発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

歳を取ると眠れなくなる

2017-10-21 07:10:05 | 不眠症
 私が加齢とともに感じ始めた体の不調は、不眠症と便秘です。

 不眠は夏を中心とした中途覚醒。
 ただ、いろんなTV番組を見ると、歳を取ると眠りが浅くなるのは自然なこと、最近は昼間の生活に支障がなければ病的に考えないようですね。

 便秘の方は、それまで毎朝快便でしたが、アラフィフになってその習慣が崩れてきました。
 野菜、オリーブオイル、オリゴ糖などを積極的に食べるようにして、現在は以前に近い状態に戻りつつあります。

 さて、気になる「中途覚醒」の記事を見つけました;

■ 年とともに増える「中途覚醒」の防ぎ方は?
 〜睡眠時間は年相応に、過眠に要注意!
(2017/10/20:日経Gooday)
 睡眠の途中で目が覚める早朝覚醒を起こす人は年をとるほど増える。
 不眠症状は大きく3つに分けられる。ベッドに入ってもなかなか寝つけない「入眠困難」、深夜に目が覚めてしまう「中途覚醒」、必要以上に早く目覚めてしまう「早朝覚醒」だ。
 このうち、最も多いタイプが中途覚醒。日本大学医学部精神医学系の内山真さんは「中途覚醒と早朝覚醒は年をとるほど増えることが分かっています」と指摘する。
 成人2559名を対象にした内山さんらの調査によると、週に3回以上中途覚醒がある人は、男性は40~50代が10.5%に対して60歳以上は23.1%、同じく女性は40~50代が14.5%に対して60歳以上は19.9%だった。全体では40~50代が12.7%だったのに対して60歳以上になると21.2%に増えている。
 中でも多いのは尿意で目が覚めること。若い頃はいったん眠ってしまえば朝まで目が覚めなかったものだが、中高年は夜中にトイレに起きることが珍しくなくなる。悩んでいるのはアナタだけではない。50代になると、実に60%以上の人が夜中にトイレに行くようになるという報告もある(日本排尿機能学会誌 14(2):266-77,2003)。
病気が潜んでいる可能性も
 では、どうして年を取ると中途覚醒が増えるのだろう?
 「一番の原因は、睡眠が浅くなって目が覚めやすくなること。腎臓や膀胱など、泌尿器の機能が低下して排尿回数が増えることもあるでしょう」と内山さんは話す。男性の場合、膀胱の下についている前立腺が肥大してトイレが近くなることもある。
 一晩に1回、目を覚ます程度の場合は、後述する生活習慣の改善によって中途覚醒を減らせる可能性も高い。しかし毎晩2回も3回も目を覚ますようなら問題だ。また、「中途覚醒が多いのに昼間は眠くて仕方がない場合、睡眠時無呼吸症候群(SAS)や周期性四肢運動障害(睡眠中に手足が動くことで目が覚めやすくなる)といった病気が潜んでいるかもしれません」と内山さん。
 SASは睡眠中にしばしば呼吸が止まる病気だ。原因は舌の根元が落ち込んで気道がふさがることで、大きないびきをかく。呼吸が止まるたびに睡眠が浅くなるので睡眠不足になり、中途覚醒も起こしやすくなる。いびきが気になる人は睡眠の質や呼吸の状態を調べる「簡易型PSG検査」を受けてみるといいだろう。料金は保険適用で3000円程度。全国の睡眠障害を扱うクリニックで受けられる。
 ストレスが強いと眠れなくなることは広く知られているが、症状は入眠困難だけではない。眠れたとしても睡眠が浅くなるため、中途覚醒も起こしやすくなるという。また、「悪夢を見て中途覚醒を起こすことが多い人はレム睡眠(筋肉は休んでいるが、脳は働いていて夢を見る睡眠)に障害がある可能性がある」と内山さん。これらの病気の可能性が疑われる場合、早めに受診することが大切だ。
 病気ではなく、単なる老化現象の一つだとしても、中途覚醒はあまり気分のいいものではない。できれば昔のように、朝までぐっすり眠れるのに越したことはないだろう。そこで、「中途覚醒の防ぎ方」を内山さんに聞いた。

