CRAZYの戯言

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「日本バブル」を否定する、中国の策略とは?

2013-06-27 17:51:18 | コラム

「アベノミクス??あんなものがうまく行くわけがないですよ。なぜなら日本はバブルを自分で作って、自分で処理することに慣れていないですから。そ の点、プロフェッショナルであるアメリカとはまったく違うのです。そもそも日本が『自分たちはこれから変わります、絶対に変わってみせます』などと言い出 したときには、絶対に信じないほうがいい。なぜならば最後まで日本はまったく変わらず、これを信じたほうが馬鹿を見るので」

アベノミクスをこきおろす、中国人エコノミスト

私はこのコラムを英国・ロンドンで書いている。ここに来る直前まで、ロシア・サンクト・ペテルブルクにいた。プーチン大統領肝いりのプロジェクトで あり、ロシアが国家としての威信をかけて開催し今回17回目を迎えた「サンクト・ペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF)2013」に出席するため だ。

そこでわが「アベノミクス」がどのように扱われていたのかというと、一言でいうならば冒頭に掲げたとおりということになる。発言したのは中国から招 待されたエコノミストだ。元来の気性が激しいせいだろうか、文字どおり「吐き捨てるように」わが国について酷評しているのが目についた。むろん、わが国か らの出席者(今回は聴衆としての参加)として私は、腹の中が煮えくり返るのを覚えたことは言うまでもない。

これに先立つ6月19日、安倍晋三総理大臣はロンドン・シティの金融街で40分間にわたる演説を行った。これまで我が国は国を挙げてエマージング マーケットへの投資を行ってきたわけであるが、むしろ逆にロンドン・シティをテコにして、今度は世界中からマネーを集めようとしたというわけなのだ。それ と相前後して、安倍晋三総理大臣の「ブレーン」として知られる浜田宏一内閣官房参与らもアメリカ・ニューヨークに派遣され、「日本に投資をしてください」 と演説を行った。確かに「何もしない」よりははるかにマシかもしれないが、私からすると、こうしたやり方はまったくもって素人であり、完全に間違ってい る。

なぜならば国際金融の現実を見るかぎり、それは「つねにそこにある人的ネットワーク」によって動かされているからだ。つまりロンドン・シティ (「ニューヨーク・ウォール街」ではないというのがポイントだ)につねにいて、何となればそこで行われる「閉ざされた(クローズドな)内輪の会合」に顔を 出し、名前を覚えてもらう中で徐々に流れがわかり相手にされてくる。それが「大英帝国」が築き上げてきた国際金融システムと付き合う唯一の方法だからであ る。それなのに必要なときだけやってきて、これみよがしにマネーや製品を掲げ、「これを買ってください、日本に投資してください」とだけやり、後は島国に 戻ってしまい何も対外発信すらしないというのでは、まったくもって論外なのだ。

国際経済会議の重要性を知らない日本人

もっと言うと、そうであるからこそ中国が冒頭紹介したような国際会議の場で、「対ジャパンマネー批判」を行うのを許してしまっているのである。私は今回の会議以外にもいくつも国際経済会議に出席しており、たとえばドイツのキール世界経済研究所が主宰している「グローバル・エコノミック・シンポジウム」で は、議題提案権を持つナレッジ・パートナーを務めている。私たち日本人はマーケットのことというと、アメリカが何でも決めてしまっていると思い込んでい る。だが決してそんなことはないのである。マーケットにはそこで起きている現象を説明してくれる「経済論陣」なるグループがいる。そしてこれら「経済論 陣」のお歴々が集まる場として開催されているのが、あの有名な「世界経済フォーラム(ダボス会議)」を筆頭とする国際経済会議というわけなのだ。

そのことをいちばんよく知っているのが、金融資本主義の申し子とでもいうべきエマージングマーケットの筆頭格「BRICs諸国」である。だからこそ ロシアを率いるプーチン大統領は2007年から「サンクト・ペテルブルク国際経済フォーラム」を開催し、こうした「経済論陣」が寄り集う場を創ったという わけなのだ。国際社会、そして外交の現場では会議をする場所をどこにするのかが、たいへん重要な意味を持つ。なぜならば開催国(ホスト国)ともなれば世界 中から集まる人々のお世話をすることになるからだ。

