かりんとう日記

禁煙支援専門医の私的生活

離婚のススメ

2015年02月17日 | 昼下がりの外来で
偏見かもしれない。
だけど、少なくとも私が接した乳がん患者さんたちは、夫との関係がよろしくない人が多い。


「乳がん術後の方ですが、退院後、喫煙再開の不安があるというので、よろしくお願いします」

主治医からの禁煙外来への紹介状にはそう書いてあった。


しかし実際に患者さんに訊いてみると、「退院した日、自宅に帰る車の中で吸っちゃいました。入院中もイライラして、そのたびに安定剤もらっていました」とのことであった。


なぜもっと早く相談にきてくれなかったのか?
なぜ誰も禁煙治療薬をすすめてあげなかったのか?

二週間という入院期間中にニコチンパッチなどを使っていれば、イライラなどのつらい思いをする必要がなかったし、退院したあとも楽に禁煙が続けられていたはずである。
患者さんにはほんとうに申し訳なかった。


ニコチンパッチを処方して、禁煙再開して1週間。
呼気中の一酸化炭素は正常値であったので、うまく禁煙できているかと思ったら、「吸っちゃってます」とのこと。

『あらら、どうして?』

「夜、イライラして、つい1本吸っちゃうんです」

『なににイライラするの?』

「・・・夫のこととか、子供のこととか、いろいろ・・・」

『で、タバコを吸うと解決するの?』

「いいえ、しません。一時的に逃げているだけです」

『そうよね。タバコはまだ持っているの?』

「旦那からもらいます」

『旦那さんも禁煙治療始めたこと知ってるのよね?何も言わないでタバコくれるの?』

「ニヤニヤしながらくれます」

『それって、どうなのよ?今回の(乳がんを患ったこと)ことにしろ、禁煙のことにしろ、あなたが頑張っているのに、旦那さんは協力してくれてないってこと?』

「そこが問題なんです(泣)」


こういう夫婦関係の話は彼女に限った話ではない。
今まで禁煙外来に相談にきた女性がん患者さんから、夫が協力的であるという話をほとんどきいたことがない。
なかには、「オマエはガンなんだから禁煙するのが当たり前だろ。オレは違うから」と冷たく言い捨てられたという人もいた。

自分の喫煙が発がんに関与した可能性はもちろん高いが、受動喫煙で罹患リスクが高まるのは、比較的遺伝的要素の強い乳がんにおいても決して例外ではないことが研究でわかっている。

ひょっとしたら、パートナーの喫煙が、自分の発がんに関与している可能性もじゅうぶんあるのだ。


『彼はあなたのこと本当に愛してくれているの?旦那にニヤニヤさせておいて、あなたそれで悔しくないの?別に離婚をすすめるわけじゃないけどね』

『あなたはまだまだこれから幸せになれるはずなんだから、ここであきらめちゃダメよ!綺麗になりたくない?』

「なりたいです!」

『だったら、禁煙しなさい。そうすれば絶対綺麗になれるから。綺麗になって、そんな旦那、見返してやりなさい。旦那をビックリさせて、(うちのやつ、誰か他にオトコができたんじゃないかってくらいに)焦らせてやりなさい!』

「わかりました!がんばりますっ」


パートナーの選び方次第で、自分の人生が左右されることは否めない。

付き合っている彼が喫煙者で、彼との結婚を考えているという年下女子には、結婚前に必ず彼に禁煙治療を受けさせなさい、自分が幸せになりたかったら、喫煙者であり続ける彼と結婚するのはあきらめたほうがいいと、いつも力説している。

















コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« カザルスの教え | トップ | 母校にて »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

昼下がりの外来で」カテゴリの最新記事