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発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

特集「双極性障害の薬物療法」(臨床精神薬理)

2016-07-14 06:12:01 | 
医学雑誌「臨床精神薬理 Vol.19, No.6 Jun. 2016
星和書店発行

 双極性障害の薬物療法についての私の知識は、

・気分安定薬リチウム(リーマス®)が基本処方
・躁状態には非定型抗精神病薬であるオランザピン(ジプレキサ®)
・うつ状態には抗うつ薬は無効であり、あえて使用するとすればラモトリギン(ラミクタール®)
・ジプレキサ®は肥満/脂質代謝異常に、ラミクタール®は薬疹に注意

 程度です。
 最新の医学雑誌に件名の特集を見つけたので購入して読んでみました。
 内容は、2015年10月に開催された第25回日本臨床精神神経薬理学会のシンポジウムをまとめたもの。
 ・・・が、残念ながらあまり新しい知見は見つけられませんでした。専門家も苦労しながら治療に当たっているようです。


<メモ>

■ 「特集にあたって」(井上猛、東京医科大学)
・双極性障害の薬物療法は急性期のみならず維持・予防療法を視野に入れる必要があるために、薬物選択が難しい。
・2000年までは双極性障害の研究は非常に少なかったが、2000年以降飛躍的に研究が進み、次々に双極性障害の症候学、経過、治療法の常識が書き換えられてきた。

■ 「双極性障害の早期治療」(田中輝明、釧路総合病院)
・双極性障害は再発を繰り返す精神疾患であり、再発とともにさまざまな機能障害が進行する。また、再発とともに気分エピソードの間隔が短縮化され、ささいなストレスでも再発しやすくなる。
・従来の双極性障害の治療GLにおいては、病期分類の視点が欠如しており、初発や再発、難治例といったタイプ別の治療アプローチ十分に取り組まれてこなかった。
・近年、背景に“neuroprogression”と呼ばれる中枢神経系における進行性の変化が関与していると考えられるようになった。再発に伴う認知機能障害や心理社会機能の悪化、lithiumや認知行動療法に対する治療反応性の低下もこの結果と考えることができる。
・気分安定薬(lithiumやvalproate)および一部の非定型抗精神病薬(aripiprazole, olanzapine, quetiapine)はneuropregressionを抑制する可能性がある。

・双極性障害の発症年齢は20歳前後と若く、3/4は12-30歳の間に最初の気分エピソードを呈する。
・早期からのlithium投与が治療反応性を高めるが、長期使用による副作用に注意すべし。慢性腎障害、甲状腺機能低下、高カルシウム血症のリスクが高まる。
・治療ガイドラインにおいて第一選択薬に位置づけられる非定型抗精神病薬も長期使用により遅発性の錐体外路症状や糖脂質代謝異常の発生が懸念される。

■ 「混合状態に対する薬物療法の選択肢」(武島稔、Jクリニック)
・急性期:olanzapine(OLZ)が第一選択、aripiprazole(ARP), perospirone, quetiapine(QTP), これらと valproic acidやlithium(Li)の併用も選択肢になる。
 混合性躁病の躁状態に対する改善効果は薬剤間で純粋躁病と大差ないが、うつ状態への効果は薬剤間で差がある。躁症状が重度の場合は、非定型抗精神病薬(atypical antipsychotics, AAP)と気分安定薬(mood atabilizers, MS)の併用を考慮する。
 AAPの投与量は、統合失調症や躁病エピソードに比べてかなり少ない。AAPは妊孕性不良のために継続困難な例も多く、LTGはその場合抗うつ作用を担保する役割も持つ。LTGのみでは気分が不安定な例、躁病優位の病歴や発揚気質を持つ例、自殺リスクが高い例ではLi(うつ病相には適応外)併用を考慮する。
・維持期:lamotrigineやlithium(Li)を考慮
 RCTは存在しない。自殺予防効果を期待してのLi、うつ病相予防の効果が確立し、薬疹以外は妊孕性が高いlamotrigineも考慮に値する。

 筆者外来の双極性障害の混合性うつ病に対する薬物療法データ;
・開始治療の28%がAAP単独、72%がAAP+MS、AAPの67%がOLZ、MSの69%はLTG
・採集観察時点では、AAP単独の割合は減り、MS単独ないしAAP+MSが78%。主として忍容性不良のために、AAPの中でOLZの占める割合は減少している
・90日後の累積寛解率は、双極性障害では77.8%