逆に言えば参加者たちはトップリーダーから取材陣まで、全員がホスト国の「お世話」になるわけであり、当然、その悪口は言えなくなる。そしていちば ん重要なのが、議題に際してホスト国は大きな発言権を持つことになるという点である。誰が集まろうと議題の設定がホスト国にとって有利なものであれば、話 はおのずと、その方向に流れていく。たとえば今回の「サンクト・ペテルブルク国際経済フォーラム」でいえば、パネリストたちからロシアマーケットが依然と して抱えるリスクやその問題点について、言及は確かにあった。しかしそこには暗黙の了解として、「ロシアはこれから経済成長を着実に遂げる。だから皆で投 資しようではないか」という論調があらかじめセットされていたのである。

そして、そうした暗黙のベースのうえでの議論を3日ほど聞かされて母国に帰った参加者たちは、口々にこう言うことになるのである。――「ロシアへの投資を考えよう。ロシアはこれからまだ伸びる」。

中国の術中に、いとも簡単にはまる参加者たち

ロシア以上にこうした国際的な「経済論陣」が持つ意味合いを十二分に意識しているのが中国だ。非常に面白いことにたいていの場合、中国はこの手の国 際会議には、美人で見るからに聡明そうなアナリストを送り込む。あるいは男性であれば、いかにも「教授」といった感じの信頼感の持てるタイプの人物であ る。中国というとひと頃までは皆「人民服」で一緒といったイメージであったが、今はむろん、まったく違う。前者の女性アナリストはたいていの場合、明らか に高価なブランド物でミニスカートのスーツを身にまとっており、後者の男性「教授」も垢抜けた格好をしている。

だが彼ら、彼女らは、議場で一度口を開いた途端に豹変するのである。ノンネイティヴのアクセントではあるが、マシンガンのようなスピードで英語を話 し始めるのだ。しかもたいへん興味深いのがその「論調」であって、非常に巧みなことに、必ずしも中国がその時点で取っている経済政策について120%賛成 といった議論は一切しないのである。むしろ率直に「中国は影の銀行(シャドーバンキング)の問題に悩んでいる」といった形で中国自体の政治・経済が抱える 問題を指摘する。そのため、聞く者たちは至極納得といった感じになるのであるが、実はそれによって完全にその術中にはまってしまうのである。

今回のサンクト・ペテルブルクにおける会議でもそうであった。中国から大挙してやってきた彼ら、彼女らは口々に「中国経済で最大の問題は国有企業 だ。この国有企業を完全に民営化させ、中小企業がもっと活発に経済活動ができるようなシステムにしなければダメだ」と叫んでいた。たとえばそうした様子を 目の当たりにすると、勘のいい聴衆はこう思ってしまうのである。「なるほど、国有企業を完全に民営化するという意味での構造改革を中国から推し進めるとい うことなのだな。しかも中小企業を振興していくということは、新規株式上場(IPO)も推進していくということなのではないだろうか。まだまだ中国マー ケットには未来がある。よく語られている悲観論は、まったくもってデタラメだ」

しかし、である。よくよく考えてみると、これは大きなワナなのである。6月18、19日に開催された公開市場委員会(FOMC)で米連邦準備制度理 事会(FRB)は、これまで行ってきた量的緩和(QE)を今年後半には縮小し始める可能性があることはっきりと打ち出し始めた。ここで世界マーケットが激 変の時を迎えるのは、火を見るよりも明らかなのである。

中国は追いこまれている

これまでアメリカが大量のマネー(米ドル)を刷り出し、それを次々にホットマネーとして吸収してきたのが中国であった。いってみれば血液を送り出す 「心臓」がアメリカだったのであり、中国はどうひっくり返ってもその血液があってはじめて動くことのできる「手足」であったにすぎないのである。そのアメ リカが「心臓」であることを止めようというのであるから、「手足」の中国がどうなるのかは想像に難くないのである。下手をするとその経済は「壊死」してし まう。

