発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

双極性障害と季節性

2017-06-30 06:10:43 | 双極性障害
 大うつ病には「季節性うつ」という、冬期に悪化するタイプがありますが、双極性障害ではあまり季節性は言及させません。
 でもやはり、日照時間が長い季節は躁状態、短い季節はうつ状態になる傾向があるようです。

■ 双極性障害の入院、5~7月はとくに注意
ケアネット:2017/06/30
 イタリア・トリノ大学のAndrea Aguglia氏らは、双極性障害患者における光周期の影響について検討を行った。Revista brasileira de psiquiatria誌オンライン版2017年6月12日号の報告。
 イタリアの入院患者に焦点を当て、双極性障害患者を24ヵ月間にわたり追跡調査した。2013年9月~2015年8月までにイタリア・トリノ(オルバッサーノ)のSan Luigi Gonzaga Hospitalの精神科に入院したすべての患者より抽出した。患者背景および臨床データを収集した。
 主な結果は以下のとおり。

・対象患者は730例であった。
・双極性障害患者の入院率に季節的なパターンは認められなかったが、最大日光曝露であった5、6、7月は有意に高かった。
・躁病エピソードを有する患者は、うつ病エピソードを有する患者と比較し、春および光周期(の昼の長さ)が長い時に入院が多かった。

 著者らは「光周期は、双極性障害の重要な要素であり、環境因子としてだけでなく治療中に考慮すべき臨床パラメータである」としている。


<原著論文>
Aguglia A, et al. Rev Bras Psiquiatr. 2017 Jun 12.
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「どこからが心の病ですか?」(岩波明著)

2017-06-11 16:26:33 | その他の精神神経疾患
 ちくまプリマー新書、2011年発行。

各精神疾患について、広く浅く概説した入門書的な内容でした。
ですから、「私は精神疾患なんだろうか?」と思い悩んでいる方が読んでも肩すかし感があると思います。
例示された症例も、解説が尻切れトンボで消化不良感が否めず。
非典型的なグレーゾーンの病態が多々存在するということを言いたいのでしょうか。

ただ、基礎知識の確認にはよい本です。

著者は、疑わしい症状があったとき、病状のパターンを大切に考えるよう記しています。
各精神疾患には病状・経過のパターンがあり、それに照らし合わせて判断する、ということです。
それはそうなんですが、専門家の医師でもうつ病と双極性障害の診断を誤る現状を知ると、素人にはまず無理と言わざるを得ません。
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双極性障害、リチウムは最良の選択か

2017-06-01 07:31:23 | 双極性障害
 双極性障害の基本役であるリチウムに関する報告を紹介します。
 肯定的な論調ですが、ラミクタールの紹介スライドを見ると、再発予防効果はあまり高くないという印象が拭いきれず。

■ 双極性障害、リチウムは最良の選択か
2017/06/01:ケアネット
 双極性障害の治療ではリチウムが頻繁に使用されており、最も確立された長期治療法と考えられる。実際に、リチウムは再発リスクを最小限にとどめ、エピソード間の症状を改善するための治療の基本である。イタリア・ローマ・ラ・サピエンツァ大学のGabriele Sani氏らは、双極性障害治療におけるリチウムの入手可能なエビデンスを検討した。それには、効能、限界、潜在的な利点や、別の製剤を考慮した有効性も含まれた。また、双極性障害患者への抗てんかん薬、抗うつ薬、抗精神病薬の長期的代替使用に関する、顕著な比較をオーバーレビューした。Clinical drug investigation誌オンライン版2017年5月5日号の報告。
 主な結果は以下のとおり。

・入手可能なエビデンスによると、双極性障害患者は主としてリチウムで治療し、いくつかのケース(とくに急性期治療)では抗精神病薬と組み合わせ、リチウム不耐性または無効例では抗てんかん薬を用いるべきであると考えられる。
・補助的な抗うつ薬の使用は、ブレークスルーうつ病エピソードに限定されるべきである。
自殺念慮や自殺行為に、リチウムの長期的な利点と潜在的な副作用についての十分な情報を有している場合には、双極性障害患者の多くに初期治療としてリチウムを使用すべきである。
・疾患または抗精神病薬の経過を悪化させる、重大で長期的な副作用を引き起こす可能性があるなどの抗うつ薬との併用を行うことなく、多くの患者でリチウムは許容可能である。


<原著論文>
Sani G, et al. Clin Drug Investig. 2017 May 5.
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