■ 「双極性うつ病(双極性障害の大うつ病エピソード)の薬物療法」(秦野浩司、大分大学)
・双極性うつ病(双極性障害の大うつ病エピソード)は最も治療が難しい気分エピソードである。
・治療GLで推奨される薬物療法は、QTP、Li、OLZ、LTGによる単剤治療と、気分安定薬であるLi、LTGの併用療法である。ただし、OLZ以外は保険適用外。
 Liは効果発現までに6-8週間を要する。Liは有効濃度と中毒域が近い。
※ 本邦未発売であるが、olanzalineとSSRIであるfluoxetineの合剤(olanzapine/Fluoxetine Combination, OFC)という薬剤もある。
※ LTGの重篤な皮膚障害(SJS、TEN)は、投与開始量が推奨量よりも多い例、急速に増量を行った例、VPAとの併用例に多い。
・それらが無効の場合、抗うつ薬の追加投与も検討されるが、SNRI、三環系/四環系抗うつ薬など躁転リスクの高い薬剤の使用は避け、SSRIや mirtazapineなどを最低必要量、短期間の使用が推奨されるが、現状ではエビデンス不足である。

・双極性うつ病に対する薬物療法の最近のネットワーク・メタ解析;
短期的効果:OLZ>QTP>LTG>Li
長期的な双極性うつ病の再発予防効果:QTP>LTG>Li>OLZ
→ 急性期効果を優先すればOLA、長期的な再発を考慮すればQTP、メタボリックな副作用も考慮して総合的に判断すると、LTGやLiがOLZやQTPよりも劣っているとは言いがたい。

・双極性うつ病にはLTGを薬疹に注意しながら漸増していくと、徐々に抗うつ効果が発揮されることが多い。筆者の検討では有効血中濃度は5-11μg/mLである。
・LTG投与によりうつ状態が改善したものの、あと一歩で遷延している場合には、mirtazapine(リフレックス®)を7.5-15mg/日追加すると正常気分に回復することがある。数ヶ月安定していることを確認後中止することが望ましい。もう一つの選択薬はescitalopram(レクサプロ®ほか)の半錠(5mg)追加であり、中止時期は同様である。

将来のうつ病対策は“よく遊べ”

2016-04-01 06:15:13 | 
 現代の病理でしょうか。
 遊ばないからうつ病になりやすいのか、うつ病になる人は遊ばない傾向があるのか、どちらが原因でどちらが結果かわかりませんが・・・。

■ 子供はよく遊ばせておいたほうがよい
ケアネット:2014/03/28
 小児および思春期の身体活動パターンと将来のうつ病との関連はほとんど知られていない。オーストラリア・Menzies Research Institute TasmaniaのCharlotte McKercher氏らは、小児期から成人期における余暇の身体活動パターンと青年期うつ病リスクとの関連についてナショナルサーベイ被験者を対象に検討した。その結果、小児期に不活発であった群に比べ、活動的であった群では青年期にうつ病を発症するリスクが少ないことを報告した。Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology誌オンライン版2014年3月14日号の掲載報告。
 ナショナルサーベイの9~15歳被験者(男性759 例、女性871例)を対象に、約20年後に再び聞き取り調査を行った。余暇の身体活動について、1985年のベースライン時と2004~2006年の追跡調査時に自己申告してもらい、また両時点の間隔をつなぐため、15歳から成人までの余暇の身体活動を、追跡調査時に後ろ向きに自己申告してもらった。
 身体活動を公衆衛生の観点から群別し、最も不利(持続的に不活発)なパターンを、より有利(活動性が増減および持続)なパターンと比較した。うつ病(大うつ病性障害または気分変調性障害)の評価は、統合国際診断面接(Composite International Diagnostic Interview ; CIDI)により行った。
 主な結果は以下のとおり

・結果は、小児期のうつ病発症例を除外し、社会人口統計学的因子および健康因子で補正を行った。
・その結果、活動性が増加傾向または持続していた男性は、持続的に不活発であった群と比べ、成人期にうつ病を発症するリスクがそれぞれ69%、65%少なかった(いずれもp<0.05)。
・後ろ向き解析において、活動性が持続していた女性は成人期にうつ病を発症するリスクが51%少なかった(p=0.01)。
・有意差はなかったものの、女性における余暇の身体活動と男性における過去の余暇活動に同様の傾向がみられた。
・前向きおよび後ろ向きの両検討結果から、小児期から日常的に自由に活動させておくことが、青年期にうつ病を発症するリスクを減少させることが示唆された。

