発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

「8時間睡眠のウソ」(川端裕人/三島和夫 共著)

2016-09-25 15:26:16 | 
日経BP社、2014年発行。
川端裕人、三島和夫共著。



文筆家(小説家?)の川端裕人氏が、三島和夫Dr.(国立精神・神経医療研究センター部長)を取材してまとめた本です。
睡眠・不眠症に関する最先端の知識がわかりやすく紹介されています。
知らなかった情報が次々と出てきて、勉強になりました。

まず、「体内時計25時間説はウソだった」というもの。
最新の研究によると、事実は24時間10分位であり、民族による差はほとんどないそうです。

それから「“8時間睡眠が理想”もウソ」
これを信じているために「自分は十分に眠れていない」と悩む人を作ってしまっている事実。

8時間がっつり眠ることができるのは15歳くらいまでで、70歳を過ぎると必要睡眠時間は6時間を下回る。
これは体重あたりのエネルギー消費量が減る(赤ちゃんの1/3!)ので眠ることで消費エネルギーを節約する必要性が減るため。
高齢者は若者と比べると、寝つきはあまり変わらないが、深い睡眠がまず減り、中途覚醒の回数が増え、そして朝の目覚めが早くなる(私自身がこの通りです)。

日本人は世界の平均からすると「眠らない国民」(なんとなく頷けますね)。
いや、社会構造の変化から夜も明るい社会になり「眠れない国民」になってしまった。
日本人の5人に1人が睡眠に問題を抱えている。

現代日本における子どもの睡眠事情も紹介されています。
母親が働いていると子どもの睡眠時間が短くなるという悲しいデータが存在し、寝不足の子どもたちは無理に起きている結果として非常にいらだちが強くなる子がいて、それで見かけ上ADHDや学習障害みたいな状態になる事がある、とも。

「眠れなくても寝床に横になっていればいつかは寝付くし、体も休まる」というのも間違い。
不眠症の人は「寝室恐怖症」に陥っている場合が多く、眠くなるまで別の部屋で過ごすべきである。
ただ、その項で「どうしても眠れなければ、その日は朝まで寝なくていい」とまでいうのは、ちょっと行き過ぎではないかと思うんですが・・・。

等々。

私自身、40歳を過ぎる頃から「不眠症」という言葉がちらつくようになりました。
仕事のストレスがメインだと思っていました(夜間もよく呼び出されるので寝た気がしないうちに朝になる)が、年齢的なものもあるのかな、異常というほどでもないグレーゾーンかな、などとこの本を読んで自分自身のことを振り返りました(^^)。

<メモ・備忘録>

・一般的に睡眠時間が7時間台の人が一番長生きする。

・寝不足・寝過ぎは太る?
→ 睡眠時間が短い人ほど食欲を増すホルモンの分泌が増えると同時に、食欲を抑えるホルモンも低下する。しかし、睡眠時間が長い人も太りやすいというデータがある(なぜかは現時点で不明)。

・睡眠は記憶の固定に積極的な役割を果たす。
 ・・・私は朝早起きしていろいろ作業をする習慣があるのですが、夜した方が記憶に残りやすいということらしい。う〜ん、夜は疲れていて頭も体も使い物にならないんだけど、どうしたものか・・・(^^;)。

・寝付けないときの対処法
→ 自然の眠気が出てくるまで夜更かしをするか、もしくは、寝付きやすい時間を希望の時刻まで早めるために、光などを使って調節するかのどちらか。

・チェルノブイリ原発事故やスペースシャトルチャレンジャー号の事故といったヒューマンエラーの部分は、それぞれシフトワークや睡眠不足に起因していた。

・10カ国の睡眠時間を比較した報告によると、日本の有職者の睡眠時間は、女性で特に短く7時間33分、フランスの8時間38分にくらべて1時間も短い。
 日本以外の9カ国では、男性より女性の方がよく眠っており、日本だけ女性の法が睡眠時間が短い。

・母親の勤務時間が長くなれば長くなるほど、子どもの睡眠時間に影響が出る。母親の就業時間が増えるにつれ、午後10寺以降に眠る子どもの割合が階段状に伸びている。

★ 午後10寺以降に就寝する幼児の割合;
       (1980年)→ (2000年)
 1歳6ヶ月児:  25%     55%
 2歳児:     29%     59%
 3歳児:     22%     52%
 4歳児:     13%     39%
 5-6歳児:    10%     52%

