海流のなかの島々

狭く浅くな趣味のあれこれを
波の彼方から語ります

「THE LAST FIVE YEARS」 @東京グローブ座 9/15,16,17

2007-09-18 20:09:19 | 山本耕史くん
萩尾瞳さんがプログラムのなかで「透明な輝きを放つ小さな宝石のようなミュージカル」と表現しているのはまさに至言。男女の時間軸が交差するという斬新な構成に素晴らしい曲たち。大作ではないけれども佳品。そんなスタイリッシュな舞台を期待していたけれども、初演では演者2人ともがまだまだ青かった。なんとかもう一歩進んだものを、と祈るような気持ちで観た今回の再演は、ジェイミーもキャシーもぐっと大人びて期待していたものを観られたような気がします。

初演と違って衣装替えがあるところが親切設計 キャシーが白いドレスになっているから2人が結婚したということが少しは分かりやすくなった。後半のジェイミーがパリッとしたスーツになるのも「ああ、成功したのね」とひと目で納得できる。衣装って大事だわ~。「The Schmuel Song」で帽子が小道具として使われるのもよかった。初演ではこの曲だけもの凄く私の中では違和感があったんですよね。ジェイミーが自筆の物語を語っているんだとは分かっていてもなかなか頭を切替えられなかった。何回聴いても「藪から棒にシュムールって誰よ?」状態 今回は帽子のおかげで物語っぽさが強調され頭の中にすんなり入ってきました。

歌詞もちょこっとだけ変わってました。でもイマイチな部分も相変わらずちらほら。「次の10分」はなんとかならんか 「Shiksa Goddess」の冒頭が大幅に変わったところに苦労のあとが偲ばれます。ジェイミーはユダヤ教徒で異教徒のキャシーと恋に落ち家族は大激怒、というのを日本人に伝えるのは至難の業ですなぁ。おまけにここは耕史くんが出せるギリギリの低音という感じなのでよけい表現しにくそう。過去のオンナの羅列も分かりにくいよねぇ。

でも好きな訳詞もたくさんあります。「The Next Ten Minutes」の「光る池 空の色 見てるうち 時は行く」なんて照明と相まってとても美しい情景が浮かんできます。一番お気に入りの「If I Didn't Believe In You」も好きな訳詞の宝庫。「僕の成功は君の苦しみなのか」とか胸にチクンとくる。でもこの曲の歌詞はプログラムに載ってないのよね。ひょっとしたらと初演のプログラムも見たけどやっぱりなかった。ちっ。

役者さんについて。

*井手さん
振り付けされた動きがなめらかさに欠ける。動きと歌が一体化していないというか。あと、振り付けのない部分の「突っ立ってます」感も気になる。でもそれを補って余りある説得力のある歌と表情。これだけ歌ってくれればもう大満足です。初演では分かりにくかったキャシーの時間軸がはっきりしてきた。苦労せずに頭の中に右向きの矢印(ジェイミーの時間)と左向きの矢印(キャシーの時間)がパッパッと切り替わる感じ。まあ、初演を観ているからなのかもしれませんけど。その初演ではおしゃれなNYのアパートメントを一瞬にしてサザエさんのお茶の間に替えたホウキと洗濯物も再登場 でも井手さんの迫力の前にはその存在感が縮小され余り気にならないから不思議なもんです。オーディションの「みんな若くて細い」も妙に説得力があったし… 前半の悲しい歌より後半のほうが魅力的。「Climbing Uphill」の「私を見て!魅力的でしょ!」と歌うところは鳥肌が立ちました。全体的な雰囲気がちょっと逞しめの宮沢りえちゃんに似てなくもない。 

