アジア映画巡礼

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『劇場版 再会長江』の描くもの

2024-04-22 | 中国映画

先日ご紹介した『劇場版 再会長江』をシネマート新宿のスクリーン1で見てきました。うっかりしていたのですが、私はこの映画をシネスコ版だと思い込み、何が何でもシネマート新宿のスクリーン1で見なくては! と駆けつけたものの、いざ上映が始まってみると、スクリーンの両端が空いています。あれれ? そうか、手持ちカメラで撮ったドキュメンタリーだから、シネスコ版ってことはないよねー、と自分の愚かさを反省したのですが、ここのスクリーン1は11年前に『きっと、うまくいく』を見て、ラストのラダックの風景に涙したことが印象に残っているため、偉大な自然の景観を観るならここ、と思い込んでしまったのでした。でも、多分他の劇場さんより、雄大な景色を楽しめたと思います。美しい画像を宣伝担当の方からいろいろいただいたので、それを使いながらご紹介して行きましょう。

<長江の源流の地、チベット高原>

©2024『劇場版 再会長江』/ワノユメ

『劇場版 再会長江』 公式サイト
 2024年/中国/112分
 監督:竹内亮
 ナレーション:小島瑠璃子
 プロデューサー:趙萍、張楠 
 助監督:王可可 
 撮影:徐亮 
 編集:蘇煥
 製作:ワノユメ 
 配給:KADOKAWA 

<長江中流域の要所である重慶>

©2024『劇場版 再会長江』/ワノユメ

 【あらすじ】(プレスより)
中国の母なる大河・長江。上海、南京、武漢、重慶、雲南、チベット高原まで、広大な中国大陸を横断する、全長6300キロのアジア最大の大河だ。日本人監督の竹内亮(下写真)は、10年前にNHKの番組で長江を撮った時、一つの後悔があった。それは北極・南極に次ぐ地球第三の極地と呼ばれるチベット高原にある「長江源流の最初の一滴」を撮れなかった事。
あれから10年、日本から中国南京市に移住し、「長江沿いの民」の一人になった竹内は、2021年から2年かけて再び長江6300キロを走破する。旅の途中で10年前に撮影した友人たちと再会しながら、一本の大河を通して中国の10年の変化を見つめ、今度こそ「最初の一滴」をカメラに収めるべく、長江源流をめざす。

©2024『劇場版 再会長江』/ワノユメ

長江は、海に注ぐ上海あたりでは揚子江と呼ばれるので、当初日本では、北にある黄河、南にある揚子江と覚えている人が多かったと思います。でも、正式な名前は長江で、多分さだまさしがドキュメンタリー映画『長江』(1981)を撮ったあたりから、日本でも長江という表記が多くなってきた気がします。同時期に話題になったのが、長江に作られる巨大なダム「三峡ダム」のことで、治水のためには必要とはわかっていても、多くの町や村が水中に没することになり、また「三国志」の遺跡も水没する、というので、諸手を挙げて賛成とはいかない国家プロジェクトに、様々な視線が寄せられました。結局、1990年に着手された三峡ダムは2009年に完成、本作の中でも三峡ダムによる長江の流れや流域の変化が描写されていますが、2011年のNHKの番組はこの完成直後の様子を撮ったのでは、と思われます。

©2024『劇場版 再会長江』/ワノユメ

本作では、船で長江を遡っている時に竹内監督が布の帽子を船外に飛ばしてしまい、船を戻してそれを回収できたことからダムの恩恵を知る、という面白いシーンがあり、なるほどなあ、と思いました。その一方で、ダムができた後の様々な流域の変化が描かれ、恩恵とはとても言えない風景が各地で登場します。姿を消した中学校、そこで当時出会った女子中学生は今...等々、もし10年前の作品を見ていたら、もっと感動的であったろうと思われるシーンがいくつも登場し、ちょっと取り残された感も味わいました。

©2024『劇場版 再会長江』/ワノユメ

中でも、当時ハイティーンだったチベット人女性ツームーは、夢を叶えた現在の姿を見せてくれ、まさにハッピーエンドの涙の再会を果たします。今回の作品でも、ツームーはわざわざ日本へもプロモーションで来てくれたようで、東京の中国大使館であった上映会では妹と一緒に姿を見せ、会場を沸かせていました。

©2024『劇場版 再会長江』/ワノユメ

その一方で、以前と変わらず長江と格闘している感じがするのが二人の中年、というか初老の男性です。一人は重慶出身の江洪船長、そしてもう一人は重慶の船着き場で荷物運びをしている農村出身の男性蒋培清さん。特に蒋さんは、「バンバン」と呼ばれる労働者として、年を取ってもすごい量の荷物を運び続けています。この10年間の変化が加齢だけ、というのは見ていてもつらく、江船長の話もあまり景気のいいものではなくて、三峡ダムの負の側面を垣間見た思いがしました。

©2024『劇場版 再会長江』/ワノユメ

こんな風に、いろんな要素が混じっているドキュメンタリーなので、あっという間に長江6300㎞も終わってしまいます。少し欲張りすぎの内容とも言え、どちらかというと禁欲的なドキュメンタリーが好きな私は大絶賛とまでは行かなかったのですが、竹内監督のキャラが面白く、中国語も達者で、彼をフィーチャーした旅番組と思えば十二分に楽しめました。本当にフットワークの軽い監督で、人なつっこいところも、10年を経て会った人たちにもすぐに当時の親しい感情を思い出させて、得なキャラクターだなあ、と感心しました。中国人の奥さんと結婚して、現在は中国の南京市在住。これからもその強みを生かして、面白いドキュメンタリー作品を作っていってくれそうです。

©2024『劇場版 再会長江』/ワノユメ

その竹内監督の人柄がよく出ている、YouTube映像を付けておきます。前述の中国大使館であった上映会の映像です。これをご覧になって、あら、面白そうな監督、と思われたら、ぜひ作品をスクリーンでご覧になってみて下さいね。上映劇場、どんどん増えている感じです。

电影《剧场版 再会长江》在中国驻日大使馆举办官方发布会。茨姆也在发布会上现身!

 


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