本当はこのことこそが大問題なのである。だが、そうしたことはおくびにも出さず、今回のサンクト・ペテルブルクにおける会合で中国から送られた「専 門家」たちは、「中国経済は苦しいが、しかし普通の手立てで何とかなる」と繰り返し述べていたというわけなのである。しかもこれをほぼ同じ論調を世界中で 繰り返し、繰り返し刷り込んでいるのであるから、おのずと「経済論陣」たちも動かされざるをえない。

だが米欧から派遣されるこれら「経済論陣」の側にも立場がないわけではない。たとえば冒頭に紹介した「アベノミクス」に関する議論を行ったセッショ ンでは、ドイツから派遣された有名エコノミストが出席していた。あまり知られていない事実であるが、年金基金を中心にドイツ系金融機関は、わが国の不動産 とその証券化された商品をこの「アベノミクス」が始まる前から大量に買い占め始めているとささやかれている。

つまり「アベノミクス」から始まる我が国における資産バブル(「日本バブル」)の到来をあらかじめ察知していたというわけなのだが、そうであるから こそ、あまりこうした国際会議の場で「アベノミクス」批判をされてしまっては困るのである。だからこそこのドイツ人エコノミストは日本人のパネリストが誰 一人としていないその議場で「いや、そこまで言わずとも日本は何とかするのではないでしょうか、今の『アベノミクス』の後にも」と静かに反論し始めたので ある。

だが、これに対してくだんの中国人エコノミストは「冗談じゃない」といった感じでこう言い切った。「だから……、日本はもうダメだと言っているで しょう? いったんバブルにしても、それをどうやって処理すればよいのかわかっていないのだから。何がこれから起きるのかは目に見えている」

まさに一刀両断、取りつく島もないとはこのことだといった感じであった。そこでは何ら根拠は示されておらず、とにかく「日本人はダメだからダメだ」 の一点張りだったのである。だがこれと相前後して、わが国のマーケットの奥底で活動している向きから、サンクト・ペテルブルクにいる私に対してこんな連絡 があった。

「どうも中国の国営ファンドである中国有限投資公司(CIC)が日本株を売り始めたようですね」。ロンドンでこのコラムを書いている段階で、私自身 にはこの非公開情報を検証する手段はない。しかし仮にこれが“真実”であったとするならば、非常に納得がいくのである。「ダメなものはダメ」と中国人エコ ノミストが声高に言い切るのと、この「リーク」はあまりにもタイミングが符号しているからである。なぜならばこの2つに接すると、普通であればこう判断す るはずだからだ。「日本株は中国ですら手放し始めており、しかも中長期的にも将来性がないというのであれば、もはや売りだ」

中国は「日本バブル」のシナリオを察知した?

だが仮にこれが、円安誘導による資産バブルという意味での「日本バブル」の、「第1弾の後半戦」(前半戦は「5・23ショック」により終わった)開 始を察知した、中国による策動であるとするならばどうであろうか。世界中で「経済論陣」に対してあらゆるレベル、あらゆる手段を通じ、「日本株悲観論」を 叫び続け、やがてはその現実を動かしてしまう。しかしそうであればあるほど、わが国はいよいよ公的・準公的な資金を動員して(年金積立金管理運用独立行政 法人(GPIF)の基本計画見直しがその典型)「日本バブル」という名の官製バブルを盛り上げることになるはずだ。何せ参議院選挙が7月に控えているのだから、関係者たちは「政治」からのプレッシャーを受けてそう動かざるをえないのである。

私は前回のこのコラムで「6月大反騰」説を 提示した。「日本株は大反騰にもなっていないし、いったいあれはどうなったのか」などと思われている方もいらっしゃるのではないかと思うので、一言申し上 げておく。仔細に日本マーケットの状況を追われている方ならば先刻ご承知とは思うが、「5・23ショック」を引き起こしたのはわが国の機関投資家による 「売り」であったのであり、むしろいわゆる「外国人」はこれに出遅れたのである。だが、それでもその「外国人」たちは引き続き日本株を買い越してきてい る。これがいったいを意味するのか。

