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発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

「拡散テンソル画像」を用いた双極性障害とうつ病の鑑別診断への試み

2016-09-15 15:13:22 | 
 うつ相から始まる双極性障害は、しばしばうつ病と誤診されます。
 しかし、二つの病気は効く薬が異なるので、以前から初期に鑑別する方法がないか模索されてきました。
 光トポグラフィーもその一つですね。

 紹介する記事は、奈良県立医大による「拡散テンソル画像」という手法を用いた検討です。
 実用化するのでしょうか?

■ 双極性障害とうつ病の鑑別診断への試み:奈良県立医大
2016/09/15:ケアネット
 躁状態歴が明確にわからない患者では、双極性障害とうつ病を区別することが困難である。鑑別診断のために、客観的なバイオマーカーが必要とされている。奈良県立医科大学の松岡 究氏らは、拡散テンソル画像を用いて、双極性障害患者とうつ病患者の脳白質の微細構造の違いを検討した。The Journal of clinical psychiatry誌オンライン版2016年8月30日号の報告。
 対象は、DSM-IV-TR基準に基づき抑うつまたは躁うつ寛解状態の双極性障害患者16例、大うつ病患者23例および健常対照者23例。双極性障害とうつ病患者における異方性比率の有意差を検出するために、全脳ボクセルベース・モルフォメトリー解析を用いた。本研究は、2011年8月~2015年7月に実施された。
 主な結果は以下のとおり。

双極性障害患者では、うつ病患者と比較し、脳梁前部の異方性比率値の有意な減少が認められ(p<0.001)、これは患者の感情状態に依存しなかった。
・この減少は、放射拡散係数値の増加と関連が認められた(p<0.05)。また、健常対象者と比較した場合も有意な減少が認められた(p<0.05)。
・異方性比率値を用いて双極性障害とうつ病のすべての患者を予測したところ、正確な分類率は76.9%であった。

 著者らは「抑うつまたは躁うつ寛解状態の双極性障害患者は、脳梁における微細構造の異常が明らかであり、これは大脳半球間の感情的な情報交換を悪化させ、感情調節不全を来すと考えられる。そして、分類診断ツールとして、拡散テンソル画像使用の可能性が示唆された」としている。
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双極性障害患者の自動車運転は危険ではない。

2016-09-14 07:46:16 | 
 先日、私自身も自動車運転免許証の更新を行いました。
 その際、「運転中に意識を失う可能性のある病気がありますか?」という質問がありました。

 確かにてんかん発作などで意識を失うと交通事故に繋がります。
 しかしそのような症状がない精神・神経疾患一般にも、残念ながら偏見の目が向けられがち。
 こういう情報を地道に発信して、不要な偏見が減ることを望みます。

■ 双極性障害患者の運転は危険なのか 〜社会復帰準備段階の患者で検討
2016.09.09:Mediacl Tribune
 双極性障害の患者には継続した薬物療法が必須となるが、気分安定薬や抗精神病薬の多くは添付文書で自動車運転に関する注意喚起がなされている。なお、気分安定薬と交通事故との関係や、双極性障害と交通事故との関係は明確でないといった指摘もある。そこで、名古屋大学大学院精神医学分野の宮田明美氏らは、双極性障害患者の運転技能に関する予備的検討として健常人と比較した運転シミュレータの検討結果から、社会復帰準備期にある双極性障害患者の運転技能は健常人との間で統計学的に有意な差がないことを、第13回日本うつ病学会総会(8月5~6日、会長=名古屋大学大学院精神医学/精神生物学主任教授・尾崎紀夫氏)で報告した。

