栃木県那須町のJR黒田原駅を訪ねると、ちょうど通学時間帯で、県立那須高校に向かう生徒たちが一斉に駅を出てきた。近くには町役場や銀行もあり、かつて駅前通りはにぎわいを見せたというが、今は店をたたんだ商店も多く、シャッターが目立つ。高校生が元気な声を弾ませて行き交う時間帯だけがにわかに通りが活気付く。

 黒田原地区マスコットキャラクター「クロロとゆめな」は、観光名所も少なく、知名度の低い同地区のイメージアップを図ろうと、町商工会が平成22年に誕生させた。

 「クロロ」は馬。世話をする女の子が「ゆめな」。昭和40年代まで、同地区には大きな馬市場があったことにちなんで考案された町公認キャラクターだ。

 そんな「クロロとゆめな」が昨年、短編映画になった。「クロロとゆめな the MOVIE〜ツナガルミライ〜」(27分)で同県小山市の映画館で開催された「おもいがわ映画祭」では、「ショートムービーコンペティション」の上映作品に選ばれ、小山市長賞を受賞した。

 制作したのは、那須町地域おこし協力隊の木下愛貴(あいき)さん(28)。同地区を気に入り、「地域を盛り上げたい」と、同町や小山市などでのロケで自らカメラを持ち、撮影。町民もエキストラとして協力した。

 那須町では茶臼岳に向かう那須街道沿いが主要観光ルートとなっているが、江戸時代までは奥州街道で関東最後の宿場、芦野が繁栄した。明治24(1891)年の駅開業で一気に人々が集まり、町が形成されたのが黒田原地区。炭やまき、木材の集積地として栄えた。駅名の黒田原は当時の黒田村と字名の前原を組み合わせて名付けられたものだ。

 短編映画は冒頭、ゆめなが駅前商店街に歩き出すシーンからスタート。「駅は黒田原のシンボル。映画の出発点にした」と木下さん。ちょっぴりノスタルジックな駅前通りを散策すると、かつてのにぎわいが想像できた。

 (宇都宮支局 伊沢利幸)

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 あらすじ 黒田原にあるカフェにて謎の手紙を見つけたクロロ。記載されてる文字は「那須駒文字」といい、黒田原地域の農耕馬にしか分からない。手紙は先祖からクロロに向けたものだった。そして、クロロは思い立ったように黒田原を立ち去る。クロロが失踪したことをゆめなが知り、町中を探すが、クロロは見つからない。だが、謎の手紙を解読できる人が見つかる。手紙には、クロロの先祖は県南の小麦農家で働いていたことが記載されていた。電撃ネットワークのギュウゾウさんも出演。木下愛貴さんが監督、編集、撮影を担当。

 アクセス JR東北線で宇都宮駅から62キロ、約1時間10分。東北自動車道那須インターチェンジから9キロ、車で約15分。栃木県那須町寺子丙2。


黒田原駅かぁ。

おふくろの実家から近いんだよなぁ。