名探偵コナン「蘭も倒れたバスルーム(前編)」

前回の続きで、お花見スリ事件の二人組が黒の組織だと気付いたあたりから。間にデジタルリマスター版を挟んでいたので久々感。繋がってるんだったらデジタルリマスター版は別のときにやればよかったのに…と思ってしまう。

世良さん登場。探偵のお仕事だそうですが、依頼内容そんなにペラペラしゃべっちゃうなんてダメなんじゃないの…と思ってたらコナンも突っ込んでた(笑)。信用してるからなんだろうけど、だからといって安易にしゃべっちゃうのは問題だと思うんだ。探偵としての意識はまだ低いのかな。

蘭の潜入捜査。やっぱり慣れてないので不自然だな。声が上擦ってるし、どもってるし、全然さりげなくない(笑)。まあ、世良さんよりは蘭の方が色目使われる可能性は高そうな気がするけども。でも当初は世良さんがその役目をするつもりだったんだよね? だったらもうちょっと女の子っぽい格好をしてくるべきなんじゃ…。彼の好みにもよるけど、彼女さんを見る限りはボーイッシュな子がタイプというわけではなさそうだし。

蘭がバスルームで倒れたのはクロロホルムのせいでした。蘭のあとから来た留海まで倒れて、30分後に来た摂津さんたちも倒れはしないけど匂いがして頭が痛そうな感じ。すごい威力ですね。蘭のときはだいぶ濃度が高くてやばかったんじゃ…。

半年以上前に忘れてきたものが、そのまま置きっぱなしになっているとはとても思えないんだけど。リビングのどこかは知らないけども、半年も気が付かないってことはない気がする。置き忘れてきたってことはややこしいところにしまいこんだわけじゃないだろうし。気が付けば、返すつもりでも、そのつもりがなくても、どこかに片付けるはずだよねぇ。

サークルの一年の女の子は何か関係あるのかなぁ? やけに具体的に話が出てきたけども…。

世良さん、留海さんに雇われた探偵ってばらしちゃったよ。調査対象者に。さすがにそれはまずいんじゃないのかね。依頼内容を言わなくても訝しく思われるのは間違いないだろうし。留海さん問い詰められたりするんじゃないかな。浮気調査されてたなんて知ったら、俺のことを信じてなかったのか、ってなりそうな。留海のアリバイ証明に必要だったとしても、刑事にだけこっそり伝えるとかやりようはあったのでは…。

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らくがき・アンジェリカ

アンジェリカ。
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「東京ラビリンス」番外編・保護者の仮面の下で