◇ 車間距離、横揺れ、ブレーキ反応時間は健常人との有意差はなし
 予備的検討の対象は、運転免許を持ち、社会復帰準備期にある、病状が安定した双極性障害患者21例(男性17例、女性4例、平均年齢40.1±10.1歳、双極性障害Ⅰ型3例、同Ⅱ型18例)と年齢・性をマッチさせた健常人同数例。運転シミュレータを用いた運転技能と、症状評価(ヤング躁病評価尺度、ハミルトンうつ病評価尺度、ベック抑うつ質問票-Ⅱ、自記式社会適応度評価尺度、スタンフォード眠気尺度)、認知機能〔Continuous Performance Test(CPT)、Wisconsin Card Sorting Test(WCST)、Trail Marking Test〕との関係を検討した。
 臨床背景について見ると、双極性障害患者群では気分安定薬処方率は66%、ベンゾジアゼピン系薬併用率は57%、抗精神病薬併用率は52%、抗うつ薬併用率は33%であった。
 健常人群との比較では、運転歴は双極性障害群の週当たりの運転頻度は平均2回で健常人群の7回に比べて有意に低く、走行距離も有意に短かった。症状評価で有意差が認められた項目はベック抑うつ質問票-Ⅱ、自記式社会適応度評価尺度、認知機能では持続的注意を評価するCPTで、認知課題で遂行機能を評価するWCSTは低下傾向にあった。
 運転シミュレータによる車間距離の変動を計測する追従走行課題、車体の横揺れの度合いを計測する車線維持課題、ブレーキ反応時間を測定する飛び出し課題について評価し比較した結果、いずれの運転技能も双極性障害患者群と健常人群との間で統計学的有意差はなかった。

◇ 運転技能と認知機能や処方薬との明確な関連は認められず
 また、双極性障害患者群において運転技能と症状評価について項目ごとに関係を検討したが、運転歴や症状、認知機能のいずれの指標も有意な関連が認められなかった。
 以上から、宮田氏は「認知機能では注意や遂行機能が健常人よりも低下傾向にありながらも病状が安定している双極性障害患者を対象とした予備的検討からは、運転シミュレータによる運転技能は健常人とは有意な差がないこと、運転技能は認知機能と有意な関連が認められないこと、さらに処方薬と運転技能との明確な関連が認められなかった」と述べた。

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統合失調症は進化の過程でどう生まれたのか?

2016-09-08 07:41:00 | 
 治療を怠ると、進行性で人格が破壊されるという統合失調症。
 人類にとってマイナス面だけの病気なら、その遺伝子は淘汰されてなくなるはず・・・ でも、歴史に名を残す偉人達の中にもこの病気に罹患していたと想定される例も多数あります。
 進化の過程で排除されない理由があるはずです;

■ 統合失調症は進化の過程でどう生まれたのか
(2016/09/08:ケアネット)
 なぜ統合失調症は、適応能力に対し負の影響を有しているにもかかわらず、人類の歴史を通じて淘汰されずにいるのかは、進化の謎のままである。統合失調症は、人間の脳の複雑な進化における副産物であり、言語や創造的思考、認知能力の融合物と考えられる。ノルウェー・オスロ大学のSaurabh Srinivasan氏らは、統合失調症に関する大規模ゲノムワイド研究などを分析した。Biological psychiatry誌2016年8月15日号の報告。
 著者らは、遺伝子構造や遺伝的変異に関する補助的な情報を利用した統計的フレームワークを使用して、最近の統合失調症の大規模ゲノムワイド関連研究とその他ヒト表現型(人体計測、心血管疾患の危険因子、免疫介在性疾患)の範囲を分析した。ネアンデルタール選択的一掃(NSS:Neanderthal Selective Sweep)スコアと呼ばれる進化の代理指標からの情報を使用した。
 主な結果は以下のとおり。

・統合失調症と関連する遺伝子座は、最近のヒトにおけるポジティブ選択(低NSSスコア)を受けた可能性の高いゲノム領域において有意に広く存在していた(p=7.30x10-9)。
・低NSSスコアの脳関連遺伝子内の変異体は、他の脳関連遺伝子における変異体よりも、有意に高い感受性を示した。
・エンリッチメントは、統合失調症において最も強かったが、他の表現型でのエンリッチメントを排除することはできなかった。
・27候補の統合失調症感受性遺伝子座への進化プロキシポイントの偽発見率条件のうち、統合失調症および他の精神疾患に関連または脳の発達にリンクしたのは12件であった。


