12月21日(日)22:00‐23:30のNHK教育テレビで、ETV特集「水俣と向きあう~記録映画作家 土本典昭の43年~」が放送されます。土本監督は、隠され、過去のものとして忘れさられようとしてきた水俣病事件の真相と実態を、常に患者の側に立って記録し続けたドキュメンタリー作家で、1965年に初めて水俣で取材して発表した「水俣の子は生きている」以来、今年6月亡くなるまでに19本の記録映画・テレビ作品を発表してきました。
1972年にストックホルムで開催された国連環境会議で、世界が初めて水俣病を知ることになりました。そこで上映された土本監督制作の「水俣~患者さんとその世界」公式に有機水銀中毒による環境汚染を「MINAMATA DISEASE」として認識することになったのです。
1977年8月から4か月間にわたって行われた不知火海沿岸集落全域をめぐる「不知火海巡海上映活動」では、「ここの魚に水銀汚染はない」とする地元の反発を乗り越え、実に76か所で上映を行なわれました。これによって、水俣病について全く知識がなかった人々が自らの症状を訴え始め、不知火海全体に広がる被害の実相が明らかになっていったのです。
1995年の政治決着から13年の現在でも救済を求める申請者相次ぎ、水俣病はまだ終わっていません。番組では、「不知火海巡海上映活動」にスタッフとして参加した西山正啓(映画監督)、一之瀬正史(カメラマン)の二人が、土本監督が残した足跡を30年ぶりに辿り、土本監督が「ドキュメンタリーによって不知火海に生きる人々の尊厳の回復を見届ける」と生涯願い続け、行動したことの意味を伝えていくそうで、土本作品のモノクロの映像も沢山流れます。見るのがつらくなる場面もありますが、二度とこのような事故を起こさないために、実態を知ることができる機会でもあります。
迫力のある映像を駆使したドキュメンタリーで、被害者の側に立って被害の真相と実態を訴える土本作品は、核兵器廃絶を訴えるスティーブン・オカザキ監督のヒロシマナガサキに相通じるものが感じられました。
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