1. ベッドにいる時間を短くする
 年を取ると基礎代謝が落ちるため、必要とする睡眠時間が短くなっていく。一般に10年で10分ほど短くなり、平均睡眠時間は25歳で7時間、45歳で6時間半、65歳で6時間程度になっている(Sleep. 2004 Nov 1;27(7):1255-73)。
 「睡眠は長ければ長いほどいいわけではありません。必要な睡眠時間が短くなっているのに、若い頃と同じ時間眠ろうとすれば、当然睡眠は浅くなります。特に男性は年を取ると朝型になって早く眠るようになる。そのため、睡眠時間が必要以上に長くなりがち。実際、ベッドにいる時間を30分短くすると、中途覚醒が治る人は多いですよ」(内山さん)
 一見、荒療治のようにも思えるが、深刻な睡眠不足が続いていれば中途覚醒は起きにくくなるだろう。睡眠時間を短くすれば、睡眠は深くなる。就寝時刻を30分遅くしてもいいし、起床時刻を30分早めてもいい。内山さんによると、「睡眠時間が同じでも、布団の中で眠れずに過ごした時間が長いと起きたときの不快感が強くなる」という。中途覚醒が気になる人は、ぜひ試してほしい。

2. 定期的に運動する習慣を持つ
 疫学調査から、運動の習慣がある人は中途覚醒を起こしにくいことが確認されている(過去記事「運動の習慣で「睡眠が若返る」!」を参照)。そのメカニズムははっきり解明されていないが、単に疲れて眠くなるわけではない。1日だけ運動した場合と比べても、長期的に運動を続けていると深い睡眠が増え、中途覚醒が減っていた(Sports Med. 1996 Apr;21(4):277-91)。

3. 寝る前は必要以上に水分を取らない
 睡眠中は意外に汗をかく。脱水を心配して、就寝前後にコップ1杯の水を飲むことを習慣にしている人もいるだろう。起きてから飲むのはいいのだが、就寝前の水分補給は要注意。もしかすると、それが夜中のトイレの原因になっているかもしれない。
 「寝る前に水を飲めば、確実に夜中にトイレに行きやすくなります。それを気にして水を飲まないようにするのは良くありませんが、のどが渇いていなければ無理に水を飲む必要はありません」と内山さん。
 ちなみにSASがあると、睡眠中にのどが渇くだけでなく、尿の量も増えるという。「呼吸が止まると心臓への血液流入量が増える結果、体内の水分が多すぎると判断され、排出しようとする働きが強くなるため」(内山さん)だ。

4. 寝酒をしない
 この連載でも何度か触れているように、寝酒は決して快眠につながらない。少量のアルコールはむしろ興奮作用があるし、大量に飲んだ場合は寝つきだけは良くなるが、睡眠が浅くなって中途覚醒を起こしやすくなる。「アルコールには利尿作用があるので、尿意も感じやすくなります」と内山さん。寝酒は睡眠全体に悪影響を与えるが、とりわけ中途覚醒を招きやすいことを覚えておこう。


 自分に当てはめてみると・・・
 私は50歳代半ばなので、本来の睡眠時間は6時間〜6時間半程度ですね。
 中途覚醒対策の生活習慣、守ってないこと多し。
 2の運動はしないし、3と4は寝酒で水分を摂っているから×だし・・・でもトイレのために中途覚醒することはないなあ。

 昨夜は11時半に床につき、午前1時半に目が覚め、その後1時間毎に目が覚めつつ朝を迎え、起床時間は5時前でした。
 これって健康的? いや不健康?

