発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

「見え始めた精神医療の実態」

2017-08-13 07:03:28 | 精神科医療
 NHKの「ドキュメント72時間」という番組が好きです。
 人々が居場所を求めて、温もりを求めて彷徨い、集まる場所をTVカメラが72時間観察する内容。

 居場所がない人たちはたくさんいます。
 精神病患者もそのグループの一つ。

 彼らは戦前は座敷牢に閉じ込められ、戦後は病院に収容されてきた歴史があります。
 日本社会には、精神病者を受け入れて一緒に生活するという意識が乏しい。
 きっと、戦後健常人でさえギリギリの生活を余儀なくされた社会情勢も影響していると思われます。

 しかし経済大国と言われるようになった現在においても、その因習が消えません。
 そんな状況が、東日本大震災をきっかけに明るみに出ました。

 避難区域の精神病院から、患者が全国に散ったのです。
 そして希望者は福島県内の別の病院(矢吹病院)に戻ることになりました。
 そこでの聞き取りでは、数十年間精神病院に入院していた患者さんが多いことが判明しました。
 
 障害者一般を受け入れる寛容さが日本社会にはないことを改めて感じました。
 精神病患者でない、精神発達遅延(いわゆる知恵遅れ)も精神病院長期入院を余儀なくされている実態も。
 先日、被虐待児が居場所がなくて長期入院せざるを得ないという番組を見ました。
 当然、難民に対しても言わずもがな。

 いや、障害者だけではなく、健康な子どもったちが通う保育施設でさえ、町から締め出される傾向があります。

 日本は変われるのでしょうか?

 博愛主義を掲げてきた欧米が、近年本性を現し始めています。
 彼らが栄え、豊かになったのは植民地政策の恩恵です。
 名を残す歴史的文化が花開いた時代には、その陰に必ず奴隷制度がありました(日本にもあったのです)。

 しかし昨今、民族大移動ともいうべき大量の難民がヨーロッパに流れ込み、自分たちの生活が脅かされ始めると、手のひらを返したように難民排斥行動に出ます。

 一体、何が正しいことなのかわからなくなってきました。

 所詮、人間は生き残る最良の術をとる生物であるということ。
 自分や子孫の存在が危うくする事態を極力避けるのは当たり前。
 自己犠牲は生存競争になじまないのかもしれません。


■【バリバラジャーナル】見え始めた精神医療の実態
2017年5月14にち:NHK
 見え始めた精神医療の実態 入院患者の圧倒的な多さと入院期間の長さから「深刻な人権侵害」と称される日本の精神医療。しかしどんな人たちが、なぜ入院を強いられているのか、これまでブラックボックスだった。実はこの実態が東日本大震災によって、明るみに出ている場所がある。それは福島。原発事故で、原発周辺の精神科病院の患者たちが大量に転院。いま、その患者たちを地元に呼び戻し、地域での生活へと移行させようと、県が動き始めているからだ。今回番組では当事者や家族の証言から社会的入院の実態を取材。精神障害者の地域移行について考えていく。

<内容>
 退院を目指して患者がやってくる精神科病院がある。福島県立矢吹病院。そこにやってきた患者達に話を聞くと、精神医療の驚くべき実態が見えてくる。それは入院期間の長さ。ある男性は19歳から入院して45年。またある男性は「よく治せ、よく治せ」と言われ続け、入院期間は50年以上に達していた。実は精神医療のデータを見ていくと、日本は世界中で圧倒的に入院患者が多い。先進国の平均在院日数が18日なのに対し、日本はおよそ280日。さらに入院期間1年以上が8万5千人、5年以上が10万人と長期入院となってしまっている人も圧倒的だ。しかし精神科病院の実態はこれまでなかなか明らかにされてこなかった。

◇原発事故をきっかけに見えてきた精神医療の実態
 今回、精神医療の一端が見え始めたきっかけは、東日本大震災だった。原発事故で、原発の近くにあった精神科病院は一斉に機能を停止、患者たちの多くが県外の病院に転院した。その中で「福島に戻りたい」という患者たちを、県はいったん矢吹病院で受け入れ、病院内に設置した「マッチング室」で地域で暮らすための支援を始めている。これまで関わった患者はおよそ50人。多くが30年以上の長期入院の患者だが、取り組みの中で、驚くべき実態が明らかになってきた。矢吹病院の医師によると、ほとんどの入院患者が「入院治療」の必要がない状態だという。さらに患者の4人に1人はそもそも知的障害だった。

◇精神障害者は生産を阻害!?
 日本は戦後、精神障害者の隔離収容政策を推し進めた。高度経済成長時、厚生省は精神障害者が「生産を阻害する」かつ「治安のためによくない」存在だとして病院を大増設。精神障害者はどんどん入院させられることになった。そういった状況のなか、偏見が強まっていくという状況が作り出されていたのだ。スタジオゲストの高木俊介医師は、「この日本の社会自体がどうやって地域で精神障害の人を受け入れていいのか、わからなくなっている」と指摘する。

◇病院から地域へ
 40年近く病院で過ごして4年前に退院した時男さん。時男さんは16歳で統合失調症を発症。退院を訴え続けたが、家族の理解も得られず、入院生活が続いた。退院した当初は、きっぷの買い方、銀行ATMの使い方など、わからないことだらけで苦労も多かったが、今では老人センターやデイサービスなどに通い、友達とカラオケを楽しむなど、自由な暮らしを満喫している。しかし、ふとした瞬間に、長年ともに過ごした入院仲間のことを思い出すという。退院から4年、時男さんは、かつての仲間を訪ねることにした。
 親友だった山口さんは高齢者住宅で暮らしていた。46年間の入院生活を経て、去年退院。自由な暮らしを手に入れ、「ようやく幸せつかんだ」と笑顔の山口さん。もう1人の友人、紺野さんはグループホームで暮らしながら、自然栽培を行う作業所で働いていた。「明日が見えます。毎日一日一日前が見えるっていうことは、病院ではなかった」と働く喜びをかみしめていた。いつか1人暮らしをしたい、という夢もできたという。時男さんは「もっと患者の身になって考えてほしい。社会に出たらこんなにいいところがあるんだぞっていうのを、患者さんにもわかってもらいたいし、社会の人にも、患者さんが社会に出ればこういういいところがあるんだぞって、いい面をもっとひきだしてほしい」と今の思いを語った。

<玉木幸則のコレだけ言わせて>
「この問題は社会に全部つながってる」
 今回は決して精神科病院だけが悪い、ということではなくて。知的障害などのひとでも地域で受け入れられないから結果的にそこに入院する、と。でも本来は地域で生活できる仕組みや環境を作っていくべきやろ? それがないとこの問題は変わらない。例えば、いまだに知的障害や精神障害のひとのグループホームを作るときに地域の反対があるのは事実やし。この問題は障害のあるひとだけじゃなくて社会に全部つながってる。誰もがいつ認知症になるかわからんやん? みんな自分の身になって考えることが大切やと思う。

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