発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

NHKバリバラ「幻聴さんと暮らす~“べてるの家“の奥深い世界~」

2016-10-26 06:45:57 | テレビ
 “べてるの家”は北海道の浦河町にある精神疾患患者達の住む施設。
 今、日本国内のみならず、世界中から注目されています。

 NHKのEテレ「バリバラ」で件名のテーマで放送されたものを視聴しました。
 私も噂を耳にしてはいたものの、この番組を見て目からウロコが落ちました。

 一般に医学の世界では、統合失調症患者の「幻聴・幻覚」は治療で消すべき症状として認識されています。
 番組にゲスト出演した斉藤環医師も「精神科医の視点では、幻聴はあってはならないモノ、詳しく聞いてもいけないモノ」とコメントされていました。

 しかしべてるの家では、それを肯定して受け入れているのです。
 自分の幻聴・幻覚をみんなの前で発表する「当事者研究」。
 その内容をみんなで「あ〜だ、こ〜だ」と討論し共有するのです。

 ひとつ気づかされたのは、幻聴・幻覚には理由が存在すること。

 ある女性の幻聴は宇宙人からのちょっかい。
 彼女は町を歩いているとき、誰もいない空間に向かって大声で叫んでいます。
 しかし、その女性は町の人たちを宇宙人から守るために叫んでいる・・・それを知った町民は彼女の行動を受け入れたのですね。

 認知症患者さん達の不可解な行動にも理由がある(認知症「不可解な行動」にはワケがある)こととも共通した部分があるように感じました。

 さて、2年に1回開催されるべてるまつり「幻覚&妄想大会」には世界中からたくさんの聴衆が集まります。
 そこでさらに驚かされたのは、幻聴・幻覚を公開して共有することによる治療の可能性

 ある男性統合失調症患者が「みんなで私の悪口を言っている」という幻聴の内容を発表しました。
 すると司会者は聴衆に向けて「皆さん、○○さんの悪口言ってますか?言ってる人は手を上げて!」と問いかけると誰も手を上げない。
 すると発表した患者さんは「ホントは悪口を言われてないのかもしれない」と考えはじめたのです。

 これはすごいことではないか!?

■ 幻聴さんと暮らす~“べてるの家“の奥深い世界
2016年10月16日:NHK
出演:松本ハウス IVAN 斎藤 環ほか
 世界中から注目を集める精神障害者のコミュニティーが北海道にある。いまだ病院で過ごす統合失調症の患者が多い中、「浦河べてるの家」では当事者どうしが支え合うことで症状を落ち着かせ、幻聴や妄想と共存しながら地域で暮らす取り組みをいち早く行ってきた。世界的にもユニークな「べてるの世界」を、自らも統合失調症の芸人・ハウス加賀谷と相方・松本キックの案内で2週にわたって紹介。精神障害の奥深い世界と、地域で暮らす上での壁を突破するヒントを探る。


<参考>
□ べてるの家HP「べてるねっと
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小児・思春期うつ病に対する抗うつ薬

2016-10-01 07:21:56 | 
 思春期の患者さんにSSRI(抗うつ薬)を投与すると自殺企図のリスクが増えるとされていますが、実際に効く薬はあるのでしょうか。
 こんなニュースが目にとまりました。
 fluoxetine以外は効かない、という残念な結果です;

■ 小児・思春期うつ病に対する抗うつ薬に限界
2016.09.25:Medical Tribune
 小児と思春期のうつ病に有効な抗うつ薬はほとんどないことを示すメタ解析結果が、英国のグループによりLancet(2016; 388: 881-890)に発表された。

◇ プラセボを上回る改善が得られたのは1剤のみ
 小児と思春期のうつ病に薬物療法を行うべきかどうか、抗うつ薬を投与する場合にどの薬剤を優先すべきかについては議論がある。同グループは、2015年3月までの医学電子データベースを検索。小児および思春期のうつ病の急性期治療における抗うつ薬の有効性と安全性を検討したランダム化比較試験のメタ解析を行った。
 解析対象は34試験で、患者数は計5,260例であった。これらの試験では14種類の抗うつ薬(アミトリプチリン、citalopram、クロミプラミン、デュロキセチン、desipramine、エスシタロプラム、イミプラミン、fluoxetine、ミルタザピン、nefazodone、ノルトリプチリン、パロキセチン、セルトラリン、ベンラファキシン)が用いられていた。
 解析の結果、プラセボと比べ有意な症状改善が認められたのはfluoxetine(標準化平均差-0.51、95%CI -0.99〜-0.03)(日本では未発売)のみであった。忍容性に関しても、fluoxetineはデュロキセチンやイミプラミンより優れていた。デュロキセチン、イミプラミン、ベンラファキシンは、プラセボと比べ有害事象による中止率が有意に高かった。
 この結果を踏まえ、同グループは「小児と思春期のうつ病治療に抗うつ薬が明らかな便益をもたらすとはいえないが、薬物療法を考慮するとしたらfluoxetineが最善の選択肢だろう」としている。

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