ん?
これだけではどう捉えていいのかピンときませんね。
誰かに解説して欲しい・・・。

私なりに解釈すれば、大脳活動が複雑化する進化の過程で、必然的に発生した副産物・融合物というところでしょうか。
確かに、真面目でよい人ほど精神疾患に罹りやすいと聞いたことがあります。
悲しい事実ですね。

<関連記事>(要登録)
■ 統合失調症の発症に、大きく関与する遺伝子変異を特定(2013/04/03:ケアネット
■ 統合失調症患者の脳ゲノムを解析:新潟大学(2015/08/03:ケアネット
■ 統合失調症の病因に関連する新たな候補遺伝子を示唆:名古屋大学(2014/06/17:ケアネット
■ グルタミン酸トランスポーター遺伝子と統合失調症・双極性障害の関係(2013/03/21:ケアネット
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「双極性障がい(躁うつ病)と共に生きる」(加藤 伸輔 著)

2016-07-31 06:29:43 | 
副題:病と上手に付き合い、幸せで楽しい人生を送るコツ
星和書店、2016年発行

著者は「双極性障がいⅡ型」の患者さんです。
最初に「あなたのうつは本当にうつ病が原因ですか?」という言葉で始まります。
一般にうつ病と双極性障がいの鑑別診断は難しいとされています。
著者も例に漏れず、はじめは「うつ病」と診断され、その後「統合失調症」として治療を受けるも改善と悪化を繰り返し、「双極性障がい」という診断名にたどり着くまでなんと13年も要しています。

第一章の著者の症状を具体的に記した所では、前出の「躁鬱(そううつ)なんです、私。」の症状を解説しているような錯覚に陥る内容で、ちょっと驚きました。

この本の特徴は第四章の「病気と付き合っていくコツ」でしょう。
著者が紆余曲折を経てたどり着いた気分コントロール法を提示しているのですが、それが具体的ですごくきめ細かい。
同じ病気で悩む患者さんの参考となる生活上のヒントが随所にちりばめられています。
今まで読んだ患者さんが書いた本は、その症状の激烈さやインパクトを目的とする印象がぬぐえませんでしたが、この本は一番詳しい「双極性障がいとのつきあい方マニュアル」だと思います。

精神科医との付き合い方についても言及しています。
言われた通り・処方された通りに薬を飲むのではなく、自分で調べて治療を提案し、医師と共に治療を組み立てていく姿勢が素晴らしい。
昨今、患者さんの治療を取り組む姿勢をアドヒアランスと呼ぶようになりましたが、まさにそれを実践している方です。
ただ、著者は双極性障がいの基礎薬とされているリチウムを自分の意思で使用していないことには少々驚かされました。

医師は「徹夜はダメ、アルコールもダメ」と簡単に言いますが、現実の生活はそう簡単にいきません。
厳格に制限して感情の波を押し殺したような生活・治療に疑問を呈する文言もみられ、医師側もこの言葉に耳を傾けるべきだと思いました。

それから、著者は双極性障がい患者の一人に過ぎず、その症状や薬の効き方は全ての患者さんに共通するものではないことを示すために、最終章では他の双極性障がいⅡ型の患者さんのインタビュー記事を掲載しています。