「澪に、ハンググライダーを使えるようになってもらおうと思う」
 悠人が書斎を訪れると、執務机で待ち構えていた剛三にいきなりそう告げられた。澪と遥に怪盗ファントムをさせるという話になったときから、いずれ必要になるだろうと思っていたので驚きはしない。ただ、遥と一緒ではなく澪だけというのは少し意外に感じた。
「例の山小屋を手配すればよろしいですか?」
「ああ。ただしコーチは雇わない。おまえが教えるのだ」
「承知しました」
 例の山小屋とは橘が所有しているコテージのひとつで、悠人と大地が中高生のころ、趣味でハンググライダーの練習をするために使っていたところだ。当時はその度ごとにコーチを雇っていたが、今回は怪盗ファントムのために習得するのだから、部外者に協力を仰ぐのはできるだけ控えるべきだろう。
「期限は三日間。意味はわかっておるだろうな?」
「はい、どうにか三日で仕上げてみせます」
「そっちは言うまでもないが、もうひとつあるだろう」
 そう言われても悠人には思い当たることがない。少し難しい顔になって考えを巡らせていると、剛三が執務机でゆったりと両手を組み合わせ、意味ありげな微笑を浮かべながら言葉を継いだ。
「三日間、澪と二人きりだ。昼も夜もな」
 予想もしなかった発言に、悠人はその場に立ちつくしたまま無表情で硬直する。額にはうっすらと汗が滲んできた。剛三が何を思ってこんなことを口にしたのか判然とせず、しかしそれを尋ねる勇気もなく、喉が渇いて張りつくのを感じながらただ呆然とする。
「私はおまえを後継者にしたいと考えておる」
「……それは……その、だからといって」
「澪を好いておるのだから何も問題あるまい」
 事も無げに言われて絶句した。澪に好意を寄せているなど誰にも言ったことはない。そういう素振りも見せないようにしてきたつもりだ。なのに、なぜ――。
「気付いていないとでも思っておったか」
「…………」
「澪もおまえを好いておるのだろう?」
「……だといいのですが」
 もはやごまかしはきかないと思い、否定を諦める。
 澪には彼女が小学生のときに告白されたことがあり、そのときは断ったものの、今でも好かれていることは間違いないと思う。ただ、自分が彼女に向ける好意とは少し違っているはずだ。彼女の方はまだ恋愛感情にまで至っていないような気がする。
「このお膳立てをどう使うかはおまえに任せる。私としては、多少強引な手を使っても良いと思うがな」
 悠人はわずかに眉を寄せる。澪の結婚相手として認められたことはありがたいが、彼女の気持ちを蔑ろにしたお節介にはとても喜べない。
「ご自分の孫をもっと大事にしてください」
「おまえなら澪を不幸にはせんだろう」
 当然のようにそう言うと、悠人を見つめて意味ありげにニヤリと口もとを上げる。
「今度は遠慮する理由はなかろう?」
 今度は、というのはいったいどういう意味なのだろう。何を知っているというのだろう。美咲のことか、あるいは大地のことか――どちらにしても誰にも言ったことはないはずなのに。どくどくと心臓が暴れているのを感じる。しかし、下手に尋ねれば藪蛇になるのは目に見えているので、その部分についてだけは聞き流すことに決めた。
「……年齢が、若すぎます」
「もう結婚できる年齢だ」
 どうにか平静を取り繕って言い返したものの、呆気なく論破された。実際に十六で結婚した美咲が身近にいるので、剛三の言い分には無駄に説得力がある。返す言葉を見つけられずグッと奥歯を噛みしめる。
「……楽しんでいませんか?」
「楽しいに決まっているだろう」
 剛三は意味ありげな笑みを浮かべながら、悪びれもせずにそう答えた。

「わぁー! 空気が澄んでて気持ちいーっ!!」
 澪は見晴らしのいい高台で思いきり両手を挙げて伸び上がり、感嘆の声を上げた。そのまま大きく息を吸い込み目を閉じる。早朝の冷えた新鮮な空気を存分に味わっているのだろう。悠人は後ろから見守りながらふっと頬を緩ませる。
「遊びに来たんじゃないからね」
「ハンググライダー、頑張ります」
 彼女は長いポニーテールをぴょこんと弾ませて振り返り、右手で敬礼のポーズをとりながらそう言うと、ニコッと屈託のない笑みを浮かべた。

 悠人は剛三に命じられてすぐに諸々の準備を整え、予定どおり澪をこの山に連れてきた。
 もちろん彼女にハンググライダーを習得させることが目的である。ただまっすぐ飛べればいいというわけではなく、怪盗ファントムの仕事で使う以上、必然的に基本から外れる飛び方もしなければならない。それを三日で習得するというのだから、あまりのんびりしている余裕はないのだ。
 コテージに荷物を置き、さっそくハンググライダーの特訓に取りかかる。構造や仕組み、組立方法、操作方法など、基本的なことは来る前に教え込んでおいたので、ごく簡単にそれらの復習をしてから実習を始める。
 もともと運動神経は良く、必要な筋力も体力もついていたので問題はないと思っていた。しかし、その上達ぶりは予想をはるかに上回るものだった。この一日でほぼ自在に操ることができるようになっている。アクロバティックな操縦も教えてすぐにこなし、強い突風にも冷静に対応し、下手に墜落するようなことは一度もなかった。
 あとの二日で夜でも安定して飛べるよう訓練しよう。
 茜色に染まった空をゆっくりと旋回する白いハンググライダーを見ながら、悠人は脳内で計画を練り直した。

 今日は早朝からほぼずっと訓練をしていたのでさすがに疲れただろうと思い、日が落ちる前にコテージに引き上げた。夜の飛行訓練はあした行う予定である。今のところ順調すぎるくらい順調なので、明日の朝までのんびりと心置きなく休めそうだ。
「お風呂に入ってさっぱりしておいで。その間にごはんを作るから」
「はいっ」
 澪は素直に返事をすると、部屋に荷物を置いて足取り軽く浴室に向かっていく。あれほど長時間の訓練をしていながら、いたって普段どおりであまり疲れた様子はない。若さゆえか、と最近疲れやすくなった自覚のある悠人は少し羨ましく思った。

