海流のなかの島々

狭く浅くな趣味のあれこれを
波の彼方から語ります

「おのれナポレオン」 @東京芸術劇場 プレイハウス

2013-04-18 23:56:36 | 山本耕史くん

2公演観てきました。

※ストーリー上のネタバレはありません。

 

 

 かつてSデパートに勤めていて,系列のチケットSを担当していた時期もありました。当時は小劇場ブームの真っ只中。遊◎機械/全自動シアター,MOTHER,新感線,南河内万歳一座…。宮本亜門や少年隊のプレゾンなどミュージカルやメジャーな商業演劇ばかり観ていた私にも,綺羅星の如き劇団の名前だけは次々とインプットされていきました。

そんな中でも別格だったのが野田秀樹率いる「夢の遊眠社」。ネット販売などなかった当時,この劇団のチケット発売日はスタッフみんなピリピリ。早朝から長蛇の列を作る人々をいかにトラブルなく捌いていくかにとても気を遣ったものです。

そんな私が初めて「夢の遊眠社」を観ることに。当時お見合いした相手がここのファンで,チケットを取ってくれたのでした。しかしデートにしてはとんでもない席で,最後列だったか,最後列の後ろに設置した補助席だったか。とにかく一番後ろだったことは覚えてます。つまりは満員御礼の大人気公演だったわけです。

分かりやすい演劇しか観てこなかった私には理解不可能で,どんな話だったのかはさっぱり記憶にない。ただ,腰をずんと落とした不思議な体勢で舞台の端から端まで動きまくっていた野田秀樹だけは強烈に印象に残っています。

なんか思い出話をぐだぐだ書いてますが,何が言いたいかというと,今も昔も野田秀樹はやっぱり凄い!ということ。当時の野田さんは今の耕史くんより若いくらいだから動けて当たり前。だけどアラ還になろうという今,あの動きっぱなし喋りっぱなしの体力には驚愕しました。特に一日の日課をノンストップで見せるところなんてゲラゲラ笑いながらもすげーすげーと心の中で叫んでしまった。あれ,結構大変ですよね。ほんの序盤であれだけ動きまくったらかなり消耗しちゃうんじゃないかと心配になったくらい。

舞台には冷房を入れるとかでステージシートにはブランケットが配られたけど,あの首の詰まった衣装は役者さんにとっては大変そう。うっちーも汗だくだったけど,野田さんも耳のあたりから大粒の汗がボトボトと…。それでも最後まで動き,叫び,笑い,命令し続けていた。どんなに優れた役者でも台詞は台詞として聞こえてしまうけど,野田さんは違う。すべてがアドリブのように自然すぎるほど自然なのだ。

とにかくこの「おのれナポレオン」という作品は,野田秀樹を観るための舞台でしょう。そのために5人の一流の役者を脇に配して一枚岩を作り,その上で野田秀樹を自由に遊ばせる。そんなイメージを強く持ちました。

 

では脚本はどうだったかというと…。最後の最後ギリギリまで,優れた役者による三谷さんらしい台詞劇をゲラゲラワクワク楽しんだのだけど…。

ミステリーの謎解き部分が私には「へ?」でした。三谷さん特有の「おお,そうきたか!」という爽快感もなく,「え?え?これで終わり?」と腰が砕けそうだった。ステージシートだったから何か見落とし聞き逃しがあったかも?ともう一度正面2列目から観ても,若干演出の工夫は感じられたけど,やっぱり「へ?」だった。

ツイッターやブログでは絶賛の嵐が吹き荒れているけど,私,なんか見落としてるんでしょうか?それともとんでもなく鈍感になっちゃったのかしらん?う~む…。狐につままれたような気持ちで劇場を後にすることになっちゃいました。

 

役者さんは本当に鉄板だったなぁ。穴がないってこういうのを言うんだろう。耕史くんのファンになって以来,こんなにストレスのない舞台を観たのは初めてのような気がする。野田さん以外ではやっぱりうっちーの台詞の抑揚に惹きつけられたなぁ。今までトート閣下や「メタルマクベス」と,歌ううっちーしか観たことがなかったので,その台詞術のスキルの高さに今更ながら気づかされました。今井さんはやっぱり声がよく,浅利くんはこの面子に呼ばれるだけあって若くてもしっかりした技術の持ち主だということを確認。ステージシートの私の横を通るたびにいい香りがしていた天海さん。同世代とは思えないほど肘が綺麗(私はシワシワでずず黒い…)。

で,お目当ての耕史くん。身長が今より高すぎても低すぎてもこの役は回ってこなかったかと思うと,そのジャストサイズな身長に乾杯♪ くるくるパーマと青い軍服がとってもお似合い。ナポレオンや側近たちは不自由な生活を表すためか顔も服も薄汚れていて,モントロンが自分の服をポンっと払うたびに白いホコリが舞い上がる。毎回衣装に粉でもはたいているんでしょうか?薄汚れていてもすらっと背筋が伸びて両足をぴったり揃え貴族出身の軍人らしい気品。50代になるとすっかり姿勢はだらしなくなり,身体は常に右か左に傾いて脚も開き気味。アルコールの臭いが漂ってきそう。9才のモンちゃんは激カワ。正面から見てもカワイイが,ステージシートから見た一生懸命ウンウン頷いている後ろ姿も悶絶モノ。そして,立っている時よりもなぜか座っているときの方が脚が長く見える。腰から膝までが異常に長い~。

台詞は一番多いんじゃないでしょうか?ほぼ噛まなかったけど,一度だけ17才時の自分の役職名が言えず「#△◆%★&※」に(笑) 突っ込む野田さんに「もう一回」というふうに指を一本立てて言い直してました。こういうハプニングを見るのも芝居の楽しさ。

とにかく「山本耕史の取り扱い方」を熟知した三谷さんだからこそのモントロン。いい役でした。

 

2回観た直後は「もういいか…」と思ったけど,やっぱり今無性に観たくなってるのは役者の力量のおかげでしょうか。ライブビューングのチケットを取っててよかった。ラストの照明,2階席から観たらチェス盤みたいになってたのかなぁ。それもライブビューイングで確認したいです。

ところで劇中に生演奏される打楽器がアフリカンな感じがしたのは,セントヘレナがアフリカ大陸の沖合に位置するから?今日パンフで確認するまでヨーロッパ大陸の近くにあると思い込んでたから不思議だったけど,あの位置なら納得かも。

 

ちなみに中村獅童ちゃんが観に来てました。「女信長」つながりか?



最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ruka339)
2013-04-19 09:28:02
ちさんおはようございます
「おのれナポレオン」をご覧になられたんですね
何やら山本さん演じるモントロンの17才のセリフを噛まれて
「もう1回」と指を立ておられそうですね(笑)
あと野田さんに突っ込まれたようで(笑)
やはりセリフが多いからなんでしょうね
映画館でのライブビューイングが楽しみです
返信する
rukaさんへ (ちか)
2013-04-19 18:18:59
観てきました!

人名や役職名がややこしくてよく覚えられるなぁと思ってましたが,
一回だけやっちゃいました(笑)
野田さんがなんて突っ込んだかは聞き取れませんでしたが,
うまく切り抜けてましたよ。

ライブビューイング楽しみですね!
でも,それが終わったら寂しくなっちゃうなぁ。
返信する

コメントを投稿