「将軍は千人を救うのに一人を犠牲にする方法をどうお考えになりますか」
「何も」
「何も?」
「救うか否かを決めるのは数ではない。自分の価値観だ。
我が国の兵千人を救うのに他国の兵一人の命が必要ならば喜んで私はその一人を殺そう。
我が国の兵千人を救うのに君の命が必要ならば私は迷い無く、千人の兵士を見捨てよう」
「それはナンセンスです」
「なぜだね。私は君を必要としている。だから君を優先する。それだけだ」
「その為に千人の兵士の無念を背負うというのですか、将軍は」
「背負おう。それが人の生きる道なのだから。
千人を救った人間が英雄たりえるのではない。
その身の、その心の、その全霊をかけて守ると誓ったものを守り抜いた者こそが英雄なのだ。
緋の国の将軍が誓おう。
蒼の国の姫よ。私は生涯をかけて君を守る剣となる」
「私に千人を贄として生きる価値があると仰る?」
「ないと感じるならば努力したまえ。
千人を犠牲にして生き、それでも笑えるように」
「私に笑えと言うのですか、将軍は」
「失われた千の命の為に笑えと、私は言わない
君は、千の命を奪った英雄の為に笑って欲しい。
我侭だ。
だが、私はその我侭の為に私は千を屠るのだ。」