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117年振りに韓国を取り戻した中国

2013-07-05 18:46:50 | コラム

韓国がネギをしょって転がり込んだ中韓首脳会談(2)

 朴槿恵大統領の6月末の訪中で中韓関係は一気に深まった。注目すべきは両国が、安全保障と経済の関係強化に加え“人文同盟”も結んだことだ。「文化の同質性を手がかりに連帯を図る」と説明されるが、この「中韓協商」には冊封体制復活の臭いがする。

中国重視の“新思考外交”

 韓国研究者が今、注目しているのが「人文紐帯」という韓国語だ。6月27日発表の中韓共同声明でも「安保」、「経済」に続いて3番目に「両国間の人文紐帯の強化」がうたわれた。

 具体的には学術や伝統芸能の交流事業を実施するようだ。だが、なぜ専門の「交流共同委員会」を作るほど「人文紐帯」が重要なのだろうか。そもそも「人文」とは何を指すのだろうか。

 答えは朴槿恵政権がスタートする直前の東亜日報の記事「韓米が価値同盟なら、韓中は人文同盟」(2013年2月22日付)にあった。内容は以下の通りだ。

・米国との関係は市場経済や民主主義といった共通の「価値同盟」がベースにある。同様に中国とも、何かをベースにした確固とした同盟関係に引き上げる必要がある――と朴槿恵・次期政権は考えている。

・韓中両国は政治や経済、社会システムは大きく異なる。一方、歴史や文化、哲学を長い間、共有してきた。それだけに人文分野では通じるものが多い。

・そこで次期政権は「人文同盟」という概念をもとに、中国との協力を強化することを決めた。知らされた中国政府も歓迎した。

 荒っぽく解説すれば「これから中国重視政策に踏み出す。経済でも安全保障でも、米国よりも中国に助けてもらうことが多くなるからだ。ただ、60年間に及 ぶ米国との同盟の下で、社会の仕組みはもとより価値観まで米国式になってしまっている。これでは中国を頼みとする“新思考外交”と齟齬をきたす。それを避 けるため中国文化を再評価し、身を寄せるしかない」――と韓国人は考えたのだ。

中国の価値観を再び受け入れる

 「同盟」という単語は米国からの疑いを招くからだろう、次第に「紐帯」という言葉に置き換わった。しかし今や「人文」という言葉は毎日のように韓国紙に登場する。

 朴槿恵政権発足以降、韓国の大学やメディアが「人文紐帯」=「中国との共通の価値」を求め、相次ぎシンポジウムを開催しているからだ。

中韓首脳会談を前にした6月下旬、北京に両国の学者が集まって今後の2国関係を論議した。それを報じた中央日報の見出しが「韓中、新たな20年に向け人文紐帯の強化が必須」(6月24日付)だった。

 この記事によると、中国共産党中央党校の韓保江・国際戦略研究所所長は「両国関係の根本に人文の紐帯がしっかりと定着すれば、両国間の間に発生するいかなる風波も乗り越えられる」と、その意義を強調した。

 韓国のイ・ヒオク成均中国研究所長は「韓中両国の国民は今後、韓国人や中国人としてだけでなく東アジア人として生きていく訓練が必要だ」と主張した。

 孫英春・中国メディア大学教授は「両国民の心の距離を縮めるために北東アジア文化共同体を建設しよう」と呼び掛けた。

 「人文紐帯」の正式な定義はいまだないものの「韓国人が中国人と同じ価値観や発想を持って生きていく」というコンセプトに集約されつつある。

 この言葉を使わずとも、中国との文化的絆(きずな)を強調し、連帯をうたうシンポジウムが一気に増えた。

韓国では左派が中国を軽視

 同じころソウル大学アジア研究所は「世界の中心のアジア、普遍的価値を探して」と題する討論会を開いた(中央日報6月21日付)。

 ここでは西欧が造った発展モデルに代わる「アジアモデル」について議論が交わされ「アジア全体のための普遍的文明を構想すべきだ」といった主張がなされた。

 異なる国や民族の間でお互いの文化を知れば国際関係が円滑になる――という発想は今や、ごく当たり前のことだ。

 だが、韓国で始まった「文化連帯」運動は少々異なる。相互理解というよりも「欧米とは異なる価値観を中国と韓国が共有したうえ、広めるべきだ」――という結論に傾くのが特色だ。

 ここまで来ると、朝鮮半島の歴代王朝が中国の暦を使い、衣服を真似ることで恭順の意を示した冊封体制を想い出してしまう。

 木村幹・神戸大学大学院教授がネット上で“発見”し、ツイッターでつぶやいたために日本の研究者の間で少々有名になった論文がある。

 韓国の左派系ネットメディア、プレシアンが6月17日に載せた「韓国の進歩派はなぜ、中国から目をそむけるのか」だ。筆者は肩書から見て、在米韓国人研究者と思われる。

 ちなみに、韓国では保守派よりも進歩派――右派よりも左派に中国を軽く見る人が目立つ。民主化の歴史に誇りを持つ左派は、西欧的な価値観に重きを置くあまり、独裁国家たる中国を上から目線で見がちだ。