 今日の夕食はカレーライスとサラダの予定だ。
 料理は得意というわけではないが、学生のころからときどき自分で作っているので、今でも凝ったものでなければ普通に作れる。ただ、まわりに何の店もないところで失敗するわけにはいかないので、あえて無難すぎるくらい無難なメニューを選んだのである。
 野菜と肉を切り、炒め、煮込んでいく。
 やがて食欲をそそるスパイシーな匂いが立ちのぼってきたころ、浴室の方から悠人を呼ぶ声が聞こえてきた。ちょうど外したところだったエプロンを椅子の背もたれに掛け、扉の方へ足を進めながら聞き返す。
「呼んだ? どうかしたの?」
「バスタオルがないんですけど」
「棚の中に入ってない?」
「棚って……どれですか?」
 コテージの準備は人任せにしていたので、バスタオルがどこにあるかまでは確認していなかった。悠人も探してみないとわからない。コンコンとノックして「入るよ」と声を掛ける。中から「あっ、はい」と少し戸惑ったような声が返ってきた。
「…………?!」
 少し待ってから扉を開けると、澪が湯を滴らせながら全裸でバスマットの上に立っていた。どこも隠すことなく、まったくの無防備で。てっきり磨りガラスの向こうの浴室内に避難しているか、最低でも着ていた服を前にあてがうなどしているかと思った。なのに――あまりのことに動揺して頭が真っ白になったが、それでもどうにか短時間で気持ちを立て直し、当たり前のような顔をして中に入りバスタオルを探す。
 手当たり次第に扉を開けて確認していくと、上の戸棚に積んであるのを見つけた。澪が背伸びをして届くかどうかのところだ。そのバスタオルの一枚を取って澪に手渡す。
「ありがとうございます」
「ちゃんと確認しておくべきだったね。ごめんね」
「入る前に確認しなかった私もいけなかったです」
 澪はエヘッと笑い、そのふかふかのバスタオルをぱふっと口もとに押し当てた。

 悠人は表情を消したままひとりダイニングに戻ってくると、崩れるように椅子に座り込み、盛大に息をつきながら木製のテーブルに両手を投げ出して突っ伏した。
 脳裏には、先ほど目にした澪の裸体が焼き付いている。
 高校に上がるまでは、朝練後などに遥も含めて三人で風呂に入ることは少なくなかった。ほんの一年半ほど前までの話だ。それゆえ澪の裸など今さらといえば今さらであり、おそらく彼女の方にもそういう気持ちがあったので、隠すことなく立っていたのだろう。
 だが、悠人としてはもう何年も前から耐えていた。澪を一人の女性として意識するようになり、それでも「師匠」「保護者」として接しなければならず、鉄壁の理性を身につけざるを得なかった。先ほどは油断していたせいか、不意打ちで本能を直撃されてしまった感じだ。どうにか衝動を抑えた自分自身を褒めてやりたい。
 突っ伏したまま、脳裏に焼き付いた彼女の姿に思いを馳せる。
 澪の肌は相変わらず白くなめらかでとてもきれいだった。湯船につかっていたせいか、体はところどころほんのりと桜色に染まり、頬は上気して薔薇色になっていた。胸は最後に見たときより幾分か成長している。先日、服を作るためにサイズを測ったのでわかってはいたが、生で見てそれを実感した。大きいとはいえないが張りがあって形もよく、その先端は瑞々しく色づいており、いかにも美味しそうでむしゃぶりつきたくなる。下の毛はいまだに生えていないようだが、逆にそれが卑猥に見えた。
「…………」
 悠人は唇を引き結んで椅子から立ち上がり、お手洗いに向かった。

