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アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

続・Netflixで映画漬けの1日

2024-07-29 | インド映画

本日もある作品を見つけたばっかりに、ほぼNetflixにかじりつくことになってしまいました。その見つけた作品とは、ヒンディー語映画に一応なっていますが、パンジャービー語の歌詞がわんさか出てくる映画『Amar Singh Chamkila(アマル・シン・チャムキーラー)』(2024)です。実在の歌手であるアマル・シン・チャムキーラーの伝記映画と言って良く、1988年3月8日に銃撃により27歳で亡くなったパンジャーブ男の生涯を辿ったものです。主演が昨日もチラとご紹介した、パンジャービー語映画とヒンディー語映画で活躍しているディルジート・ドーサーンジで、歌の相方を務めているうちに妻となったアマルジョート・カウルを、パリニーティ・チョープラーが演じています。彼女は昨年、パンジャーブ州が地元の若手国会議員と結婚したので、これが彼女の引退記念作品となるようです。そして、監督は何と、イムティアーズ・アリー。ちょっと驚きましたが、ジャールカンド州出身の彼は、こういうローカルテイストも描けるんだ、と見直した次第です。

『Amar Singh Chamkila(アマル・シン・チャムキーラー)』
 2024年/ヒンディー語/146分
 監督:イムティアーズ・アリー
 主演:ディルジート・ドーサーンジ、パリニーティ・チョープラー
 インド公開日:2024年4月8日

インドの各地には、土着のポピュラーソングとでもいうべき歌が存在しているのですが、パンジャーブ州ではかなりきわどい歌詞の恋歌とでも言うような、男女掛け合いの歌が人気でした。シク教徒の低いカースト(Wikiにはダリトと言及されている)に生まれたアマル・シン(ディルジート・ドーサーンジ)は、自分もいろいろ歌詞を作ってみていたのですが、歌うスキルもチャンスもなく、もんもんとしながら靴下製造工場で働いていました。そんな時、ある音楽プロダクションを見つけ、そこから彼の歌手としての人生が開けていきます。男性歌手の代役で歌ったアマル・シンの声と歌詞は人々を魅了し、やがて「チャムキーラー(光り輝く男)」という異名まで付いて、彼は有名になっていきます。しかし相方の女性歌手が一定しないため、いつも公演ができるとは限らず、アマル・シンの相方捜しはずっと続いていました。ある時、家族に連れられてやってきたアマルジョートという女性歌手は、本が好きな堅物でしたが、歌わせてみるときわどい歌詞もなんなく歌い、やがて二人は名コンビとして引っ張りだこになります。性的なことをあからさまに歌う歌詞は、一部の人々には「下品だ」「神に背く」と非難されますが、アマル・シンは聴衆が喜ぶことこそ歌の価値、と思って、呼ばれればどこへでも、海外にでも公演に行っていました。ところが、殺害予告などが舞い込むようになり、シク教徒の聖職者たちからは「卑猥な歌はやめろ。やめないとどうなっても知らんぞ」と脅されるなどし、アマル・シンはどうすればいいのかわからなくなります...。

画面にローマナイズ歌詞が出てくるうえ、日本語字幕も付いていたので、きわどい歌詞もよくわかったのですが、ボージプリー語のポピュラーソングがやはり似たような歌詞ではあるものの、もっと性行為そのものに言及したような過激な歌詞が多く、びっくりしました。これを青空のもと舞台で歌い、客席では男女の観衆が聞いている、というのも、おおらかすぎるというか何と言うか...。単なる鬱憤晴らしの歌なのか、相聞歌のような役割も果たしているのか、どの位置に当てはめたらいいのかわからない歌ですが、二人の歌は迫力があり、パンジャービー語のリズミカルな歌詞が耳に心地よいことは確かです。映画はアマル・シン・チャムキーラーの生涯を忠実に辿っていると思われ、時々本物の写真(上写真右)も挿入されます。映画評論家の評価も高かったのですが、公開後4日でNetflixでの配信が始まるという気の毒な公開でした。パンジャーブの話だし、セリフはヒンディー語でも歌はパンジャービー語なので、パンジャーブ州以外ではヒットはしない、と判断されたのでしょうか。「イムティアーズ・アリー監督、復活の1作!」と評した評論家もいただけに、ちょっと気の毒ですね。予告編を付けておきます。

Amar Singh Chamkila | Official Trailer | Imtiaz Ali, A.R. Rahman, Diljit Dosanjh, Parineeti Chopra

 

もう1本は、日本でも先日英語字幕上映が一部地域で行われたタミル語映画『Maharaja(マハーラージャ)』(2024)です。Netflixでは日本語字幕はないのですが、タミル語以外にヒンディー語、テルグ語などが選択できるので、ヒンディー語版を見てみました。

『Maharaja(マハーラージャー)』
 2024年/タミル語/141分
 監督:ニティラン・スワーミーナーダン(音引き不確かです)
 主演:ヴィジャイ・セードゥパティ/アヌラーグ・カシャップ
 インド公開日:2024年6月14日
 興収:10億7千万ルピー