ベンゾジアゼピンは1カ月で半数が依存性に

2017-07-06 14:55:45 | 不眠症
 いわゆる睡眠薬は、大量服薬で自殺を図った昔々はバルビツール系でした。
 その副作用と依存性を減らすべく開発されたのがベンゾジアゼピン系(BZD)です。
 近年は、BZDの依存性も問題視され、新たに開発されたメラトニンなどの睡眠薬が登場し使用されるようになりました。

 BZDの依存性を解説した記事を紹介します;

■ ベンゾジアゼピンは1カ月で半数が依存性に
(西伊豆健育会病院病院長 仲田 和正)
2017年07月04日:メディカル・トリビューン
 N Engl J Med (2017; 376: 1147-1157)に「ベンゾジアゼピン (BZD) 依存症の治療」の総説がありました。著者はドイツ・Ludwig Maximilian University精神科のMichael Soyka氏です。 最重要点は下記7点です。

1.BZDは1カ月以上の使用で半数が依存性に。半減期が短いほど依存性は高い。
2.使用禁止は重症筋無力症、小脳・脊髄失調、睡眠時無呼吸、慢性肺疾患、狭隅角緑内障。
3.離脱症状は痙攣が極めて一般的、聴覚過敏・羞明はBZD離脱に特異的。
4.離脱症状は短時間作用性BZDが2~3日、長時間作用性が5~10日で発現。
5.BZD減量は4~8週かけ毎週5割or 2週ごと10~25%減らせ。
6.数種のBZDはジアゼパム1種にまとめよ。
7.不眠に睡眠制限、大食い避け、定時就寝、昼寝避け、寝室静かに、TV・電灯避けよ。


 以前、米国で家庭医として開業されている日本人の先生とお話しして大変驚いたことがあります。その先生のいらっしゃる州では、そもそも外来でBZDを処方できないというのです。BZDは多彩な副作用があることから州法で安易な処方が禁止されているのです。
 ですから、その先生は外来では眠剤としては、嗜癖性のないラメルテオン(商品名ロゼレム、 メラトニン受容体アゴニスト) か、トラゾドン(デジレル、抗うつ薬)を使用するのですが、デジレルの方が安価なのでもっぱらデジレルを処方しているというのです。

 この総説によるとBZDは2~4週の短期間の使用なら比較的安全ですが、それ以上では安全性は保障されず1カ月以上の使用で実に半数に依存性が見られるとのことです。わずか1カ月の処方で半数に依存性が生じるということに驚きです。
 この総説によると、基本的に全てのBZDは抗不安作用、催眠作用、筋弛緩作用、抗痙攣作用、健忘作用があります。BZDは薬理学的に抗不安作用と催眠作用をクリアカットに分けられないのです。そして副作用としては傾眠、無気力、疲労感、過鎮静、昏迷、翌日までの持ち越し、集中力低下、依存性、筋弛緩、失調、中止による不眠、運転障害、交通事故、転倒骨折があります。

1.BZDは半減期が短いほど依存性高い!
 世界で最初に使われたBZDは1960年のクロルジアゼポキシド (商品名コントール、バランス)だそうです。1961年、クロルジアゼポキシドをプラセボに突然変更したところ痙攣、せん妄、精神症(psychosis)を起こし、BZDに離脱症状があることが分かったのです。
 BZDはGABA type A受容体(GABAA)に作用します。BZDの作用時間に長短があるのは、BZDの代謝の難易によります。意外だったのは半減期が短いほど依存性が高いというのです。短時間作用性BZD(トリアゾラムなど)は典型的には催眠に使われ、長時間作用性BZD(ジアゼパム、クロナゼパム)は抗不安作用や抗痙攣に使います。しかし、クリアカットに作用を分けることはできません。

