このたび、慶應大学東アジア研究所から、「南アジアの文化と社会を読み解く」(鈴木正崇編、2000円+税)という本が出ました。昨年同研究所の主催で行われた、15回の連続講演会をまとめたもので、ものすごく充実した内容になっています。
南アジアの文化と社会を読み解く (東アジア研究所講座) | |
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慶應義塾大学東アジア研究所 |
内容の詳細は次の通り。
<目次>
まえがき 南アジアの文化と社会を読み解く 鈴木 正崇
インド 祈りの造形―かたちから意味を読み解く 小西 正捷
1 儀礼的床絵の世界
2 豊饒の文様
3 ブロト儀礼と呪詞のチョラ
4 床絵の広がり
5 床絵と壁画
6 民俗画から民族画へ
7 絵語りの世界
民衆ヒンドゥー教とは何か
―インド・ラージャスターン州メーワール地方の事例を中心に 三尾 稔
1 民衆ヒンドゥー教の世界
2 現世利益を求める簡素な実践
3 触知可能な神への信仰
4 教義の壁を乗り越える
5 民衆ヒンドゥー教と現代インド社会
インドの聖地と環境問題―聖地バナーラスにおける生活と信仰をめぐって 宮本 久義
1 はじめに
2 精神文化の源泉としての水
3 ヒンドゥー教における水の特性
4 中宇宙たる聖地バナーラス
5 ガンジス川の汚染と浄化プロジェクト
6 おわりに―現代社会にインド精神文化の投げかける意味
北インドの結婚式の変化―チャイからコーラへ 八木 祐子
1 スレンダルの結婚
2 ジャイマール婚
3 モバイル時代の結婚
インド映画一〇〇年の魅力―世界最多製作国の輝きと変遷 松岡 環
1 はじめに
2 インド映画の特徴
3 インド映画の一〇〇年
4 経済発展による変化
5 インド映画と社会―結びに代えて
インド音楽の世界―楽器に見る人々の「こだわり」 田中多佳子
1 はじめに
2 インド音楽の基礎知識
3 インドの楽器をめぐって
4 インドの楽器概観
5 ミラジュ・ターンプーラーはなぜ良いのか
6 楽器を通して見たインド音楽の今日
7 おわりに―楽器に見るインドの人々の音楽へのこだわり
インド文化の多様性と統一性―『ラーマーヤナ』とカレー料理を例として 辛島 昇
1 はじめに
2 『ラーマーヤナ』をめぐって―多様な物語の発展と歴史的意味
3 カレー文化論―カレーとミルクによるインド料理の形成
4 おわりに
南インドのカーストとジェンダー―ケーララにおける母系制の変容を中心に 粟屋 利江
1 はじめに
2 ケーララという地域
3 ケーララにおけるカースト構成と母系制概要
4 母系制の変容と解体
5 むすびにかえて
インドの移民・聖性の移動・環境変化―聖なる水、ガンガー・ジャルをめぐって 重松 伸司
1 はじめに
2 インド移民史概観
3 商品化された「ホーリー・ウォーター」ガンガー・ジャル
4 在外インド人とガンガー・ジャル
5 神聖大河、ガンガー
6 汚染大河、ガンガー
7 ガンガーの浄化運動
8 ガンガーはどう変わったか、どう変わるのか
9 おわりに―魂とモノとの調和を目指して
ヨーガの要諦とヨーガのグローバル化をめぐって 山下 博司
1 ヴェーダの「祈る宗教」とヨーガの「瞑想する宗教」―インド宗教の二大要素
2 『ヨーガ・スートラ』のアシュターンガ・ヨーガ
3 真(プル)我(シャ)の独存―古典的ヨーガが窮極的に目指すもの
4 後期ヨーガ(ハタヨーガ)の展開
5 ハタヨーガと一元論思想
6 ヨーガと苦行―似て非なるもの
7 ヨーガの氾濫とグローバリゼーション
8 シンガポールのヨーガ―伝統と創意の現場から
9 ヨーガの将来に向けて―結びにかえて
パキスタンにおけるムスリムのNGO―ハムダルドの理念と活動 子島 進
1 はじめに
2 ムスリムの価値観
3 善行の制度化
4 ハムダルドの始まり
5 ハムダルド財団(パキスタン)
6 学園都市
7 成果と展望
ベンガルのバウルの世界
―フォキル・ラロン・シャハにおける多元的な宗教世界と身体の修行 外川 昌彦
1 バングラデシュの世界遺産
2 ベンガルのバウル
3 バウルの導師・ラロン・フォキル
4 南アジアの口頭伝承の世界
5 身体の宇宙論
6 インド密教とバウル
7 スーフィズムとラロン
8 宗教の多元性を体現するラロン
9 ラロンが残したもの
スリランカの民族問題とNGO活動 澁谷 利雄
1 はじめに
2 仏教とシンハラ・ナショナリズム
3 和平への動きと内戦再燃
4 津波災害と復興活動
5 おわりに
「仏教王国ブータン」のゆくえ―民主化の中の選挙と仏教僧 宮本 万里
1 はじめに―僧侶の統べる国から、王の統べる国へ
2 国籍法からみる「ブータン人」の境界の変遷
3 文化政策と環境政策の接合
4 民主化プロセスとしての選挙とその概要
5 選挙にみる「ブータン市民」の境界
6 ブータン社会における仏教界の位置づけ
7 おわりに―仏教王国ブータンのゆくえ
流動するネパール、あふれるカトマンドゥ盆地 石井 溥
1 はじめに
2 ネパールの地理、言語、歴史、人々
3 近年の変化
4 おわりに
執筆者紹介
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先日国王夫妻が来日したブータンについて、また、東京フィルメックスでスリランカ映画『フライング・フィッシュ』を見た方はその背景について、そしてインド映画や音楽、はたまたヨーガについても、これ1冊で詳しく知ることができるというスグレモノの本です。これで、税共2100円は安い!
えー、目次のコピペだけでは愛想がないので、インド映画のページに使われている写真を何枚か、カラーで付けておきます。使用された写真そのものではなく、別ヴァージョンです。
ムンバイの映画館エロス
ハイダラーバード郊外にあるラモージー・フィルムシティ
チェンナイの街角を飾る映画看板
では、この1冊で南アジア全域を多角的に知って下さいね~。