大日本帝国より中華帝国

 この論文の狙いは、そんな韓国人、ことに左派に反省を促すことにある。

・中国は独裁国家だと思われている。しかし国家主席の権限は(民主国家)の大統領のそれに及ばない。なぜなら中国は集団指導体制だからだ。

・中国の指導層の能力は極めて高い。民主国家の指導者が人気投票で選ばれるのに対し、理論と実践で鍛えられた百戦錬磨の人たちだからだ。

・中国は中華思想を持つとの批判も多い。しかし、昔の大日本帝国と比べ、どちらが帝国主義的だろうか。

・(日本に植民地化された当時、近代国家として再出発した)中国の傘の下で、生き残るための仮の宿を見つけるという道も我々にはあったのではないか。

 最近、中国人がシンポジウムで主張する「中国システム優位論」をそのまま借りてきたような部分もある。だが、韓国人独特の、そして今の変化を如実に反映した視点もある。

「アジア的価値」に反論した金大中

 それは「中国の下で近代化する可能性があった」という主張だ。韓国では「近代化」=「西欧化」=「中国文明からの離脱」と理解されてきた。この常識を疑う姿勢こそは「今後、韓国は台頭する中国文明の下で発展すべきだ」との主張の伏線となる。

 20世紀末に、シンガポールのリー・クアンユー首相が西洋文明に対抗し「アジア的な価値」を強調したことがあった。それに対し当時の金大中大統領は「人類には普遍的な価値がある」と強く異議を唱えた。

 これから考えると「中国的価値」をさほどためらいもなく受け入れる、最近の韓国の論壇の空気は隔世の感がある。

 そのころは左派の金大中大統領はもちろん、多くの韓国人が「アジア的価値」という言葉に潜む危うさを感じ取ったものだ。その少し前まで韓国では軍事政権が「韓国的民主主義」の名の下、圧政を敷き、拷問を繰り返していたからだ。

 中国の台頭というものが、これほどに人々の心情に影響を及ぼすとは――。韓国と中国の近さを改めて感じざるを得ない。

 多くの日本人は「対中依存度が増すからといって、何も中国を崇める必要もないのでは」と韓国人に聞きたくなるだろう。

西安訪問で中国文化に敬意

 答えは「上位の国の文化に敬意を払う」発想こそが韓国人と中国人の心の奥底にある世界原理――「華夷秩序」なり「冊封体制」ということになるのだろうが。

 もっとも、政府が奨励したからといって本気で韓国人が中国を信奉するかは疑問だ。ただ「そうした形を整えること自体が冊封体制では重要」(岡本隆司・京都府立大学准教授)なのだ(「『対馬は韓国のものだ』と言い出した韓国人」参照)。

 とするなら、共同声明にわざわざ「人文紐帯」を盛り込んだうえ、首脳会談後に「中国文化に敬意を表すため」唐の都、西安を大統領が訪問した韓国は、十二分に恭順の意を示したことになる。

 中国の外交専門家はこれまで韓国を「揉み手をして近づいて来るが、いざという時は米国側に戻る」と評することが多かった。

 だが、「人文紐帯」まで言い出した韓国人を見て「日清戦争後に清から独立した韓国が117年振りに戻って来そうだ」と中国人が思い始めたのも確かだ。

「米のアジア回帰」で困惑した韓国

 人民日報のウェブ版である人民網。その有名なコラム「望海楼」(6月27日付、日本語版)は「中韓関係の最大の障害は北朝鮮と米国という外部要因にある。朝鮮半島の核問題を超え、米韓同盟を超越すれば画期的な意味がある」と韓国に呼び掛けた。

 中国は北朝鮮と軍事同盟を結んでいるが、その核開発で困惑している。一方、韓国は同盟国の米国が「アジア回帰」を言い出したため、やはり困惑している。

 朴槿恵大統領が米議会演説で指摘したように、経済的な緊密性が増す一方で政治的な対立が激しくなる「アジアのジレンマ」の中、韓国は米中間でまた裂きになりかけているからだ。

 このコラムは「核問題を超え、米韓同盟を超越すれば」との表現で「半島の非核化に成功した暁には、南北朝鮮の中立化により――つまり、韓国の米韓同盟破棄により、韓国のジレンマは解消できるではないか」とささやいたのだろう。

 これまで中国の学者らは韓国紙への寄稿で、米中間の等距離外交を強く求めてきた。ただ、米韓同盟に関しては敢えて触れないのが普通だった。米国との軍事同盟に大いに未練を残しながら米中二股外交に乗り出した韓国に、警戒心を起こさせないための配慮からだ(「韓国は中国の『核のワナ』にはまるのか」参照)。

米韓同盟破棄を射程に

 だが、この「望海楼」の記事からは「上手に持っていけば米韓同盟だって破棄させることは可能」との認識が、中国に生まれつつあることが分かる。

 その期待を習近平主席も持ったのではないか。習近平主席は6月27日の首脳会談の席上、新羅の高級官僚、崔致遠の漢詩を引いて見せた。崔致遠は若くして唐に留学、科挙に優秀な成績で合格した人物だ。ちなみに、新羅に戻った後は母国の改革を志した人でもある。

 習近平主席は翌28日、中韓首脳の昼食会の席でこうも言っている。「今回の朴槿恵大統領の訪問は、今後に大きな影響を及ぼすだろう」。

117年振りに韓国を取り戻した中国 より



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