アジア映画巡礼

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暑さを忘れる夏の中華ファンタジー<その1>『モンスター・ハント』

2016-07-23 | 中国語圏映画

先日ちょこっとご紹介した、「2016夏の香港・中国エンターテインメント映画まつり」の3本の作品。試写も見せていただいたので、じっくりと順番にご紹介していきましょう。まずは、赤丸大推薦の『モンスター・ハント』から。

 

『モンスター・ハント』  公式サイト   劇場サイ


2015年/中国/北京語/117分/原題:捉妖記/英題:Monster Hunt
 監督:ラマン・ホイ(許誠毅)
 主演:バイ・バイホー(白百何)、ジン・ポーラン(井柏然)、エリック・ツァン(曾志偉)、タン・ウェイ(湯唯)、サンドラ・ン(呉君如)、チァン・ウー(姜[文武])、ウォレス・チョン(鍾漢良)

配給:ツイン

8月6日(土) シネマート新宿、シネマート心斎橋にてロードショー!

コピーライトがとっても長いので、最初に書いておいて、個々のスチールに付けるのは省略します。

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お話は妖界、つまり妖怪の王国から始まります。王様が亡くなり、その妊娠中だった妃は新王の手から逃れるため、2人の忠臣に守られながら王国を脱出。彼らは人間界に逃げたのですが、追っ手が迫り、妃と忠臣は離ればなれになります。その人間界、永寧村には、村長の天蔭/テンイン(ジン・ポーラン)や村人たちが平和に暮らしていました。テンインは、村の女たちに命じられて洗濯をしたり、繕い物をしたりするやさしい青年。祖母(金燕玲/エレイン・ジン)と二人暮らしで、茶店も営んでいました。


その茶店にやって来た金持ちの男女(エリック・ツァン、サンドラ・ン)、実は妖で、その二人を追って女性妖怪ハンターの小嵐/ショウラン(バイ・バイホー)が姿を現し、やがて妃も逃げ込んできます。さらには、凄腕妖怪ハンター羅鋼(チァン・ウー)も来るやらで大騒ぎに。そんな中、追っ手に追いつめられた妃は、お腹の中の子供をテンインの体内へと移し替えて息絶えます。突然妊婦ならぬ妊夫になったテンイン。大商人率いる妖狩りたちに村も焼かれてしまったので、テンインはショウランと旅に出ますが、途中の宿屋で産気づき、珠のような男の子ならぬ大根のような妖の王子を産み落とします。その子をフーバと名付け、二人はさらに旅を続けますが....。


以前、こちらこちらでちょっとご紹介した『モンスター・ハント』は、ストーリーを書くのがもどかしいほど、見せ場が多くて内容が盛りだくさんです。上で挙げたキャラ以外にも、妖を買い取る麻雀好きの質屋の女将(タン・ウェイ)や、妖を捉えてグルメの宴で提供しようとする悪徳大商人(ウォレス・チョン)が出てくるは、宿屋で一緒になるちょっと調子の外れたお金持ちの奥様(閆妮/イェン・ニー)や、妖の料理が得意な女シェフ( 姚晨/ヤオ・チェン)まで登場するはで、豪華な面子でチョー賑やか。これにCGで作られた妖たちが加わるのですから、見終わるとものすごく得した気分になります。ストーリーも友情や親子の情愛も盛り込んで破綻なくまとめてあり、様々な小技が隠し味に入っていて、とても楽しめる作品に仕上がっています。


人物キャラとして楽しいのはテンインとショウランですが、登場するやいなや観客の目を釘付けにするのは、妖の王子ウーバ。上の写真で、ショウランとETタッチをしているのがウーバですが、大根そっくりでしょ? セリフはなく、「キャハハハ」と笑ったりする程度なのに、そのかわいいしぐさと、とんでもない破壊的パワーが見る人を惹きつけて放しません。このかわいいキャラ、ぬいぐるみも出たそうで宣伝の方が送って下さったヴィジュアルにはそれも入っていたのですが、私的には納得できない仕上がり(笑)なのでご紹介するのはやめておきます。まずは、大画面でこの大根坊やをとくとご覧になってみて下さいね。


ところで、妖たちは妖語をしゃべるのですが、日本語字幕では妖語は< >書きになっていて、外国語扱いです。また、妖たちは歌も歌うのですが、その場合は妖語はカタカナ書きになっているという、字幕もとてもよく考えられていて楽しいものになっています。中でも印象に残るのが忠臣2人が歌う「♫ミーグーバー」で始まる歌。でも、YouTubeを見たら公式画像がアップされていなかったので、別の歌になりますがこちらを付けておきます。

[電影MV]《捉妖記》--愛底線(張繼聰)

それから、この映画、意外な見どころもあります。それは、フェミニズム。冒頭の村のシーンで、テンインは洗濯や繕い物をしている、と書きましたが、テンインを助けて彼の親友も一緒にそういった家事をやっています。男女の役割が逆転している村のほか、その後も料理が上手なテンインと、武術に長けたショウランの組み合わせ、さらにはテンインが妊娠してしまうという展開など、ジェンダーを逆手に取った面白い描写が続きます。最後の方では少し腰砕けになってしまうのが残念(まあ、テンインも活躍しなくちゃね~)ですが、このフェミニズム描写、小技としてなかなか楽しませてくれました。


監督のラマン・ホイ(Raman Hui)は1963年香港生まれで、香港理工学院卒業後1988年にカナダに移住(そうそう、88年は香港で移民ブームが起きたのでした)。その後アニメーターとして活躍し、『シュレック3』(2007)を共同監督として作り上げた人だそうです。さすが、CGのクリエーションなどうまいですね。それと、日本が誇る美術監督、種田陽平さんが美術総監督として本作に関わっているのも、作品のクオリティを高めることに貢献したと言えます。加えて衣裳は奚仲文/イー・チョンマン。ボロボロの衣裳だったりするのですが、上の写真のようによーく見ると凝りに凝ったものなのでした。


そして、バイ・バイホーとジン・ポーランの息の合った演技も、見どころの一つです。バイ・バイホーは今や中国映画界を背負って立つ女優に成長しましたが、『最後の晩餐』(2013)とはまた違ったコミカルな女剣士役は、新たなファンを増やすことでしょう。そして、以前劉徳華/アンディ・ラウとの共演『失孤』(2015)でご紹介したジン・ポーラン(ポラン・ジンと書いちゃってます)は、本作で主役を張れる俳優として認められ、ただ今絶賛活躍中。歌手としての力もあるので、この先が楽しみですね。こんな注目ポイント満載の『モンスター・ハント』。夏休みに見る映画としてはイチオシ、ニオシ、三にオシ、です! 

 


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