*耕史くん
どうせなら全く違う振り付けで観たかった。でもプログラムに「初演での動きを演出家やスタッフと思い出しながらチェック」と書いてあるから再演とはこういうものなんだろうか?山本耕史風な動きも相変わらずあり。でもやり過ぎはしゃぎ過ぎな感じではないからさほど気にならず。歌はやっぱり上手くなりました。安心して聴けます。前半の浮かれジェイミーよりも後半のほうがやはり耕史くんの真骨頂という感じ。静かに歌う中のフォルテが効果的で歌にメリハリがある。井手さんも後半のほうがいいので、エネルギーに満ち溢れたキャシーと疲れ切ったジェイミーの差が大きく、何故この作品が時間軸を交差させたのかという演出的意図がはっきり分かってくる。初演では実年齢的にはジェイミーを演るにはばっちりでしたが、いかんせん顔が幼いので「成功した作家」というにはちょっと足りなかった。子どもっぽすぎて浮気も似合わなかった。今回は少し大人びてきてようやく役柄に合ってきたような気がします。苦手なhighCは出そうで出なさそうでうっふんという感じですね カーテンコールでぐだぐだ喋るのは好きじゃないので今回はシンプルでよかったです。千秋楽での挨拶はお祭りだからOK 
 


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6 コメント

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juneさんへ (ちか)
2007-09-19 21:10:56
いやいや、井手さんとってもよかったです
気になったのも最初だけで、
くるくる変わる表情と歌にどんどん惹きつけられて、
動きもとってもキュートに感じられてきました。
ホントに井手さんでよかったーーー

楽日はジェイミーガン見にしようと思ったけど、
キャシーが「私を見て!」オーラを発してるので、
やっぱりキャシーが歌ってるときは彼女を見てしまった。
大阪でもキラキラ輝いてくれるといいですね
待ち遠しいわん
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Unknown (june)
2007-09-19 17:59:11
初日からはずいぶん進歩した印象だった井手さん
だけど、動きはまだまだですか。
もうワタシはキャシーに関してはハードルが
低すぎて(汗)
ちょっと冷静に見てみないと。

というか、もう井手さんにも慣れちゃって
ジェイミーしか見てないけど(笑)
ほんとに宝石みたいなキラキラした作品。
大阪ではどんなふうに見せてくれるんでしょうか。
楽しみですねー!
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みどりさんへ (ちか)
2007-09-19 15:24:25
私も「The Schmuel Song」のシーン自体は好きだったんですよ。
照明が幻想的だしDVDでリピートする率も高かったんだけど、
全体の流れから見るとなんか唐突な感じがして…
今回はすごく納得できました
今はジェイミーとキャシーのデュエットが頭の中をぐるぐるしてます。
あの抱擁シーンが美しかったなぁ…。
大阪も楽しんできますね
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Unknown (みどり)
2007-09-19 14:21:34
ちかさん!なかなかするどい感想!すばらしい!
ところで、私は初演から。「The Schmuel Song」がお気に入りだったので、今回さらに洗練されたあの歌、あの場面が残っています。あの舞台演出も好きなんですよ。それとラストの曲のキャシーのうれしそうな♪Good-by~がなお一層せつなくて・・・頭から離れません。大阪ではさらに楽しんできてくださいね。
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みもざさんへ (ちか)
2007-09-19 01:08:00
お疲れ様でした
ショッピングにまで誘ってくれてどうも有難う!
私の頭の中でも二人が「The Next Ten Minutes」を歌ってくれてます。
やっぱり幸せなときの曲だからかなぁ
耕史くんの歌もスタイルの良さも堪能できましたね。
舞台の間、口を開けてほけーと見とれている自分に何度か気付きました。
耕史くんがもし見てたらかなりアホ面だったでしょうなぁ
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L5Y (みもざ)
2007-09-18 21:07:07
ちかさ~ん、お疲れ様でした
ご一緒できて、とっても楽しかったです。
今もまだ頭の中ではジェイミーとキャシーが
ずっと歌っています
もうしばらくこの幸せは続きそう
耕史クン、やっぱりサイコーですねっ

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