・人間のマスタークロック(親時計)は脳の視交叉上核という部分にある。
 ここで自律的、永続的に時計遺伝子の周期をリズミカルに発現している。

・午前中の光は体内時計を朝型に、つまり時刻を早める(早寝早起きにする)効果があって、夕方から深夜の光は逆に夜型にする。
 午前中にできるだけ太陽光を浴び、体内時計をリセットすることが大切。屋内の仕事では、昼間なのに室内照明の暗い光しか浴びないことになり、睡眠リズムの調整がうまくいかなくなりがち。
 現代生活の生活光の変化が、寝つきが悪いとか、昼間に眠いとか、睡眠習慣が現代社会に追いつかなくて、問題を抱えている人がどんどん増えて来た一因。

★ 光の強さ・・・晴天時の屋外:十数万ルクス、屋内(家庭照明)300〜600ルクス、夜の明るいコンビニ:1500ルクス、夜のパソコン作業:1000ルクス
→ 家庭照明に相当する数百ルクスでも長時間当たれば体内時計に影響が出ることが判明している。

・「体内時計25時間」という誤解
 1960年代の洞窟内での実験では人工照明の影響が計算に入っていなかった。夕方から深夜に相当する時間帯に人工照明の光に当たってリズムが後方にずれる効果が増幅されて、周期が25時間くらいに見えていた、というのが事実。

・睡眠相:ノンレム睡眠とレム睡眠と
(ノンレム睡眠)大脳皮質を休めて冷却する睡眠で、霊長類などの高等動物で発達した。
(レム睡眠)より古くからある睡眠で体の休息、エネルギーの節約が主な目的。

・「金縛り」はレム睡眠状態
 レム睡眠の時、頭は結構活発で夢を見やすい。しかし、夢の通りに動いたら大変なので、首から下が動かないようにスイッチがオフになっている。

・3時間睡眠で有名なナポレオンは昼寝の名人だった。

・不眠症状=不眠症ではない。昼間の生活が問題なくできれば深刻に考える必要はない。
 脳波上、正常な睡眠構造を持っていても、不眠を訴える人たちがいる。「眠れない」と訴える人は成人の40%いるが、その中で治療が必要な人は6〜8%にすぎない。
 基礎疾患(うつ病や疼痛性疾患等)のない不眠症を「原発性不眠症」と呼ぶが、「原発性不眠症=不眠恐怖症」である。

・長く眠りすぎると抑うつを誘導、断眠(徹夜)は気分を持ち上げる効果がある。
 うつ病の人が不眠気味になるのは、自己治癒的に断眠を自ら生じさせ、抑うつ気分を晴らそうとしているのだ、という説もある。

・シエスタ・昼寝は30分以内にすべし。
 それより長い人は認知症のリスクが高くなる。

・「眠れなければ、絶対ベッドにいてはダメ」
 10分経っても眠れなかったら、ベッドから出るだけではなくて、寝室から必ず出る必要がある。
 出来上がってしまった「寝室=眠れない場所」という条件反射を緩和するためにも、眠くならなければベッド・寝室から出るようにすることが効果的。

・不眠症の認知行動療法
1.眠くなったときだけ寝床に就く。
2.寝床は眠りと性生活のためだけに。他のことを一切やらない。
3.眠気がなければ一旦寝床を離れる。
4.眠れそうになるまで寝床に戻らない。
5.10分経っても入眠できなかったら他の部屋に移る。
6.それでも眠れない時は何度でも上記を繰り返す。
7.平日も休日も必ず毎日同じ時刻に起床する。
8.日中は眠くなっても昼寝をしない。

・乳児の睡眠は多相性
 赤ちゃんの時は1、2時間おきに寝たり起きたりしながら20時間も眠っている。だいたい2歳くらいになってくると、昼寝も1回くらいにまとまってくる。就学前になると、その昼寝のニーズも少なくなっていく。
 幼児期・未就学児にとって昼寝をするのは、赤ちゃん的な「分散型」の睡眠から大人の睡眠に移行する過程。
 