2.使用禁止は重症筋無力症、小脳・脊髄失調、睡眠時無呼吸、慢性肺疾患、狭隅角緑内障。
 BZDを投与すべきでないのは重症筋無力症、小脳失調、脊髄失調、睡眠時無呼吸、慢性呼吸器疾患、狭隅角緑内障、中枢神経抑制される中毒などです。老人の不眠、興奮(agitation)、せん妄(delirium)に使うべきでなく、使うとしても短期間にとどめよとのことです。特に高用量では記憶障害を起こします。BZD長期間投与と脳萎縮、認知症との関係は議論が多い(controversial)そうです。
 中脳の腹側被蓋野と側坐核付近でドパミン放出を起こす薬剤は一般に嗜癖性があります。たばこは側坐核でドパミンを放出し、ニコチン依存症治療薬チャンピックスはこのドパミン放出を減らすのです。なおブータンではたばこは麻薬と同様の国禁の扱いになりました。BZDはGABAAを仲介して腹側被蓋野でドパミンニューロンを活性化します。

3.離脱症状は痙攣が極めて一般的、聴覚過敏、羞明は離脱に特異的
4.離脱症状は短時間作用性BZDが2~3日、長時間作用性が5~10日で発現。
 離脱症候群は特に短時間作用性BZDでは2~3日以内に出現します。超短時間作用性BZDにはハルシオン(商品名、以下同)、短時間作用性BZDにはデパス、リーゼ、コレミナール、レンドルミン、ロラメット、エバミール、リスミーなどがあります。
 長時間作用性BZD(商品名セルシン、セパゾン、エリスパン、コントール、バランス、セレナール、レスミット、メレックス、メイラックス、レスタス、ドラール、ダルメート、ソメリンなど)の場合、離脱症候群は5~10日で発現します。脳の過活動性(hyperexcitability)によります。痙攣は極めて一般的で特に突然のBZD中断で起こります。聴覚過敏(hyperacusis)、羞明(photophobia)はBZD離脱に特徴的なのだそうです。
 離脱症状で最も多い症状は筋緊張、脱力、痙攣、疼痛、発汗、戦慄、針を刺すような痛み、不安、パニック、不穏、興奮、抑うつ、震え、不眠、悪夢、食欲低下、頻脈、口腔乾燥、blurred vision、耳鳴り、傾眠、現実感消失などです。

5.BZD減量は4~8週かけ毎週5割or 2週ごと10~25%減らせ。
6.数種のBZDはジアゼパム1種にまとめよ。
 BZDの減量は4週から8週かけて行い、数カ月かけない方がよいそうです。減量スピードは毎週50%減らしていくか、あるいは2週ごとに10~25%減らします。また数種類のBZDを内服している場合はジアゼパム(商品名セルシン)1種にまとめた方がよいとのことです。

7.不眠に睡眠制限、大食い避け、定時就寝、昼寝避け、寝室静かに、TV・電灯避けよ。
 不眠に対する一般療法としては睡眠制限(決まった睡眠時間枠で眠る)、睡眠前の大食いを避ける、決まった時間に就寝、昼寝を避け、寝室を静かにしテレビやライトを避けます。
 BZD離脱中の「うつ」に対しては抗うつ薬、安定薬としてはカルバマゼピン (商品名テグレトール)やBZD以外の抗不安薬、例えばプレガバリン(リリカ)、ガバペンチン(ガバペン)、BZD以外の眠剤などを使用します。
 不眠に対してはトラゾドン(レスリン、デジレル)や抗ヒスタミン薬のジフェンヒドラミン(レスタミンコーワ)、ヒドロキシジン(アタラックス)、プロメタジン(ピレチア、ヒベルナ)などを使用します。

 意外だったのは、BZD離脱時、BZD拮抗薬のフルマゼニル(アネキセート)点滴のエビデンスも少ないのだそうで、アネキセート使用は痙攣、psychosisを起こす危険があるとか。なお全例にBZD減量は考えない方がよいそうです。
 プライマリケアではBZD使用についての簡単なパンフレットを配るだけでも効果があるそうです。認知行動療法(CBT;cognitive behavioral therapy)はBZD依存治療に最も使われているそうです。CBTには社会適性(social competence)訓練、リラクゼーション法、不安克服訓練などがあります。3カ月間でのBZD減量+CBTは有用とのことです。