通常の仕事を終えてから、夜間に3ヶ月間、ジャーナリスト促成栽培?養成講座へ。
講師陣が魅力的だった。当時、現役バリバリの評論家、作家など、TVや月刊誌の記事で活躍中の人たちばかりだった。
生徒は、20人ほどで、職業・年齢・プロ・素人問わず、ごった煮状態。主婦・大学生・速記者・会社員・フリーター、まるで闇鍋のように。。。
課題、宿題はもちろんあって、好きなことを書いてきなさい、という先生もいれば、この本を読んでレポートしなさい、あるいは○○についての小論文を提出しなさい、などなど。
文章はこういう風に書きなさい、的な指導はあまりなく、現役ジャーナリストの生き方、考え方を、目の当たりに見学させてくれる、そんな”場”だったような気がする。
ある日、事務局に呼ばれたので、何事だろうと思って行ってみると、事務局の人が「アナタの先日提出の原稿を、M先生がたいそう褒めているから、お礼を言ってきなさい。あちらに居らっしゃるから」と、言うのである。
はてっ?何を書いたのかよく覚えていないけれど、こういう時は”お礼”を言うものなのかしら?、と不可解ながらも、先生のそばへ行ってお辞儀をした。
「おお、キミのは良かったよ。感心した。キミが取り上げていた童話を、僕も読んでみたいなぁ、という気持ちにさせられたんだ。僕は、童話などというジャンルは、今まで読んだことがないんだけれどね」
この先生は、その頃台頭してきた「新左翼」と呼ばれる、知的論理・辛らつな批評で有名な新進気鋭の評論家だった。
はなはだ意外で、思ってもみない展開だった。あれは、仕事がせっぱ詰まっていて、レポートを書くための本さえ読んでいなくて、もうどうしようもなく時間がなくなってしまい、仕事上でしぶしぶ…(あ、童話の先生ゴメンナサイっ!)原稿を読んだのを題材に、エイッヤ~ッ!と書いて出したのであった。
自分が何を書いたのかも、あまり覚えていないのだ。できれば、思い出したくない「提出物」だったのである。
むむ、あれが褒められるとは。。。その時、人生とは、何が起こるか予測がつかないものだ、と感心してしまった。
この先生には、失礼な発言をした事がある。後になって考えると、生意気すぎて、背中が寒くなるばかりだ。
先生が、右翼と左翼の成り立ちや思想的背景などを、説明していた時だったと思う。私は手を挙げて、「そうすると、右も左も煎じ詰めれば一緒ですね」と、念押しするようなセリフを言った。(↑あまりに怖いもの知らずである)
教室は、一瞬シーンと静まり返って、誰もが固唾を呑んだようだった。
先生は少し考える風に下を向いたが、ややあって「…そうだよ」と返答したので、あぁ、この人は正直な人なんだなぁ~、と親しみの気持ちを感じたのである。
このように、失礼の数々だったのに、先生は居酒屋に連れて行ってくれたり、鎌倉の家にも遊びに来なさい、と言ってくれたりした。
あの頃の私は、世間の何たるかも知らず、バカ丸出しで生きていたが、世間の風は、そのわりに温かかったのだ、と懐かしく思い出すことがある。
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「ナンセンス!」ですか…団塊の世代が好んで使った言葉じゃありませんか?違うかな~?
それ言われた方のリアクションは、如何でしたか。
まぁ、お互い、若気の至り。。。ということでね!
熱血漢のコメント、ありがとうございました
はぁ、まぁ、ひとえに皆さまの応援のおかげで、とてもありがたいです
これでなかなか、ブログ読むのもタイヘンですよね…あはは
まさちゃんのところにも、ゴブサタしちゃって、申し訳ないですぅ。今日はありがとうね!感謝感謝
「ナンセンス!」と怒鳴ってしまった。
後で受講者には大いに賛同を受け、先輩方には、大変なお叱りを受けました。
まさちゃん、ランキングって、ご縁ないから、たまにしか見ないけど、のっちさんのコメント読んでビックリしたわ
まぁ、この文章の面白さは、作家のにおいがプンプンするぞ
そうか、、、若いころ、そんなお仕事してたのか~
トーコさん、こんなに書けたら本出せちゃうよ
しかし、一位はすごいなぁ
頑張ってね、トーコさん、応援してるよ
ポチやっとくわ~
いやいや、私などは、のっちさんの足元のスリッパにも及びませんから(笑)
仕事でいろいろな人に会ったけれど、そんなこと、思い出しながら書いていくのも、記憶の整理になるかもデス。。。
で、「人気ブログランキング」に、昨夜登録させていただきました。
一番最後を見たら、出ていなかったので、まだ出ないのだなぁと思っていましたが、今日は出ていました。
試しに見た、51位~100位の中に入っていたので、ポカーンとして、続いて口の中の物を吹いてしまいましたとさ。。。えへ
もしも、共通点があるとしたら、とっても光栄でっす!
”わーーい!”のコメント、ありがとうございました
トーコさん、この調子でプロの物書きになりましょう!!!
