COCCOLITH EARTH WATCH REPORT

限りある地球に住む一地球市民として、微力ながら持続可能な世界実現に向けて情報や意見の発信を試みています。

オリバー・ストーン監督が語るもう一つのアメリカ史のドキュメンタリー

2013-04-07 23:40:43 | Weblog

にほんブログ村 環境ブログへ
 ハリウッドの代表的映画監督オリバー・ストーン氏は、映画を武器に政治や権力と闘っています。そんなストーン監督が独自の視点で語り綴った、第二次大戦前夜の1930年代から現代までのアメリカ史のドキュメンタリーシリーズ(全10本)が、4月9日(8日深夜)のBS世界のドキュメンタリー「オリバー・ストーンが語るアメリカ史(原題:The Untold History of the United States)」で順次放送されます。脚本は監督とアメリカン大学(ワシントンDC)歴史学科のピーター・カズニック准教授との共同執筆により、教科書には書かれていない歴史の中で、アメリカの辿った道を変えられたかも知れない人物にも焦点を当てながらアメリカの外交、軍事の軌跡を検証し、アメリカ人の歴史認識を大きく揺さぶっているそうです。我が国の為政者は日米同盟は日米共同の機軸と呪文のように唱えますが、アメリカとはどんな国かを知る上で含蓄多いドキュメンタリーです。4月第2集に1~4回目、5月第2週に5~7回目の放送が予定されています。今週放送分について、番組HPの情報を参考にして以下に紹介します。

4月9日(火)00:00-00:50 BS1 「第1回 第二次世界大戦の惨禍」。
 第二次世界大戦前夜から1942年のスターリングラードの攻防までが描かれます。ストーン監督は番組冒頭で、「未来を生きる子供たちのためにも、新たな視点を提示し、歴史に関心を持つ眼を育んでもらいたい。このために、忘れられた歴史上のヒーローにも焦点をあて、語られなかった歴史を見ていく」とシリーズ制作の意図を説明します。
 第二次世界大戦は、ヒトラー、ムッソリーニのファシスト政権と日本の帝国主義を打ち砕いたという意味で、多くのアメリカ人にとって「正しい戦争」だったと言われます。しかしドキュメンタリーは、実際にはおびただしい数の死者を出した「最悪の戦争」であり、アメリカはこの戦争で“深刻な過ち”を犯したとしています。
日本、ドイツ、フランコが勝利するスペイン内戦、スターリンのソビエトなどの様相が挿入されているほか、アメリカのルーズベルト大統領の「大陸への戦争には関与しない」という公約が、ドイツの快進撃の中でどう覆されるのかが紐解かれています。また、当時としては異例の黒人農業技術者を登用したウォレス農務長官を副大統領に据えたことにも焦点をあてています。

4月10日(水)00:00-00:50 BS1 「第2回 ルーズベルト、トルーマン、ウォレス」。
 第二次世界大戦後半、スターリングラード攻防でナチス・ドイツが敗北して以来、独ソ戦の形勢はソビエト有利に傾きました。この形勢逆転で英米はスターリン単独での対ドイツ和平を恐れました。これを防ぐためルーズベルトは、1943年11月にテヘランでスターリン、チャーチルと会談。更にルーズベルトは、チャーチルを外してスターリンと個別に数日間交渉を行い、東ヨーロッパの戦後処理にソビエトが関与することを事実上認め、ナチスとの戦争終了後にソビエトが対日戦争を開始することが極秘に確認されました。
 また、内政面では、圧倒的な支持を得ていた副大統領候補のヘンリー・ウォレス(当時、副大統領)にスポットを当てています。ウォレスは歴史上で忘れられたような存在ですが、1942年に“the century of the common man(市民の世紀)”を訴える演説を行い、全米で最も人気のある政治家でした。しかし、彼のリベラルな姿勢(男女平等、黒人解放的思考、反植民地主義など)が民主党内で危険視され、トルーマンが一転して副大統領候補となる「歴史の分かれ目」となるような変化が起きました。その後、ルーズベルト大統領の死によって大統領となったトルーマンは、日本への原爆投下を決断することになるのです。

4月11日(木)00:00-00:50 BS1 B「第3回 原爆投下」。
 広島と長崎への原爆投下に至るアメリカ政府内の“知られざる論争”に焦点があてられます。ニミッツ、アイゼンハワー、マッカーサー、キング、アーノルド、レイヒーという6人の主要な将軍も、原爆投下は「道徳的にも非難されるべきであり、軍事的にも必要ない」としていました。そして、戦後に原爆の破壊力の凄まじさから、核兵器の国際共同管理、あるいはソビエトの研究中止確約によるアメリカの核兵器破棄という選択肢が政権内で多数派を占めながらも、トルーマン大統領、バーンズ国務長官が否定していくことも描かれます。そして、トルーマン路線と対立したウォレス商務長官の突然の辞任につながります。ニューディールの中心的な存在で、ルーズベルト政権の農務長官、副大統領、そしてトルーマン政権の商務長官と政権内にいた彼の存在は大きかったとするストーン監督は、「彼がもし、シカゴの党大会で引き続き副大統領候補に指名されていれば、ルーズベルトの死後、大統領になっていた。そうなれば、原爆の投下はあっただろうか?戦後の核開発競争もあっただろうか。人種隔離や女性の権利向上は数十年早く実現しただろうか?」と問いかけます。
 本ブログ掲載の広島原爆投下前の米政権内の意見対立と、ポツダム会議の裏側もご参照ください。

4月12日(金)00:00-00:50 BS1 「第4回 冷戦の構図」。
 第二次世界大戦直後の5年間、トルーマン政権時代に進む反共戦略に焦点を当てられ、アメリカが核兵器を保有し、世界に君臨する反共産主義国家へと変わっていく経緯が明らかにされます。アメリカでは戦前に比べ輸出額が倍増し、工業生産は年に15%の伸びを示すなど、大きな経済成長を遂げていました。一方、戦争の甚大な被害を被ったヨーロッパ各国では、社会不安から共産主義勢力が拡大していました。ドイツと日本の侵略を恐れたスターリンはアメリカとの協力関係を望みましたが、アメリカはメディアを使ってソビエトが共産主義による世界征服をもくろんでいると国民に信じさせることに成功し、世界は冷戦へと向かいました。
 アメリカが1947年のトルーマン・ドクトリンで冷戦の構図を作りあげたことがターニングポイントとなり、その後の核開発競争と朝鮮半島やインドシナ半島への介入へとつながったとオリバー・ストーン監督は主張しています。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 原発メーカーに賠償責任はな... | トップ | オリバー・ストーンが語るも... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事