 澪が戻ってくると、二人で夕食のカレーライスとサラダを食べた。彼女がおいしいと言って食べてくれるので少し安堵する。お世辞なのか本心なのかはわからないが、自分でもそれなりにおいしいと思うので、彼女も無理をしているわけではないだろう。
 食事の後片付けを終え、悠人も風呂に入り、あとは寝るだけとなった。普段であれば寝るにはまだ早い時間だが、疲れもあるし、今日は早めに休んだ方がいいだろう。そう澪に言ったら――。
「師匠、一緒に寝ません?」
 彼女は満面の笑みでとんでもないことを提案してきた。
 小学生のころは一緒に寝ることも度々あったが、今はもう高校生である。いったい君はどれだけ僕の理性を試すつもりなんだ、と内心で嘆きながらも、冷静な態度を崩すことなく言い含めようとする。
「澪、もう子供じゃないんだから……」
「せっかく二人きりなんですし、山ごもりの間くらいはいいじゃないですか。最近、ちょっとさみしく思ってたんですよ? 昔ほど師匠と一緒にいる時間がなくなったな、って……だから、今日は一緒に来られてすごく嬉しかったんです。遥が一緒じゃないのは残念だけど、でも師匠のことを独り占めできるなぁ、って少しだけ思っちゃった」
 澪ははエヘッといたずらっぽく笑う。
 勘違いしそうになるが、彼女に他意がないことは十分すぎるほどわかっている。だからこそつらい。
「やっぱり、ダメですか?」
「……ここにいる間だけだよ」
 漆黒の瞳でじっと見つめながら小首を傾げられ、断り切ることが出来なかった。結局のところ彼女には甘い。魅力的な誘いに心が揺れたというのもあるかもしれない。素知らぬ顔で耐えることがどれだけ大変かわかっていても――。

 豆電球のみを灯した部屋で、悠人は澪と並んでベッドに横になる。
 一人で寝るには広すぎるくらいだが、二人だとそうでもなく、ほとんど距離をとることはできない。ときどき腕が触れ合うくらいの近さだ。彼女の体温をほんのりと感じていると、先ほどの裸体が思い浮かび不埒なことを妄想しそうになるが、意味もなく天井を凝視して必死にその思考を振り払う。一人のときならともかく、この状況では非常にまずい。
「昔を思い出しますね」
「ああ……」
「嬉しいです」
 こちらに顔を向けてニコッと笑うのを横目で見ながら、悠人も薄く微笑んでみせた。
 しんと静まりかえってからしばらくのち、すぅ、と規則正しい安らかな寝息が聞こえてきた。再び横目を流すと、そこには子供のようなあどけない寝顔があった。寝付きがいいのは昔から変わっていないようだ。
 悠人は体を起こし、そっと手をついて真上から彼女の顔を覗き込んだ。それでもまったく目を覚ます気配はない。引き寄せられるようにゆっくりと顔を近づけていく。ほのかにあたたかい寝息が悠人の唇をかすめた。少し逡巡して――彼女の柔らかな頬に触れるだけの口づけを落とした。

「以上です」
 三日間の山ごもりを終えて戻ると、悠人は一息つく間もなく剛三に報告を求められた。当初の予定以上に自在に操れるようになったので、怪盗ファントムの仕事で使用しても問題ないだろう。それが悠人の最終的な結論である。剛三も報告を聞いて満足げに頷いていた。
「ご苦労だった」
「いえ」
「もうひとつの方はどうだ?」
 剛三はそう言って口もとに笑みをのせる。当然、澪との関係を訊いているのだろう。
「進展はあったのか?」
「……いえ、何も」
「ほう」
 剛三の瞳に好奇の光が宿った。答えるのを少しためらった悠人を見て、あらぬ誤解をしているのかもしれない。本当に何もなかったのに。強いて言えば、ますます澪を女性として意識するようになったくらいだ。しかし――。
「澪は私のことを微塵も男性と意識していません。まずはそこからかと」
「やる気にはなったのだな。まあ頑張れ」
 剛三は執務机の上で両手を組み合わせ、ニヤニヤしながら言う。
 もしかすると、悠人に火をつけるのも彼の思惑のひとつだったのかもしれない。いいように操られているようで悔しくは思うが、危機感を煽られて悠長に構えていられなくなった。もともと高校卒業まではただの保護者でいようと思っていたが、あまりにも男性として意識されていない現実を目の当たりにし、今のうちに意識してもらうよう仕向けた方がいいかもしれない、と考えをあらためざるを得ない。
 だからといって、いきなり直球で迫っても怖がらせてしまうだけだろう。彼女は精神的には実年齢よりもずっと幼いように感じる。彼女の成長に合わせて気持ちを育てていかなければならない。そして、いつしか二人の気持ちが重なったときには――。
 剛三の前だということも忘れ、悠人は妄想に耽ったまま薄く笑みを浮かべた。