わたしも社会に出たころ、物おじしないでとんでもないことを
偉い人に口走っていたのを思い出します。
10年くらいして、顔に額から縦線が入りました。
(ちびまるこちゃん参照)
顔と言っている内容が一致しない!とよく驚かれていましたね。
なんだか共通点が多くて、うれしい♪
あ、たいしたことないです。だれでも受講できますから、お金さえ出せば(笑)
私の場合、費用も手続きも会社持ち。ラッキーでした。チーフが、どうだ行ってみるか?って。
私、偉い人とか有名な人の前でも、わりと態度がデカイのです。自分でも、意味が分かりません。それを、面白がってくれる人も、中にはいるのです。不思議ですが…
熟練のコメント、ありがとうございました
今日も、ありがとうございます
またまた、何をおっしゃいますやら、素敵なトーワドーさん!!
あの時代、必死だったけど、振り返ると”充実感”があったのですね。トーワドーさんも、波乱万丈。。。な出来事とか、沢山ありましたでしょう
私はほかにトリエがないから、とにかく、活字のある場所を仕事に選んだのですよ。活字を見るのが好きなだけですけれど…あはは
嬉しいコメント、ありがとうございました
過去を懐かしむようになったら、ヤバイかもしれませんが(笑)
懐かしむというよりも、あぁ、あの時は気付かなかったけれど、こうだったのだなぁ~、と確認しているようなものです。
これも、ブログを書くようになったお蔭ですよ。ありがたいことです
”昭和”って、良い時代でもあったのですね~。そんな時代に生きられたこと、感謝しています
優しいコメント、ありがとうございました
「原理主義」の恐ろしさを知ったのは、養老孟司先生の本を読んでからです。
養老先生は、よほど原理主義者がお嫌いのようです。なにかにつけて、どの著作でも、詳しく何度も説明されているので、いくら呑み込みの悪い私でも、よく分かりました。
過去の自分は、そんな”視野狭窄”なところがありました。今は、固く戒めているので、多少直ってきたようですよ
「中庸」と「日和見」は違う気がします。気持ちの問題かもしれませんが…。
日本の若者が変わってきている、という見方がありますけれど、私は、それほど悲観的ではありません。育った環境のせいもあるでしょう。
タイプスリップして、過去の時代に行ったら、ピシッと筋の通った人間になるのではないかしら?なんて
また、筋が通り過ぎると、”原理主義”が気がかりになりますね。あはは
ブログ、楽しみに拝見させていただいています。素晴らしいコメント、ありがとうございました
トーコさん、凄い所に出入りしてたんですね。
M先生とトーコさん、お互いに、
少しだけ、電流が流れたかな。(笑)
昭和の頃って何かにつけて良かったと思いますね。
人を思いやる心、助け合う気持ち、そのほか色々と自分勝手なことをする人が少なかったような気がしますね。
トーコさん、良い時代によい経験をすることができて、本当に良かったと思いますよ。
私なんかには縁のないところでトーコさんはお仕事されていたのですね。
私にとっては理想のトーコさんです。
人としてこのような環境に置かれていると、人の気持ちを理解するとか、自分の言いたいことを発言できるとか、人間にとって大切な事柄を沢山学ばれたことだと思います。
ご幼少の頃から本を読むのがお好きなトーコさんの事だから他の環境に居ても良いものを沢山身につけられたと思いますけどね!
トーコさんの沢山の良い思い出に乾杯!
昭和…よき時代でしたよね。
おおらかで、おおまかで、人にまだまだ優しかったし。
人と人のつながりが、まだあったような気がします。
ポチ!
「左翼も右翼も同じ」という意見は、同感です。
右翼も左翼も、原理主義的になれば、他を顧みなくなるのではないでしょうか。
だから行動は先鋭的。
行動することが正義なのですから、行動に走ります。
逆に言えば、行動しなければ不正義になる。
日本のある時代はそうだったようですねえ。
戦前は右が走り、戦後は左が走った。
中庸は「日和見」と言われたりするから、大変ですよねえ。
今はそれほどの情熱家がいないのでは?
日和っているのではなく、もうどうでもよくなっているのかもしれませんね。
また投稿してみます。迷惑な話でゴメンナサイ。
どちらかの消去をお願いします。
変に世慣れたトッチヤン坊やのような青瓢箪やら、なんとかのナントカを追っかけるだけの自信過剰なオスが蔓延っている今こそ、トーコさんのような青い若者が欲しい。
何を煎じ詰めたのかは分かりませんが、原理主義の立場になってしまえば、右翼も左翼も同じだと私も思います。したがって、同感です。
原理主義は他を還り見ない。「吾こそは正義なり」なので、恐いものはありません。
正義を貫くことが正義なのだから、はた迷惑。困りものですね。
もっとも、斯く言う私も、この歳でなお、すこし原理主義ッぽいところがあり、持て余し気味です。
先生は困ったでしょうが、よく正直に答えてくれましたね。
それを当の本人に、言っちゃうのですから、世間慣れしていないのにも、ホドがあるのですね
先生も不意を突かれて、驚いたことでしょう。あぁ、この子は正真正銘のガキなんだなぁ、しょうがないなぁ、と思われたのか。
実際ワタクシ、会社の先輩には、「ガキ」と呼ばれていましたしね
あ~、右も左も、こわ~~い~!えへへ
苦笑いのコメント、ありがとうございました
それは名言ですよ。
もっとも当の本人に向かっては言えませんが。
左でよかった。
右だったら命がない?