鎌田実の野球教室

元トラ戦士が分かりやすく指導!

投げる(2)

2008-10-17 17:10:00 | 練習
 野球においてスローイングの悪い人の矯正は難しい。ひじや腕が縮こまって腕の振りが大きくしっかり振れない子供やひじが使えず腕全体を伸ばしたままで横手からしか投げられない人などもいるが、スローイングの矯正は難しい。スローイングのいい人をより強くしたり、多少矯正するようなことはできるが、悪い人をよくすることは至難の業といってもよい。

 これまでスローイングについては、日本や米国の優れた指導者やスポーツ医学の見地から矯正方法について議論されてきたが、「これをやってよくなった」ということを聞いたことがない。それはそうだと思う。誰も彼もが、イチローや松坂のようなスローイングができるようになるのなら、皆がメジャーの選手になれるからだ。

 数年前、「腕の振りが正しくできるように」として作られた米国製の「スローイング矯正器具」を見せてもらったが、効果なく忘れ去られている。日本でもバドミントンやテニスのラケット、ヤリ投げ、アメリカンフットボールなどを投げるのもよいとか、右投げの人は右足だけ4、50センチの台の上に右足を乗せ、右肩、右ひじを上げて投げる方法とか色々聞くが、よくなったという結果が出ていない。

 スポーツ医学をやる人は、骨格とか筋力とかいうよりも子供は神経系統の問題だから幼少の頃に矯正すべきだろうというが、子供が幼少のときにボールを投げて投げ方が良いか悪いか判別しにくいと思う。悪いと分かっていても、毎日、根気よく子供と一緒になって矯正に取り組んでいけるのか…という問題もあり、なかなか実践できないのが、これまでの現状である。

 しかし、私はこれまでの指導経験である一つの発見をした。投げ方の矯正は腕の弱いときにやるとヒジや肩の故障につながることから、ある程度の強さができるのを待ってやろうと、腕のトレーニングや多少の遠投、体力強化を図るだけでスローイングについては細かく指導はしなかった。

 ところが、ひじを使えず、腕の振りも横からしか投げられなかったA君が、9カ月経って上から投げられるようになったのだ。同じようなことがB君にもあった。二人とも硬式野球をはじめて9、10カ月目くらいである。

 よく考えてみると、二人とも小学生のときは控え選手であり、ボールを投げる機会も体力も使うことも人より少なかったのである。同じようなことがKBクラブの先輩にも何人かいた。

 右投げの投手が、ボールを投げるとき、捕球後にボールを右手に持ち変え、テークバック時にボールを地面に向け後方に引いていくのが通常だが、テークバックでボールを相手に見せたままで投げる子供がいた。その投げ方だと手首のひねりを利用できないから矯正したが、なおらなかったのでそのまま続けさせた。

 その子供には、ゴロを捕ってサードから一塁への送球を繰り返しやらせることとバッティング投手を続けさせた。三年生の夏ころになってボールが速くなってきた。そして高校に進学後は二年生でチームのエースになった。投げ方としてはよくないのだが、腕の強さ、体全体のバランスのよさで強いボールを引き出したのである。

 これまでの指導経験からスローイングについて考えてみると、投げ方の悪い人はスローイングの矯正よりもまず体作り、全体の体力強化とバランスを図ることが先決ではないかと思う。

 KBクラブのある年の中学三年生の遠投力
NO1  95m
NO2  91m
NO3  89m
NO4  88m
NO5  87m
最下位 61m


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