急性双極性うつ病に対する非定型抗精神病薬の信頼性

2016-03-11 12:34:00 | 
 双極性障害の急性期症状に第2世代抗精神病薬(SGA)が有効かどうかを後向き研究(過去のデータを使用して解析する手法)した報告です。
 日本で認可されているSGAはジプレキサ®とセロクエル®が有名ですね。
 一般的に、SGAは躁状態には有効であるがうつ状態にはあまり効かない、という認識だと思われます。
 この論文では躁状態にもうつ状態にも有効であったと結論づけています。

■ 急性双極性うつ病に対する非定型抗精神病薬の信頼性は
ケアネット:2016/03/11
 双極性障害(BD)に関連する混合性の特徴を伴う急性うつ病の治療における第2世代抗精神病薬(SGA)の使用を支持するエビデンスは乏しく、不明確である。そのような中、米国・コロンビア大学のMichele Fornaro氏らは、混合特徴を伴う急性BDのうつ病治療に対するSGAを調査した研究のシステマティックレビューと予備メタ解析を行った。International journal of molecular sciences誌2016年2月号の報告。
 独立した2人の著者が、1990~2015年9月の期間で主要な電子データベースより、混合性の特徴を伴う急性双極性うつ病治療に対するSGAの有効性を調査した無作為化(プラセボ)対照比較試験(RCT)またはオープンラベル臨床試験の検索を行った。ランダム効果メタ解析により、SGAとプラセボ間のうつ症状および躁症状のスコアのベースラインからエンドポイントまでの変化に関する標準化平均差(SMD)、95%信頼区間(CI)を計算した。
 主な結果は以下のとおり。

・RCT 6報、オープンラベルプラセボ対照研究(事後レポートを含む)1報から1,023例の患者が抽出された。
・対象患者には、ziprasidone、オランザピン(ジプレキサ®)、lurasidone、クエチアピン(セロクエル®)、asenapineのいずれかが、平均6.5週間投与されていた。
・Duval and Tweedie調整により出版バイアスを加味したメタ解析では、SGAは、ヤング躁病評価尺度(YMRS)総スコアの平均値により評価されるように、混合性の双極性うつ病の躁(軽躁)症状の有意な改善をもたらした(SMD:-0.74、95%CI:-1.20~-0.28、SGA:907例、対照:652例)。
・メタ解析では、SGA治療患者(979例)は、プラセボ群(678例)と比較してモンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)スコアの大幅な改善が認められた(SMD:-1.08、95%CI:-1.35~-0.81、p<0.001)。

 著者らは「全体的に、SGAはプラセボと比較し、MADRSやYMRSスコアの良好な改善が認められた。しかし、本報告の予備的な性質を考えると、信頼性の向上や決定的な結論を導くために追加のオリジナル研究が必要とされる」とまとめている。

<原著論文>
Fornaro M, et al. Int J Mol Sci. 2016;17.

双極性障害に対する非定型抗精神病薬比較

2016-03-08 07:42:37 | 
 双極性障害の話題を続けます。

 コストという視点から非定型抗精神病薬を評価した報告を紹介します。
 国民皆保険の日本人にはピンときませんが、外国では効果があっても高価であれば採用されません。
 日本では花粉症に対する抗アレルギー薬がたくさん処方される時期ですね。これ、結構高いので、外国での評価は低いと耳にしたことがあります。

 この報告では、エビリファイ®の方が、ジプレキサ®よりコスト面で有利、と解析されています。

■ 双極性障害に対する非定型抗精神病薬比較
ケアネット:2014/09/22
 スペイン・Health Value社のCarlos Rubio-Terres氏らは、双極性障害の治療薬としてのアリピプラゾール(エビリファイ®)とオランザピン(ジプレキサ®)について、有害事象の側面から医療費比較の検討を行った。その結果、アリピプラゾールのほうが、有害事象に関連するコストが低いことを報告した。Actas Espanolas Psiquiatria誌2014年9月号(オンライン版2014年9月1日号)の掲載報告。

 検討は、Markovモデルを用い、「有害事象なし(NAE)」「錐体外路症状(EPS)」「体重増加(WG)」「性機能障害(SD)」を考慮に入れたコスト解析を実施した。
 双極性障害の病態変化の移行確率は、臨床試験のメタ解析およびスペインでのレトロスペクティブな研究から推定した。また、それぞれの病態に関連する医療費は、公表されているスペインの研究を参考にした。コスト比較には、病院薬局の効率性という観点から、1日平均用量における1mg当たりの最低取得コストを使用。解析適用の計画対象期間は12ヵ月とした。モンテカルロシミュレーションを用いて、解析に含まれるすべての変数に対し確率的感度分析を実施。なおSpanish Health System price indexを用い、2013年に更新されたコストを使用した。
 主な結果は以下のとおり。