・小中学生の睡眠時間(平成22年、27000人の調査):小学校低学年で9時間、中学生になると8時間を割ってきて7.4時間。
 不思議なことに、中学生になって昼寝の時間が増えている(授業中に眠っている!)。一生の間で10代後半から30台はじめの頃が、一番夜型になりやすく、寝つきが悪くなる傾向がある。一番まずいのは、部活で汗も流さずに、夜に家庭照明をずっと浴び続けたとき。

・試験勉強の徹夜は記憶という視点からはダメ。
 長時間勉強しても、睡眠時間が短くなると、記憶した内容が頭の中でコンソリデート(定着)されていくのに悪影響がある。徐波睡眠(深い睡眠)もレム睡眠もそれぞれ、記憶したものを海馬(記憶を司るとされる脳の部位)に刷り込むのに役立っているので、キチンと長期的記憶を保持しようと思うなら、覚えた直後に睡眠を取らなきゃいけない。
 試験前に詰め込み勉強をして徹夜するのはいけない。単に眠気の問題ではなく、記憶した内容の想起力が低下したり、計算の正確さが落ちたりする。

・高齢者の睡眠(中途覚醒・早朝覚醒)と処方箋
 高齢者は寝つきは悪くないが、眠りが続かず、中途覚醒・早朝覚醒してしまう。正味、必要な睡眠時間も若い頃に比べると少なくなっている。でも、体は疲れるので早く横になりたい。それで早く寝ると結局、深夜のうちに目覚めて、なが〜い夜を過ごすことになる。
 対策は若年者とは真逆と考えるべし。
 朝は外光をブロックして室内でおとなしく過ごす。朝日を浴びての散歩は早期覚醒を助長する。夜間には強い光を1時間ほど浴びるとよい。

・認知症患者の睡眠問題
 高齢になってくると、睡眠も幼児の頃のようにやや多相性になってくる。認知症でも必要な睡眠時間はほかの高齢者と変わらない。昼寝れば夜起きるのは当然で、その時に睡眠薬を使っても、もともと睡眠がばらついているだけで不眠ではないから効きが悪い。もし昼夜逆転に悩んでいるようだったら、昼間は深寝をさせないように、うとうとしてたら声をかけて起こすというようなことを、デイケアでも自宅でも、手間がかかるけどやっていくしかない。
 認知症患者の睡眠問題が悪化していくことが、デイケアではないフルタイムの介護施設入所に至る原因の最大のファクターになる。

・健やかな睡眠のための12の習慣
1.睡眠時間は人それぞれ。日中の眠気で困らなければ十分と考える。
2.刺激物は避け、寝塗る前には自分なりのリラックス法を。
 カフェインの効果は4時間以上持続する。カフェインはコーヒーだけではなくお茶にも入っている(玉露はコーヒーの3倍)。
3.床に就くのは眠くなってから。入眠する時間にこだわらない。
4.同じ時刻に毎日起床。
 寝不足は蓄積するが、寝だめはできない。
5.光を利用。目覚めたら日光を入れ、夜の照明は控えめに。
6.規則正しい三度の食事、規則的な運動習慣。
7.昼寝をするなら、午後3児までの20〜30分。長い昼寝はかえってぼんやりのもと。
8.眠りが浅いときは睡眠時間を減らし、遅寝・早起きにしてみる。
 早寝・早起き・朝ご飯・・・早起きからはじめるべし。
9.激しいイビキ、呼吸停止(睡眠時無呼吸症候群)、足のピクつき(周期性四肢運動障害)やムズムズ感(レストレスレッグス症候群)などは要注意
10.十分眠っても日中の眠気が強いときは専門家に相談
11.睡眠薬代わりの寝酒は不眠の元
 晩酌と寝酒は区別し、最低、眠るまでに4時間のインターバルが必要。お酒は睡眠に関しては「百害あって一利なし」。
12.睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全


<参考>
□ 「宇宙医学に学ぶ快眠の秘密」(JAXA)
□ 「健康づくりのための睡眠指針2014」(厚生労働省健康局)
□ 「睡眠・覚醒リズム表」(日本うつ病学会)
□ 「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン ー出口を見据えた不眠医療マニュアルー」(厚生労働科学研究班、2013年)

「拡散テンソル画像」を用いた双極性障害とうつ病の鑑別診断への試み

2016-09-15 15:13:22 | 
 うつ相から始まる双極性障害は、しばしばうつ病と誤診されます。
 しかし、二つの病気は効く薬が異なるので、以前から初期に鑑別する方法がないか模索されてきました。
 光トポグラフィーもその一つですね。

 紹介する記事は、奈良県立医大による「拡散テンソル画像」という手法を用いた検討です。
 実用化するのでしょうか?