<メモ> ・・・気になった箇所の覚え書き

・双極性障がいⅡ型はⅠ型より躁症状が軽いタイプ。しかし、場合によってはⅠ型以上に社会的、経済的に苦しい立場に追い込まれてしまう可能性がある。

・双極性障がいⅡ型は確定診断を得るまで平均9.6年かかる。

・著者の躁症状の特徴;
 以下の症状が連鎖する。睡眠時間が短くなるにつれ注意散漫になる。急速に頭が回転してくると多弁になる。誇大妄想がひどくなる時が大きくなり浪費も激しくなる。そして全てが絡まり合って困った結果を生みだす。
誇大妄想」・・・誇大妄想というより自信に満ち溢れているという感覚。実際にあったことを何倍にも誇張して話すようになったり、やみくもに自分を正当化するようになる。誇大妄想は根拠のない自信から始まり、ふだんより妙に自信が湧いてきていると感じたら、躁状態へ向かっているサインと考えてよいかもしれない。
睡眠時間の減少」・・・眠れないというよりは寝る時間がもったいないという気持ちになってしまう。睡眠時間が短いにもかかわらず十分に眠った気になり、全身に力がみなぎる。
多弁」・・・話をするのが気持ちよくなり止まらなくなる。途切れなく話すので相手との会話が成り立たない。
急速な思考」・・・頭が冴え、次々と新しい考えが浮かんでくるような状態。はじめはつじつまが合っているが、躁状態がひどくなると話が飛躍して破綻をきたす。これの怖いところは浮かんだアイディアを実現させようとして行動に出てしまうことで、それが困った状況を生みだす。
注意力散漫」・・・しだいに何とかしなければならないという焦りだけが強くなり、何にも手がつけられなくなってしまう。完全にガス欠状態なのにひたすらアクセルを前回に踏み込んでしまっている感じ。最終的には、隣に座っている人の呼吸や視界に動くものが入るだけでイライラしてくる。
活動量の増加」・・・安定状態の時に比べて倍は活動している。逆にうつの時は自分でも驚くほど動くことができなくなる。その分を取り戻すために動いているという側面もある。しかし徐々に注意力散漫になってくるので結局何もかもが中途半端になってしまう。活動が度を過ぎると、体は疲れているのに脳がそれを察知できないので極度の疲労がたまってしまう。
 躁状態の時は、恐ろしいうつ状態が来ないうちにやれることをやってしまわなければならないという強迫観念があった。
食欲の減退」・・・一日一食でよくなり、そんな状態が続くので体重が著減する。
「苛立ち」・・・双極性障がいⅡ型ではイライラしたり不機嫌になる躁状態が多く、気分爽快ハイテンションが続くわけではない。躁状態とうつ状態、どちらになっても苛立つが、躁とうつでは苛立ちの向きが違う。躁状態の時は外へ、うつ状態の時は自分自身に向かうことが多い。
「浪費」・・・遊ぶためにお金を使うというよりも、お金を使うために遊ぶという感覚。

・著者のうつ症状の特徴;
抑うつ気分」・・・直接的な原因がなくても抑うつ気分がやってくる。一度抑うつ気分が始まるとなかなか抜け出せず、3ヶ月以上続くことがある。経験的に抑うつ気分は時間が経てば治まるとわかっているが、渦中にいる時は永遠に続くように思えてしまう。人生を振り返ると2/3以上がうつ状態だった。
 過眠や過食の原因は抑うつ気分を抜け出すための行動のような気がする。
興味・喜びの喪失」・・・興味がなくなり、感情がなくなり、表情がなくなる。うつ状態になると過食や過眠の症状があらわれるが、これは少しでも喜びや快感を得ようとするための行為なのかもしれない。
過眠」・・・安定しているときは6-7時間、うつ相で過眠状態に入ると10(〜12時間)。いつまで経っても眠さが続き、いくら眠っても疲労感は全く取れず、むしろ眠ることで余計に疲れてしまう。
 過眠になるのは躁状態の時に睡眠時間が少なくなった反動か。
 日照時間が短くなると睡眠時間は長くなる。秋の初め頃から冬至にかけて長くなり、そして毎年この時期にうつ状態がやってくる。
過食」・・・うつ病では食欲がなくなり食べることができなくなることが多いようだが、双極性障がいの場合、食欲が減退する人も著者のように過食になる人もいる。食べるというより流し込むという方が合っているかもしれない。お腹が満たされると一時的に気分がよくなる。
思考力の低下」・・・うつ状態になると考えることが億劫になり、考えることができなくなる。それなのに、調子が悪い、つらい、死にたいというようなことは頭の中を駆け巡ってしまう。
活動量の減少」・・・ひどくなるとほとんど動けなくなる。
苛立ち」・・・うつ状態の苛立ちの原因は感覚過敏によるものが多い。著者の場合、臭いと音に過敏になる。うつ状態のイライラは自分へ向かうことが多い。
幻聴」・・・統合失調症の特徴的症状であるが、うつ状態がひどいときに現れることがある。幻聴があると医師に言うと無条件に統合失調症と即断され、双極性障がいの診断が遅れることがあるので注意すべし。

