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チェルノブイリ、25年後の現実

2011-03-31 16:45:55 | コラム

チェルノブイリ原子力発電所の凍てつく敷地内では、カタカタと音を立てるガイガーカウンター(放射線測定器)が、史上最悪の原発事故の影響を今も伝えている。焼け落ちた原子炉を封じ込めるため、一時しのぎの策として造られた“石棺”は腐食が進む。

 「石棺はこれほど長期間使われるはずではなかった」。同原発の現場監督、アレクサンドル・スクリポフ氏は呼吸マスク越しに、くぐもった声で語る。その背後に立つ1986年4月の爆発事故後に急ごしらえで造られた石棺は、壁の崩壊を防ぐために支柱で支えられている状態だ。

 国内観測史上最大の地震に見舞われた日本では、東京電力福島第1原子力発電所の炉心溶融(メルトダウン)を回避するための努力が続けられている。放射能漏れの脅威が現実となったことで、チェルノブイリ原発からの放射性物質が欧州全域に降り注いでから四半世紀を経た今、原発の安全性を巡る論議が再び活発になっている。

 欧州連合(EU)及び米国の当局は、チェルノブイリ原子炉の恒久的な格納施設を建設する費用の調達に今も苦労している。各国とも世界金融危機で膨大な債務を抱えただけに、税金による支出には及び腰だ。昨年、国際通貨基金(IMF)から156億ドルの緊急支援を受けたウクライナは、単独ではとても費用を賄い切れないとしている。

 「長年、経済的な理由から、原発の安全性に関する議論は全くされてこなかった」。原発の安全性が専門で、76年には拡大する原発産業を分析した著書も出版した英王立国際問題研究所のウォルト・パターソン氏は語る。「国民は今後、原発問題に資金を投じることに一段と消極的になるだろう」。

 

ドイツは原発政策を見直し

 

 原発を保有しないオーストリアは3月14日、すべての原発に対するストレステスト(安全性評価)の実施を求めた。ドイツのアンゲラ・メルケル首相も同日、原発を“過渡的な技術”として、国内原発の稼働年数の延長措置を凍結することを決めた。

 欧州復興開発銀行(EBRD)と欧州委員会は4月20日から22日にかけてウクライナの首都キエフで、新しい格納施設の建設費用として各国政府から6億ユーロ(約8億3400万ドル)以上の寄付を募る予定だ。高さ110mのアーチ型の格納施設の建設費用は総額15億5000万ユーロになる見込みだが、EBRDがこれまでに調達した資金は10億ユーロにとどまる。

 チェルノブイリ原発のイホール・フラモトキン所長は、原子炉の閉鎖には20億~25億ドルという新規建設と同じくらいの費用がかかると話す。2000年12月にやっと稼働を終了した同原発では、今も3473人が働く。

 「ここを訪れる人が目にするのは“人類の過ち”だ」。2月24日、フラモトキン所長はこう語った。「チェルノブイリで起きたのは、原発の歴史上最大かつ最も困難で深刻な事故だった。だがチェルノブイリ、25年後の現実福島第1原発の事故を受け、世界的に原発の安全性を巡る議論が再び高まっている。チェルノブイリ周辺の汚染は依然深刻で、恒久的格納施設の建設は資金難で難航する。

 福島第1原発を運営する東京電力は3月15日、制御不能に陥った原発で原子炉の格納容器が破損した可能性があり、放射能漏れの危険が高まっていると発表した。同日朝、同原子炉の建屋が爆発したことから損傷が懸念されていた。国際原子力機関(IAEA)の天野之弥・事務局長は、日本政府から詳細な情報を得る努力をしていると語った。

 

福島をはるかに凌ぐ放射線量

 

 IAEAが発表した、日本で観測された1時間当たりの放射線量と、チェルノブイリ事故当時の放射線量を比較すると、チェルノブイリの爆発した原子炉外部の放射線濃度は、福島原発内で記録された最大値の約50倍だった。また同じデータによると、チェルノブイリの原子炉そのものの放射線量は、福島原発の爆発*1の際の1000倍の高さだった。

