アジア映画巡礼

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明日から「中国インディペンデント映画祭2011」

2011-12-02 | 中国映画

今回で3回目となる「中国インディペンデント映画祭」が、明日12月3日(土)から16日(金)まで、ポレポレ東中野で開催されます。

上映作品等、詳細は次の通りです。

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【期間】2011年12月3日(土)~16日(金)
【会場】ポレポレ東中野 HP
【公式サイト】http://cifft.net/

【上映作品】~[ ]内は原題

<劇映画>
『花嫁[新娘]』 (2009) 監督:章明(チャン・ミン)
『冬に生まれて[二冬]』 (2008) 監督:楊瑾(ヤン・ジン)
『歓楽のポエム[尋歓作楽]』 (2010) 監督:趙大勇(チャオ・ダーヨン)
『独身男[光棍兒]』 (2010) 監督:〔赤+オオザト〕杰(ハオ・ジエ)

<アニメーション>
『ピアシング 1[刺痛我]』 (2009) 監督:劉健(リウ・ジェン)

<ドキュメンタリー>
『天から落ちてきた![天降]』 (2009) 監督:張賛波(チャン・ザンボー)
『恋曲(こいうた)[恋曲]』 (2010) 監督:張賛波(チャン・ザンボー)
『占い師[算命]』 (2009) 監督:徐童(シュー・トン)
『ゴーストタウン[廃城]』 (2008) 監督:趙大勇(チャオ・ダーヨン)
『書記[書記]』 (2009) 監督:周浩(チョウ・ハオ)

【お問い合わせ】
中国インディペンデント映画祭実行委員会(中山)
Email info@cifft.net
ポレポレ東中野 TEL:03-3371-0088  FAX:03-3362-0083

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今年は、劇映画、ドキュメンタリー映画に加えてアニメーションまで上映されます。詳しいストーリー等は公式サイトを見ていただければと思いますが、さらにこの映画祭の成り立ちや、中国インディペンデント映画の現状を知りたい方はこちらへ。雑誌「映画芸術」が、この映画祭を始めた中山大樹さんに詳しいインタビューを敢行してくれています。

中山さんの分析はさすがで、「検閲を通す映画は撮るつもりが無い、はなから自分はインディペンデントでやっていくんだと決めている監督は多いです。ただ、反権力的なアプローチは、やっぱり本人たちにとってリスキーなわけです。インディペンデント映画は、あえてそういうリスクを冒しても映画を撮りたいっていう監督の意志が強く反映されています。」と、インディペンデント映画の基準は一応”検閲にかけるか、かけないか”にあるとしておきながら、「でも必ずしもそういう監督だけじゃない」と別の動きも紹介しています。

インディペンデント映画の定義は、「大手映画会社から資金提供を受けないで、自分たちで資金を集めて製作された映画」といったものから、国によっては「検閲を通さない(通らない)映画」といったものまでかなり幅がありますが、我々中国映画ファンが中国インディペンデント映画の存在を意識したのは、やはり賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督の『一瞬の夢[小武]』 (1997)あたりからではないかと思われます。その前に張元(チャン・ユェン)の『北京バスターズ[北京雑種]』 (1993)などにも接していたのですが、劇映画として衝撃的だったのは『一瞬の夢』でした。

『一瞬の夢』はジャ・ジャンクーの出身地山西省汾陽を舞台にした、ケチなスリの若者小武(シャオ・ウー)の物語です。主演は、その後の作品『プラットホーム[站台]』 (2000)でも主役を務め、ジャ・ジャンクー映画の常連となる王宏偉(ワン・ホンウェイ)。実は、ジャ・ジャンクーがワン・ホンウェイを主演に、『小山回家』 (1995)という短編を撮っていたことを、『一瞬の夢』のシナリオを収録した本(上の写真。中国盲文出版社、2003)で知りました。それで監督と俳優の息がピッタリと合い、あんなに真に迫った主人公をスクリーンに登場させることができたのですね。

上は、本の付録に付いていたフランス版ポスター(左)と香港版ポスターです。ワン・ホンウェイの存在感、というか、存在感のなさはすごいもので、閉塞感溢れる地方の町で、住人のしけた懐を狙う根暗なスリの兄ちゃん、という人物像が真に迫っていました。カラオケ・ホステスのお姉さんに惚れる所だけほのかに華やかさが漂う以外は、全編沈んだトーンの世界で、最後に警官につかまって道端に手錠で繋がれるシーンに到るまでみじめさのオンパレード。なのに、見る者に迫ってくる何かを持っている。こんな映画よく作ったなあ、よく作れたなあ、というのが見た当時の感想でした。

そのワン・ホンウェイが、「中国インディペンデント映画祭」の関連イベントに顔を見せます。「日吉電影節2011」という催しで、慶應大学日吉校舎で12月7日(水)の開催です。詳しくはこちらをどうぞ。講演会のゲストは、『沈む町』 (1996)や今回の上映作品『花嫁』の章明(チャン・ミン)監督、ワン・ホンウェイ氏、そして中山大樹氏という豪華メンバーです。さて、どんなお話が飛び出すでしょうね。

なお、中国インディペンデント映画に関しては、オックスフォードから「中国独立電影」という本も出ています。2007年の出版です。

賈樟柯(ジャ・ジャンクー)始め、『安陽の赤ちゃん[安陽嬰兒]』 (2001)の王超(ワン・チャオ)、『盲井』(2003)の李揚(リー・ヤン)、『ブッダ・マウンテン』 (2010)の女性監督李玉(リー・ユー)、章明(チャン・ミン)、日本でもおなじみの婁〔火華〕(ロウ・イエ)、『海鮮』 (2001)や『雲の南へ[雲的南方]』 (2003)の朱文(ジュー・ウェン)、『静かなるマニ石[静静的嘛〔口尼〕石]』 (2005)の萬瑪才旦(ワンマツェタン)、『好多大米』 (2007)の李紅旗(リー・ホンチー)、『ワイルドサイドを歩け[頼小子]』 (2006)の韓杰(ハン・ジェ)という10人の監督がインタビューに答えているもので、インディペンデント映画をめぐるいろんな状況を知ることができます。最後に、『孔雀 わが家の風景[孔雀]』 (2005)、『世界[世界]』 (2004)、『長江哀歌(エレジー)[三峡好人]』 (2006)についての、対談方式の評論も収録されています。顧長衛(クー・チャンウェイ)監督の『孔雀』も、インディペンデント映画と分類されているのですね。

インディペンデント映画は作品自体も興味深いのですが、その後商業映画に進出して大化けしたりする監督がいるので、先物買い気分で見られるという楽しさもあります。東京フィルメックスで上映された第1作『香火』 (2003)から『モンゴリアン・ピンポン』 (2004)を経て、『クレイジー・ストーン~翡翠狂想曲~[瘋狂的石頭]』 (2006)で大化けした寧浩(ニン・ハオ)監督のような才能が今回の映画祭でも潜んでいるかも。寒い時期ですが、東中野通いをしてみて下さいね。

 


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