混合状態には3つある・・・混合状態は自殺の危険性が高い
1.躁転・うつ転に伴う混合状態
2.うつ状態なのに躁的な気分が入っている状態:気分は落ち込んでいるのに焦燥感が強い。
3.抗うつ薬服用による混合状態

ラピッドサイクラー:一年に4回以上うつ状態と躁状態を繰り返すこと。双極性障がいを治療しないままにしておくとラピッドサイクラーになっていく。こうなると、躁うつの波を安定させるのが難しくなる。

・薬の必要性:うつ病、統合失調症と診断されていた頃は薬を飲むことで一時的に状態がよくなった感じもしたが、結局は改善されず、むしろ副作用による負の効果しか実感できなかった。薬の必要性を感じたのは、双極性障がいと診断され、自分に合った薬を飲み始めてから

□ アモキサピン(アモキサン®)三環系抗うつ薬。躁転、ラピッドサイクラーになる危険性あり。副作用で食欲増加。

□ リスペリドン(リスパダール®)非定型抗精神病薬。考えることが億劫になり、自分が自分でなくなってしまったよう。どろどろとした眠気に悩まされた。

□ オランザピン(ジプレキサ®)双極性障がいの躁状態とうつ状態に適応がある。リスパダール以上に考えることが億劫になり安定というより鈍磨という感覚に近く、脳が停止したよう。副作用の食欲増進は恐ろしく、常に空腹で、食べるというより飲み込むかのように食事をしていた。

□ バルプロ酸ナトリウム(デパケン®)気分安定薬の一つで、主に躁状態を抑える効果がある。イライラして不機嫌になるような症状に有効。飲み始めてしばらくすると「そういえば最近イライラすることが少なくなったな」という感じでゆっくり効いてくる。ラピッドサイクラーの著者はこの薬を飲み始めてから気分交代が少なくなってきたと感じている。

□ ラモトリギン(ラミクタール®)気分安定薬。飲み始めてから、今までの薬では実感したことのないくらいうつ状態が改善した。それは抗うつ薬を飲むことで引き起こされる薬物躁転のような劇的な効き方ではなく、じんわりとうつ状態を持ち上げてくれるという感じ。安定状態を維持するためにも有効とされており、飲み始めて2年経過した今、以前とは比べものにならないほど状態は安定している。
 ラミクタール®の副作用としての皮膚異常がある。初期の段階で多量に服薬すると重症薬疹になる可能性が高い。

□ スルトプリド(バルネチール®)古くからある抗精神病薬で躁状態に有効。頓服として使用している。躁状態の始まりを捉えてこの薬を飲むと一気に気分が沈静化できる。副作用として手の震えや体のこわばりやつっぱりなど運動機能に支障が出るので、あくまでもその場しのぎという位置づけ。うつ転という副作用もある。
 躁状態には基本的にデパケン®の血中濃度をあげることでコントロールするようにしている。

・著者の治療薬:デパケン®で躁うつの波の幅を小さくし、ラミクタール®でうつを底上げしながらバルネチールで微調整している。

・「薬を飲まない方がよい」という治療方針に対して:それで安定すればいいが、双極性障がいでは経験上に薬を欠かすことはできない。もし著者が「薬なんかいらない、断薬する!」と思ってしまったとしたら、そのときにはすでに躁状態になっているのかもしれないと考えてしまう。

