おかあさん 楽しかったね
故人・順江は大正十年十月に富山県で生まれ、
父親の仕事のため直江津で暮らし、結婚をし
て後に高田で三人の子供を育てた女性です。
九十七年は波瀾に富んだものだったけれど、
豊かな人生であったと、生き生きと話してい
ました。
八十歳を過ぎると、突然の病で長女を亡くし
た時は数か月も泣いていました。その数年後
に長男次男を相次ぎ病で失い、残された家族
三人での心細い暮らしが始まりましたが、幸
いなことに息子が結婚して家族が四人となり、
気持ちが華やかになり百歳を目指して頑張る
と、足を鍛えるための散歩を欠かしたことが
ありませんでした。
ただ一つだけ、誰も名前の順江(まさえ)を
正しく読んでくれない。もう「じゅんえ」で
いいと、諦め顔でよく言っていたものです。
ところが九十一歳の時に家を離れ、介護施設
「あいびす」で暮らすようになると。誰から
も「まさえさん まさえさん」と呼んでいた
だき、嬉しそうな笑顔がたくさん咲いていた
ように思います。
今、永遠の別れを迎え、こんなにも心寂しい
ものとは思いませんでした。