■ 双極性障害とうつ病の鑑別診断への試み:奈良県立医大
2016/09/15:ケアネット
 躁状態歴が明確にわからない患者では、双極性障害とうつ病を区別することが困難である。鑑別診断のために、客観的なバイオマーカーが必要とされている。奈良県立医科大学の松岡 究氏らは、拡散テンソル画像を用いて、双極性障害患者とうつ病患者の脳白質の微細構造の違いを検討した。The Journal of clinical psychiatry誌オンライン版2016年8月30日号の報告。
 対象は、DSM-IV-TR基準に基づき抑うつまたは躁うつ寛解状態の双極性障害患者16例、大うつ病患者23例および健常対照者23例。双極性障害とうつ病患者における異方性比率の有意差を検出するために、全脳ボクセルベース・モルフォメトリー解析を用いた。本研究は、2011年8月~2015年7月に実施された。
 主な結果は以下のとおり。

双極性障害患者では、うつ病患者と比較し、脳梁前部の異方性比率値の有意な減少が認められ(p<0.001)、これは患者の感情状態に依存しなかった。
・この減少は、放射拡散係数値の増加と関連が認められた(p<0.05)。また、健常対象者と比較した場合も有意な減少が認められた(p<0.05)。
・異方性比率値を用いて双極性障害とうつ病のすべての患者を予測したところ、正確な分類率は76.9%であった。

 著者らは「抑うつまたは躁うつ寛解状態の双極性障害患者は、脳梁における微細構造の異常が明らかであり、これは大脳半球間の感情的な情報交換を悪化させ、感情調節不全を来すと考えられる。そして、分類診断ツールとして、拡散テンソル画像使用の可能性が示唆された」としている。

双極性障害患者の自動車運転は危険ではない。

2016-09-14 07:46:16 | 
 先日、私自身も自動車運転免許証の更新を行いました。
 その際、「運転中に意識を失う可能性のある病気がありますか?」という質問がありました。

 確かにてんかん発作などで意識を失うと交通事故に繋がります。
 しかしそのような症状がない精神・神経疾患一般にも、残念ながら偏見の目が向けられがち。
 こういう情報を地道に発信して、不要な偏見が減ることを望みます。

■ 双極性障害患者の運転は危険なのか 〜社会復帰準備段階の患者で検討
2016.09.09:Mediacl Tribune
 双極性障害の患者には継続した薬物療法が必須となるが、気分安定薬や抗精神病薬の多くは添付文書で自動車運転に関する注意喚起がなされている。なお、気分安定薬と交通事故との関係や、双極性障害と交通事故との関係は明確でないといった指摘もある。そこで、名古屋大学大学院精神医学分野の宮田明美氏らは、双極性障害患者の運転技能に関する予備的検討として健常人と比較した運転シミュレータの検討結果から、社会復帰準備期にある双極性障害患者の運転技能は健常人との間で統計学的に有意な差がないことを、第13回日本うつ病学会総会(8月5~6日、会長=名古屋大学大学院精神医学/精神生物学主任教授・尾崎紀夫氏)で報告した。

◇ 車間距離、横揺れ、ブレーキ反応時間は健常人との有意差はなし
 予備的検討の対象は、運転免許を持ち、社会復帰準備期にある、病状が安定した双極性障害患者21例(男性17例、女性4例、平均年齢40.1±10.1歳、双極性障害Ⅰ型3例、同Ⅱ型18例)と年齢・性をマッチさせた健常人同数例。運転シミュレータを用いた運転技能と、症状評価(ヤング躁病評価尺度、ハミルトンうつ病評価尺度、ベック抑うつ質問票-Ⅱ、自記式社会適応度評価尺度、スタンフォード眠気尺度)、認知機能〔Continuous Performance Test(CPT)、Wisconsin Card Sorting Test(WCST)、Trail Marking Test〕との関係を検討した。
 臨床背景について見ると、双極性障害患者群では気分安定薬処方率は66%、ベンゾジアゼピン系薬併用率は57%、抗精神病薬併用率は52%、抗うつ薬併用率は33%であった。
 健常人群との比較では、運転歴は双極性障害群の週当たりの運転頻度は平均2回で健常人群の7回に比べて有意に低く、走行距離も有意に短かった。症状評価で有意差が認められた項目はベック抑うつ質問票-Ⅱ、自記式社会適応度評価尺度、認知機能では持続的注意を評価するCPTで、認知課題で遂行機能を評価するWCSTは低下傾向にあった。
 運転シミュレータによる車間距離の変動を計測する追従走行課題、車体の横揺れの度合いを計測する車線維持課題、ブレーキ反応時間を測定する飛び出し課題について評価し比較した結果、いずれの運転技能も双極性障害患者群と健常人群との間で統計学的有意差はなかった。