・薬の副作用:倦怠感(ほとんどの薬)、食欲が増す(デパケン®、ジプレキサ®)、過眠になる。これらの副作用が連鎖して負のスパイラルへ巻き込まれてしまう。
 食欲増加に対しては糖質制限を意識して食生活を整えるよう心がけている。米、パンなどは少なめにして豆腐や納豆を多めに食べる。卵、肉や魚や生野菜(または冷凍野菜)を食べるよう心がける(経済的にちょっとつらいときもあるが、必要経費と考えて)。おやつにはスナック菓子やチョコレートはなるべく避ける。小腹が空いてしまったときはなるべくチーズやナッツを食べる。甘いものがほしくてガマンができないときはシュガーカットゼロ(エリスリトールとスクラロース)とコカコーラゼロ(アスパルテーム、L-フェニルアラニン化合物、アセスルファムKなど)でしのいでいる。

・双極性障がいという病気の理解:躁状態やうつ状態は自分の性格ではなく、障がい・慢性疾患であり、一生つき合っていかなくてはならないこと、しかし糖尿病や高血圧などと同じようにきちんと対処すれば決して恐れるものではないこと、服薬や日常生活をしっかり自己管理することで上手にコントロール出来ること、再発の兆しがあるときはすぐに対応し、再発のきっかけとなるストレスとのつきあい方などを見つけること、など。

・生活リズムチェック表における気分状態の書き方:基本的に朝・昼・晩の3回記録する。0を安定状態、-5が一番ひどいうつ状態、+5が一番激しい躁状態とし、イライラの状態は(±)で表す。
 著者は、+1/-1の変動は気にしない。
 +2/-2は少し気にする。
 +3/-3は対策を取る。
 +4/-4は深刻な状態。自分一人の力では安定状態に戻すことが難しくなるので、サポートしてくれる人を見つけておく。
 +5/-5は危険な状態。場合によっては入院が必要。
 生活リズムチェック表をつけることで、著者は躁状態/うつ状態になる全長としてイライラすることがわかった。イライラが外に向いているときは躁の方へ、自分の方に向いているときはうつの方へ向かっている気がする。

・躁状態のサイン:
「言葉遣い」・・・荒くなる。対策は、なるべく人と接しないこと。人と接する時間を少なくすることで脳への刺激を抑え、クールダウンさせる。
 人と接しすぎると躁状態へ向かい、逆に人と接することが少なくなるとうつ気分が増してくるので、人と接する時間を意図的に調整することで、双極性障がいをコントロール出来ることを実感している。
「金使い」・・・突然お金の使い方が荒くなる。衝動買い対策に、著者はクレジットカードを持つのをやめた。クレジットカードは便利であるが双極性障がい患者には危険なもの。amazonではコンビニ払いを利用している。
 逆に節約しすぎるようになるのはうつのサイン。使いすぎずけちりすぎないお金の使い方ができているときは自分の気分状態が安定している。

・精神疾患に限らず、一般に病気への対処として「〜してはならない」と制限されることが多い。医学的には最もなのかもしれないが、すべての制限を受け入れていては実社会でやっていけない。
 双極性障がいと診断されてから、障がいと上手につき合うためにはなるべくがんばらないようにと言われたことがあるが、しかし言い換えれば、いろいろなことをあきらめなさいと言われているようで悲しい気持ちになった。


・うつ状態の時に無理をすると、その状態を長引かせてしまう。躁状態の時に勢いに乗ってやり過ぎてしまうと、その後にやってくるうつ状態がひどくなってしまう。
 著者はうつ状態の時にも安定状態の時と同じくらいがんばろうとし、躁状態の時にはうつ状態でできなかった分を取り戻そうと躍起になっていた。しかしこの行為は悪循環だった。それを繰り返している限りいつまで経っても気分を安定させることはできない。
 安定しているときに自分ができるがんばりの基準を100%とすると、うつ状態の時には60%に落ちてしまう。それを無理して100%まで持って行こうとすると、ますます調子が悪くなる。うつ状態では60%できれば自分を認めてあげてよい。反対に、躁状態では200%できてしまうが、あえて120%に抑えるようにするとその後ひどいうつ状態にならなくて済む。
 要するに、双極性障がいがあるなりのがんばり方をすればよい。