また、そもそもこの6月には何度も崩落が生じ、そのたびにひやっとさせられたわけであるが、どういうわけか時にはそれ以上に今度は株価の急騰も見ら れ、明らかに「何かが違っていること」が感じられたというわけなのである。そのような中で再び円/ドルレートは1ドル=100円を目指し始め、「5・23 ショック」よりも前の雰囲気が醸成され始めている。そう、構造としてはやはり官製バブルに向けた仕組みが6月にしっかりと形成されてきたというべきなので ある。

そしてそのことは参議院選挙がはっきりと見えてきた段階で、誰の目にも明らかになるのである。ダラダラと相場を形成するのではなく、一気に高騰させ たほうが政治的には効果的な演出となる。そしてそのことを誰よりも早く察知した中国が「日本悲観論」をあえて喧伝し、自らは「日本バブル」第1弾の後半戦 でしっかりと利益を得るポジションを積み上げているとしたならば、どうであろうか。

そう、これは形を変えたある種の「戦争」なのである。戦火が見えないだけに、わかる人にしかわからないが、だがある意味、誰の目にも明らかとなる 「戦争」よりもその影響は大きいというべきなのである。そこで勝利を収めるため、米欧はもとより、ロシアや中国は大量のマネーと人を投じ、せめぎ合ってい る。だが、そうしたゲームの場に私たち日本人は、まったくいないのである。

今回のサンクト・ペテルブルク会合で唯一、日本人パネリストとして奮闘していたのが前田匡史・日本政策投資銀行執行役員であった。第2次安倍晋三政 権になってからわが国がロシアとの間で始めた極東地域に対する共同投資スキームについて、流暢な英語で説明していたのが非常に印象的であった。だが、悲し いかなそのプレゼンテーションがカヴァーしていた範囲は余りにも狭く、およそ並み居る「経済論陣」を揺さぶるようなインパクトは、残念ながらいっさいな かったのである。いずれにせよ、この会合における「経済論陣」による議論の様子とそれに対する私の考えは、私の報告書の中で明らかにしていく。

安倍首相、正しい日本バブルの作り方をご教示します

最後にこの場を借りて安倍晋三総理大臣に提案したい。―――国務に忙しい我が国の総理大臣がわざわざロンドン・シティまで行って「日本に投資して下 さい」などと頭を下げる必要はないのだ。むしろ必要なのは、米欧のビジネス・スクールに留学し、海の向こうでキャリアを積んだものの、我が国に帰ってきて も居場所がないような中堅・壮年層のマーケットの“猛者”やエコノミストたちを100名ほど、国費で雇いあげるのである。そして世界中で開催されているこ れら国際経済会議に対して派遣し、「日本バブル」には未来があると「自然」な形で、同じメッセージを発し続けるのである。

しょせんは金融マーケットとの関係で素人集団である在外公館(大使館・総領事館)に東京からの訓令を棒読みさせたり、あるいは御老体の大学教授たち に高い旅費を払って型どおりの演説をさせるよりもはるかに効果があるはずだ。そしてそうした中堅・壮年層の「ジャパン・エコノミスト・チーム」の中から国 を挙げてスターを創り出し、そのブログを世界中が読むように仕向けていくのである。これ以上に効果的なやり方はないことが、やり始めればすぐさまわかるは ずだ。

サンクト・ペテルブルクで開かれた今回の会合で知り合ったフランス人は、「中国は今、自分たちが危機的だからこそ一生懸命説明しているのだろう。そ の必要がなければあそこまで一生懸命にはならないよ」と笑って言っていた。だが、同じくらい追い込まれているわが国が、それでは何もしなくてよいというこ とにはまったくならないのだ。「日本バブル」を斬新な発想で支える、抜本的な取り組みが、今、求められている。


「日本バブル」を否定する、中国の策略とは?
  より



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