◇ 運転技能と認知機能や処方薬との明確な関連は認められず
 また、双極性障害患者群において運転技能と症状評価について項目ごとに関係を検討したが、運転歴や症状、認知機能のいずれの指標も有意な関連が認められなかった。
 以上から、宮田氏は「認知機能では注意や遂行機能が健常人よりも低下傾向にありながらも病状が安定している双極性障害患者を対象とした予備的検討からは、運転シミュレータによる運転技能は健常人とは有意な差がないこと、運転技能は認知機能と有意な関連が認められないこと、さらに処方薬と運転技能との明確な関連が認められなかった」と述べた。


統合失調症は進化の過程でどう生まれたのか?

2016-09-08 07:41:00 | 
 治療を怠ると、進行性で人格が破壊されるという統合失調症。
 人類にとってマイナス面だけの病気なら、その遺伝子は淘汰されてなくなるはず・・・ でも、歴史に名を残す偉人達の中にもこの病気に罹患していたと想定される例も多数あります。
 進化の過程で排除されない理由があるはずです;

■ 統合失調症は進化の過程でどう生まれたのか
(2016/09/08:ケアネット)
 なぜ統合失調症は、適応能力に対し負の影響を有しているにもかかわらず、人類の歴史を通じて淘汰されずにいるのかは、進化の謎のままである。統合失調症は、人間の脳の複雑な進化における副産物であり、言語や創造的思考、認知能力の融合物と考えられる。ノルウェー・オスロ大学のSaurabh Srinivasan氏らは、統合失調症に関する大規模ゲノムワイド研究などを分析した。Biological psychiatry誌2016年8月15日号の報告。
 著者らは、遺伝子構造や遺伝的変異に関する補助的な情報を利用した統計的フレームワークを使用して、最近の統合失調症の大規模ゲノムワイド関連研究とその他ヒト表現型(人体計測、心血管疾患の危険因子、免疫介在性疾患)の範囲を分析した。ネアンデルタール選択的一掃(NSS:Neanderthal Selective Sweep)スコアと呼ばれる進化の代理指標からの情報を使用した。
 主な結果は以下のとおり。

・統合失調症と関連する遺伝子座は、最近のヒトにおけるポジティブ選択(低NSSスコア)を受けた可能性の高いゲノム領域において有意に広く存在していた(p=7.30x10-9)。
・低NSSスコアの脳関連遺伝子内の変異体は、他の脳関連遺伝子における変異体よりも、有意に高い感受性を示した。
・エンリッチメントは、統合失調症において最も強かったが、他の表現型でのエンリッチメントを排除することはできなかった。
・27候補の統合失調症感受性遺伝子座への進化プロキシポイントの偽発見率条件のうち、統合失調症および他の精神疾患に関連または脳の発達にリンクしたのは12件であった。


ん?
これだけではどう捉えていいのかピンときませんね。
誰かに解説して欲しい・・・。

私なりに解釈すれば、大脳活動が複雑化する進化の過程で、必然的に発生した副産物・融合物というところでしょうか。
確かに、真面目でよい人ほど精神疾患に罹りやすいと聞いたことがあります。
悲しい事実ですね。

<関連記事>(要登録)
■ 統合失調症の発症に、大きく関与する遺伝子変異を特定(2013/04/03:ケアネット
■ 統合失調症患者の脳ゲノムを解析:新潟大学(2015/08/03:ケアネット
■ 統合失調症の病因に関連する新たな候補遺伝子を示唆:名古屋大学(2014/06/17:ケアネット
■ グルタミン酸トランスポーター遺伝子と統合失調症・双極性障害の関係(2013/03/21:ケアネット