・ある出来事によって感情が揺さぶられると気分が不安定になる傾向がある。でもそれ自体が問題ではなく、感情を長引かせてしまうことが気分変動に大きく影響してしまうことを経験的に学んだ。
 楽しいことやうれしいことがあった後には、なるべく早く一人で過ごす時間を取り気分を落ち着かせるようにする。悲しいことやつらいことがあったときには友人に話を聞いてもらうようにしている。いやな出来事を人に話すことで気分がだいぶ楽になる。
 感情を揺さぶるようなことを避ける人生はつまらない。

・双極性障がいを完全にコントロールするのは難しい。一方で、完全にコントロールする必要はないと思うようになった。今は寄り添いながら上手につき合っていこうという気持ち。
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「躁鬱(そううつ)なんです、私。」(藤臣柊子 著)

2016-07-27 14:43:39 | 
帯:元祖・うつ漫画家の迷走日記
ポプラ社、2013年発行

当初、「うつのち晴れ」というタイトルでうつ病のカミングアウト漫画を書き始めた著者が、途中で診断名が「躁うつ病(双極性障害Ⅱ型)」へ変わったため、タイトルもこのようになったそうです。

これ、実はよくあるパターンらしい。
初発時にうつ状態だと、それがうつ病なのか双極性障害のうつ病相なのか、専門医師にも判別不能。
治療経過で、どうも抗うつ剤の効きが悪いとか、そう病相に気づいてはじめてわかるようです。

その過程が患者目線で書かれているこの漫画は、ある意味貴重だと思います。
ときどき、ストーリーがまとまらなくなる傾向を感じますが、それもこの病気の特徴かと。
同じ病気に苦しんでいる患者さんには、双極性障害へのつき合い方の参考になり、暗闇の中の一筋の光になるのではないでしょうか。

<メモ> ・・・目に止まった文言を抜粋

体の調子とおんなじで、心も常に一定ではなく、調子のよい日もあれば、ベッドから起き上がれず、そのまま寝たきりで数日を過ごす・・・・・、なんてこともしょっちゅうでして、そんな時には、焦らずに、ただ嵐が過ぎ去るのを静かに待つ、これしかないんですね。

今、この国には心を病んでしまった人が数多くいます。その多くの方すべてに共通する悩みは、見た目じゃ健康な人と変わらないってことなんです。
これって、本当につらいんですよ。だって誰ともこのつらさを共有できないから。この痛みは、おそらく、自分にしかわからない。そう思って生きていくのって、涙が出るくらい寂しくてつらいことだと思いませんか。

ちょうどいい状態っていうのがすごく少ないんだよね。時間的に。一日の中でもバラバラ・・・・・。お医者さんには、きちんとリズムを作りなさいといわれるのだが、無理・・・・・。
そこらへんが、双極性障害Ⅱ型の問題点かもしれないんだけど、そう状態にもうつ状態にもいききれないっつーか、多少の波だったらそれはフツーのことかもしれないんだが、それよりはちょっと針が振れすぎてしまう。
落ち着きすぎて寝過ぎるとか、今度は何とかしなければと焦りすぎて過呼吸気味になるとか。
そんなに気にしなくてもいいのにね。

双極性障害と診断されたその後の私は、まだこの心の病気と闘う日々を送っております。
毎日とてもしんどいです。でもそのしんどさって、たぶん自分の抱える生きている証みたいなものだと思っています。
こんな時もあって、こんなにつらい時間を過ごしてもまだまだ生きていけるぞ、ってことをわずかでも知って欲しかったんです。
一人でがんばりすぎないで、弱った時には弱ってるって弱音を吐いてもいいと思う。
誰かにいわなくても、独り言でもいいから口に出してみる。そうすると少し抜ける。
そうしたら、本当に少し去るんだよ。
この前も、どうしてもつらくてどうしようもない時に、トイレでボソッとつぶやいたら、ちょっとだけその痛みが抜けたんです。
なんも言いたくない場合はちょっと深めの呼吸でもいいらしい。
深呼吸じゃなくていいから「ふーーっ」て言って、あとは寝ちゃえばいいそうです。
そうやって吐き出すことで、自分の中にたまっていた、どろどろ思いモノみたいなのが去って安眠できたりする。
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