これは、クライム・サスペンス映画なので、できれば予備知識なしで見ていただいた方がいいと思います。というわけで、ストーリーは少しだけ。理容師のマハーラージャ(ヴィジャイ・セードゥパティ)は寡黙な男です。彼は自宅の向かいにあるおもちゃ屋で、幼い娘ジョーティのおもちゃを買おうとして、道を隔てた妻におもちゃを示し、どれがいいか決めてもらおうとしていました。ところがその最中、大きなトラックが自宅に突っ込み、妻は帰らぬ人に。幼いジョーティはトラック衝突のショックで金属の大型ゴミ缶がすっぽり被さり、そのお陰で怪我もなく無事でした。以後、マハーラージャとジョーティは、そのゴミ缶を「ラクシュミー」と名付け、大切にしていました。16歳のジョーティがスポーツの長期合宿で、先生や友人たちと出かけたその夜、マハーラージャの家に泥棒が入ります。マハーラージャは翌日警察に行き、「ラクシュミー」が盗まれた、と訴えて警官の注意を引きますが、それがゴミ缶だとわかるとみんな相手にしてくれなくなります。仕方なく、ある警官の言うことを聞いて大枚のワイロを贈り、マハーラージャは「ラクシュミー」を探してもらおうとしますが....。

途中物語は14年前の2009年に立ち戻り、そもそもの因縁が明らかになるのですが、人の顔をよく覚えていないとパッとストーリーがつかめず、ちょっと苦戦してしまう作品です。でも、苦戦を乗り越えて私はかなり夢中になって見てしまい、途中でかかってきたお仕事の電話にあわてて出たものの、頭の中はヴィジャイ・セードゥパティとアヌラーグ・カシャップがグルグルしていて、2,3分間やり取りがとんちんかんになってしまいました(T様、ごめんなさい!)。インド公開で問題になったシーンはここであろう、という確認もできましたが、『バーフバリ』以来、残酷なあの手法が市民権を得てしまったようで、日本の時代小説じゃないんだから、といつも思ってしまいます。研ぎ澄ました長刀だからできることで、青竜刀みたいな、しかも赤さびついてそうなその刀じゃ無理ですって。それにしても、「マハーラージャ」という姓はあるのでしょうか? 途中のギャグ「あ、違った、イライヤラージャだった」を使いたいがために、この設定にしたのでは、と疑っている私です。予告編をどうぞ。

Maharaja | Hindi Trailer | Vijay Sethupathi, Anurag Kashyap, Mamta Mohandas

 

あとこれは、少し前に見たドラマですが、ラーナー・ダッグバーティとヴェンカテーシュの甥&叔父コンビ、それと『連れ去り児(ご)』のアビシェーク・バネルジーが加わったドラマ『ムンバイ・フィクサー(Rana Naidu)』(2023)も面白かったです。ヴェンカテーシュのムショ帰りの父親と、スタント教室をやっている長男(スシャント・シン)、ムンバイ映画界のフィクサーである次男(ラーナー・ダッグバーティ)、幼い頃宗教家の性的餌食になったため、精神に異常を来している三男(アビシェーク・バネルジー)をめぐるストーリーで、一家がテルグ語映画界からムンバイに移ってきた、という設定も興味深く、おまけにいいところを持って行くのはやはり大スターのヴェンカテーシュ、という作りもなるほどなあ、と納得で、思わずラストで大笑い。それから、毎回結構過激なベッドシーンがあるのも、配信だからのサービスというか客引き要素だというのもよくわかり、昔の日活ロマンポルノの脚本家を思い出したりしました(本番3回入れる、とかの不文律があったとかなかったとか)。こちらも予告編を付けておきます。

Rana Naidu | Official Trailer | Rana Daggubati, Venkatesh Daggubati, Surveen Chawla | Netflix India

 

また仕事漬けなので、当分Netflixはお預けですが、JAIHOの『ジャナタ・ガレージ』(2016)だけは何としても見なくては。皆さんはもうご覧になったでしょうか? 日本語字幕がきちんと付いているって、ほんとにありがたいですね。


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2 コメント

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その節はお世話に (N.Atagi)
2024-10-25 16:16:16
ご無沙汰しております。10月にもなってのコメントすみません。(今年は私生活がバタバタしていてブログをあまり拝見していませんでした。)「ムンバイ・フィクサー」ご覧いただいたとのこと、とてもうれしいです。本作では名前表記についてご助言いただき大変助かりました。ありがとうございました。よろしければ同配信サービスの「諜報」もぜひに。こちらも字幕を担当させていただきました。
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N.Atagi様 (Cinetama)
2024-10-25 22:33:36
お忙しいのに、コメントをありがとうございました。

『ムンバイ・フィクサー』の字幕、全然引っかからずに拝見できたので、お上手な証拠だと思います。
見ているといつも、「えー、そこで”きみ”を使うかなー。10世紀の歴史劇でしょ」と思ったり、「ありゃ、なんで”ら”抜き?」とか、文句ばかりたれている私なのですが、最近のネトフリの字幕はほとんど文句なし、です。
字幕会社さんが結構厳しくチェックなさるのでしょうか?
配信なので翻訳料がそんなにお高くないのでは、と思いますが、『諜報』も後日拝見します(今は映画祭シーズンでNetflixは一時お休みです)ので、これからもがんばって下さいね!
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