・アリピプラゾールを用いた治療はオランザピンに比べ、患者1人当たりの年平均コストを289ユーロ(95%信頼区間[CI]:271~308ユーロ)削減した。
・アリピプラゾールによる性機能障害発現率が、クエチアピン(非定型経口抗精神病薬の中で最も低頻度)と同程度と仮定した場合、患者1人当たりの追加コストは323ユーロ(95%CI:317~330ユーロ)であった。
・アリピプラゾールによる治療はオランザピンと比較して有害事象に関連するコストが低かった。この差は双極性障害患者の治療において、スペインの医療システムに大きなコスト節減をもたらす可能性が示された。
・結果の頑健性は、確率論的解析により検証された。



双極性障害に対する非定型抗精神病薬の選択基準

2016-03-08 07:22:17 | 
 双極性障害の話題を続けます。

 テーマはとても知りたい内容なので取りあげましたが、専門用語がたくさん出てきてわかりづらい報告ですね(^^;)。
 用語を整理すると、
・NNT:治療必要数
・DAE:有害事象による治療中止
・NNH:DAEに関する有害必要数
 ・・・ウ~ン、整理しても今ひとつピンときません。参考にならなくて申し訳ない。

 薬剤は一般名(化学物質名)で記されていますので、製品名を書いておきます;
・オランザピン  = ジプレキサ®
・フルオキセチン = プロザック®
・クエチアピン  = セロクエル®
・ルラシドン   = ラツーダ®(国内未承認)
・ラモトリギン  = ラミクタール®
・アリピプラゾール = エビリファイ®
・ジプラシドン  = ジプシドン®(国内未承認)


■ 双極性障害への非定型抗精神病薬、選択基準は
ケアネット:2015/06/22
 米国ケース・ウェスタン・リザーブ大学のKeming Gao氏らは、双極性障害に対する各種非定型抗精神病薬の有効性と安全性について、治療必要数(NNT)または有害事象による治療中止(DAE)という観点でレビューを行った。その結果、FDAに承認されている薬剤においてNNTの差異は小さかったが、DAEに関する有害必要数(NNH)の差異は大きかったことを示した。結果を踏まえて、著者らは「非定型抗精神病薬の選択は安全性および忍容性に基づくべきである」と提言している。Neuroscience Bulletin誌オンライン版2015年5月30日号の掲載報告。
 検討は、1980年1月~2014年10月30日にMEDLINEに掲載された英語文献を、抗精神病薬、非定型抗精神病薬の後発医薬品名ならびに先発医薬品名、「双極性うつ/双極性障害」「プラセボ」「治験」をキーワードとして検索した。原著論文より、レスポンスの指標(モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度[MADRS]トータルスコアの改善率が50%以上)、寛解(エンドポイントにおけるMADRSトータルスコアが12点以下または8点以下)、DAE、眠気、7%以上の体重増加、錐体外路症状の副作用(EPS)、アカシジアを抽出した。レスポンス、寛解に対するNNTまたはDAEに対するNNH、あるいはプラセボに関連する他の副作用を予測し、予測値を95%信頼区間と共に算出した。
 主な結果は以下のとおり。

・レスポンスのNNTはオランザピン単独療法11~12、オランザピンとフルオキセチンの合剤(OFC)4、クエチアピン-IR単独療法7~8、クエチアピン-XR単独療法4、ルラシドン単独療法4~5、ルラシドン併用療法は7であり、プラセボに比べて優れていた。
・寛解のNNTはそれぞれ、11~12、4、5~11、7、6~7、6であり、プラセボに比べ優れていた。
・OFCとラモトリギン、アリピプラゾールまたはジプラシドンとプラセボとの間に、レスポンスと寛解に関する有意差は認められなかった。
・オランザピン単独療法、クエチアピン-IR、クエチアピン-XR、アリピプラゾール、ジプラシドン120~160mg/日は、DAEに関するNNHのリスクが有意に高く、それぞれ24、8~14、9、12、10であった。
・眠気に関しては、クエチアピン-XRのNNHが4と最小であった。
・7%以上の体重増加に関しては、オランザピン単独療法およびOFCのNNHがいずれも5と最小であった。
・アカシジアに関しては、アリピプラゾールのNNHが5と最小であった。
・これらの結果から、OFC、クエチアピン-IRと-XR、ルラシドン単独療法および精神安定剤へのルラシドン追加療法など、FDAに承認されている薬剤においてレスポンスおよび寛解に対するNNTの差異は小さいが、DAEや一般的な副作用に対するNNHの差異は大きいことが示された。