 チェルノブイリ原発のチーフエンジニア、アンドリ・サビン氏によると、今日でも原子炉近くの放射線量は、150km離れたキエフ中心部の通常の量と比べて約300倍の水準にある。

 チェルノブイリ事故に対処した専門家2人が、地震の被害に遭った原発の支援に当たるために日本に向かった。だが、キエフのラズムコフ政治経済研究センターのエネルギー専門家、ボロジミール・オメルチェンコ氏は、福島原発の事故は1979年に米ペンシルベニア州スリーマイル島原発で起きた事故に近いと語る。

 「チェルノブイリの原子炉には鋼鉄製の防御壁もなく、日本の原子炉と比べて防御が厳重ではなかった。さらにチェルノブイリの爆発は福島よりはるかに激しかった一方、防御システムも冷却システムも貧弱だった」とオメルチェンコ氏は語る。

 スリーマイル島原発の事故では、冷却システムの不具合によって部分的に炉心溶融が起きた。だが死傷者は出なかった。チェルノブイリでは事故後86年7月までに、原発作業員や消防隊員など少なくとも31人が死亡した。

 チェルノブイリには4つの原子炉があり、1号炉が稼働したのは77年だ。EBRDによると、事故は83年12月に試運転を終えたばかりの4号炉の過熱が原因で起きた。

 爆発によって建屋の屋根が崩れ落ち、燃料棒の一部を含む放射性を帯びた破片類が屋外に放出され、近隣の森林を破壊した。EBRDによると、事故後の86年10月には同原発の別の原子炉での発電が再開され、2000年末まで続いた。事故の後遺症はまだウクライナ経済の重荷となっている。

ウクライナ経済に重い負担

 

 ウクライナ緊急事態省のホームページによると、現在もまだ215万人が放射能で汚染された土地に住んでおり、30km圏内の立ち入り禁止区域は今も有効だ。検問所では放射能検出器を使い、過剰な放射線を浴びた可能性がある訪問者がいないか確認している。

 同省によると、事故当時に旧ソ連の一部だったウクライナは、今年も原発の安全性を維持するために7億2890万フリブナ(約9200万ドル)を支出する。それに加えて、同国政府は2009年に被害者への手当てとして20億フリブナを支払った。事故で障害を負ったとして登録されている人の数は、2010年初めの時点で11万827人に上る。

 「我々は日々、これまで誰も下したことのない決断、解決したことのない問題に向き合っている」とフラモトキン氏は語る。「チェルノブイリ周辺のあらゆるものが、ウクライナに限らず、欧州全域、そして世界全体の人々の健康にとって非常に危険だ。安全確保には莫大な費用がかかり、すべては資金調達の成否にかかっている」。

 チェルノブイリの解体、被害者への手当て、今後100年にわたる環境保護といった問題は、いずれも未解決のままだ。当局は仏バンシ、ブイグなどによるコンソーシアム、ノバルカが設計する新しい鋼鉄製のアーチ型をした格納施設は2014年には完成する、としている。だが2月時点では、アーチを移動し、固定するための分厚いコンクリート製の軌道しか建設されていない。となった制御室はいまだにがれきに覆われている。錆びついた制御パネルに電力は通じておらず、光源は一切ない。

 EBRDが2月に主催した訪問ツアーの参加者は、線量計2器と特殊な防護服、そして顔を覆う呼吸器の装着を求められた。スクリポフ氏は原子炉4号機の前に立ち、格納施設用の枕木を敷設するために整地をしていたブルドーザーが、救援部隊が掘削機やトラックなど放射能に汚染された機材を埋めていた穴を発見した、と説明した。

 「放射線量の高い地点は非常に多く、現在の石棺を解体し、すべての放射性廃棄物を除去する作業がまだ必要だ。それを完了して初めて、チェルノブイリの問題が解決し、人々と環境への危険性はなくなったと言えるのだ」とスクリポフ氏は語る。

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チェルノブイリ、25年後の現実 より



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