…これまでのお話は「東京ラビリンス」でご覧ください。

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らくがき・七海

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らくがき・ユールベル

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らくがき・アンジェリカ

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らくがき・レイチェル

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名探偵コナン「別れのワイン殺人事件」

デジタルリマスター版。アバンの追加はいいんだけど、オープニングは当時のまま流してほしいなぁと思ったり。まあ今さらですが。もうこのパターンがすっかり定着してしまったようだし。

娘さんに友人だとか紹介されてたけど、眠りの小五郎と気付かれなかったあたり、まだそんなに有名ではなかったのかな。気付かれてたら計画をやめた可能性はありますし。

親も親なら娘も娘という感じ。遺伝ですかね。ずっとこんな殺伐とした雰囲気だったんでしょうか。雰囲気だけならまだしも、実際にお金のために殺そうとしてしまうんだもんな。父親もそれを知ったうえで利用しようとするし。

最後は信じていた主治医に裏切られて亡くなったと。まあ、他にもひどい目に遭って恨んでいる人はたくさんいそうですよね。あくどいことをしてきたとか小五郎も言っていたし。

あれで100万もらえたら万々歳だと思うの。一日であっさり解決ですしね。そもそも小五郎はほとんど何にもしてないしな(笑)。

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らくがき・ユールベル

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らくがき・澪

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らくがき・澪

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らくがき・レイチェル

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「東京ラビリンス」番外編・ボーダーライン - きっかけ

 この春、山田は有栖川学園の中等部に入学した。
 有栖川学園は初等部、中等部、高等部、大学とそろっており、中等部の八割ほどは初等部からの内部進学である。山田は二割の方で、公立の小学校から受験で入学した外部生だった。初めのうちは内部進学生にいじめられるのではないかと身構えていたが、二週間ほど過ごして杞憂だとわかった。嫌みたらしく云う人がいないわけではない。だが、大半は区別なく普通に受け入れてくれていた。
 さっそく気になる女子もできた。
 席が隣になった橘澪だ。橘財閥の令嬢だと聞いているが、そうとは思えないくらい親しみやすい。いつも彼女の方から笑顔で挨拶をしてくれるし、山田が外部生だからか何かと気に掛けてくれているし、わからないことを聞けば親切に教えてくれる。明るく、優しく、快活で、そのうえルックスはアイドル並み――そんな子が自分に笑いかけてくれるのだから、気にならない方がおかしいだろう。ちなみに彼女の双子の兄も同じクラスだが、そちらの方は近寄りがたい雰囲気で、まだ一度も言葉を交わしたことはない。

「山田君、ずっと気になってたことがあるんだけどね」
 掃除の時間が終わって席へ戻ろうとしていた山田に、澪が横から声を掛けてきた。
「ん?」
「いつもネクタイ緩んでるけど、わざとなの?」
「ああ、これ……別にわざとじゃないけど」
 彼女に言われるまで緩んでいる自覚もなかった。ネクタイを締めるのにまだ慣れていないので、上手くできていないことが多いのかもしれない。触ってみると、確かに結び目の上が少し空いているように感じる。けれど、これくらい別に気にするほどのことでもないだろう。
 そう考えていると、不意にほっそりとした白い手が首もとに伸びてきた。
「えっ……?」
「じっとしててね」
 彼女はそう言い、山田の緩んだネクタイを直していく。
 意図的ではないのだろうが細い指先が何度も首回りに触れ、鼻先にいる彼女からほのかに甘い匂いがふわりと漂う――突然のことに思考が真っ白になり、山田は硬直して為すがままになっていた。
「できた!」
 彼女はパッと両手を離し、ぴょんと一歩下がって確認する。
「うん、やっぱりちゃんと結んである方がかっこいいよ」
「あ、ああ……これからそうする……」
 うろたえながらも、どうにか声を震わせないように答えた。語尾が小さく消え入ってしまったが、特に不審には思われていないようだ。彼女は長い黒髪をさらりと揺らしつつ、満面の笑みで頷いていた。

 もしかしたら――。
 ホームルーム中、横目で隣席の彼女をそっと見つめながら思う。彼女も自分に気があるのかもしれないと。何となくそうではないかと思っていたが、先ほどのネクタイの一件で確信に近いものを感じた。好きな男子以外にこんなことをするはずがない。
 彼女の方から、告白してくれるだろうか?
 告白をされたことはあるが自分からしたことはなく、どうすればいいのかよくわからない。照れくさいというのもある。何より、彼女の方から好きだと言ってほしい。しばらく逡巡して、やはり彼女が告白してくれるのを待つことに決めた。

 一週間が過ぎても、彼女からの告白はなかった。
 だんだん距離が縮まっている実感はあるが、決定的な言葉はない。両想いなら早く付き合って、堂々と手を繋いだり、抱きしめたり、デートしたり、キスしたりしたいのに。妄想ばかりが広がっていく。しかし――。
「山田君、日誌お願いしていい? わたし黒板消すから」
「わかった」
 悶々とした日々も今日で終わりかもしれない。放課後、日直のため彼女と二人きりになったのだ。こんな絶好の機会を逃すわけにはいかないだろう。どうにか彼女に告白してもらえるようにしたいと思う。
 そわそわしながら日誌を書いていく。
 彼女は黒板を消したあと、黒板消しをクリーナーにかけていた。豪快な駆動音が教室中に響いている。しばらくすると、彼女はチョークの粉を吸い込んだのか急に咳き込んだ。山田は慌てて駆けつけ、後ろからクリーナーのスイッチを切って声を掛ける。
「代わるよ」
「ん、大丈夫……」
 彼女はそう言ったが、山田はやはり代わろうと黒板消しに手を伸ばした。彼女の手から抜き取ろうとするが上手くいかず、少し前屈みになると、まるで後ろから抱き込んでいるような格好になった。振り向いた彼女と至近距離で目が合い息をのむ。少し潤んだ瞳がまるで誘っているように見え、思わず――引き寄せられるように軽く唇を重ねた。
 一瞬、彼女は何が起こったかわかっていないようだった。しかし、再び山田と目が合うとカッと一気に真っ赤になり――。
「キャーーーッ!!!」
 耳をつんざくような金切り声を上げて、山田を突き飛ばす。
 あの細腕のどこに、と思うほどの非常識な馬鹿力だった。いくつもの机をなぎ倒しながら体が吹っ飛んでいく。気付けば、机や椅子と絡まるように倒れていた。あちこち打ちつけたのか全身がズキズキする。そして――。
「いっ……!」
 立ち上がろうと右腕をつくと鋭い激痛が走った。何がどうなったのかわからないが、ちょっとぶつけたという感じの痛みではない。立つこともできず、脂汗を滲ませて低い声で呻きながら悶える。
「わ……私、先生呼んでくる!」
 澪は青ざめておろおろと狼狽えていたが、やがてそう言い置くと、長い黒髪をなびかせながら走っていった。

 担任の先生に連れて行かれた病院で診てもらうと、右腕を骨折していた。
 処置が終わり待合室の長椅子に澪と並んで座っている。が、二人の間はもうひとり座れそうなくらい離れていた。互いに目を合わせようともしない。澪がどう思っているのかはわからないが、山田はひたすら気まずさを感じていた。
 何があったのか担任に聞かれるが、山田にはとてもあんなことを答える勇気はない。澪も恥ずかしさゆえか口を閉ざしている。ただ、自分が突き飛ばしたということだけは、担任を呼びに行ったときに告げていたようだ。それだけわかれば十分ではないかと思うが、担任はあくまでもその原因をしつこく追及してきた。
「圭吾!」
 不意によく知った声が聞こえてビクリとする。
 振り向くと、母親が心配そうな顔をしながら小走りでこちらに向かってきていた。担任に軽く一礼してから山田の前でしゃがみ、白い三角巾で吊されたギプスの腕をまじまじと見つめる。
「全治一ヶ月だって?」
「医者はそう言ってた」
 山田はぶっきらぼうに答える。隣で、澪が膝にのせたこぶしを強く握りしめるのが見えた。黒髪が横顔を覆い隠しているため表情はわからないが、心なしか肩もこぶしも震えているような気がする。母親もちらりと彼女を見たが、困惑したような微妙な面持ちになるだけで、どうすべきか考えあぐねているようだった。
「橘の保護者です」
 ふと向かいからそんな声が聞こえて顔を上げると、長身の男性が立っていた。保護者といっても父親ではない。両親に代わりその役割を引き受けている人のようだ。入学式のときに澪がそんなことを言っていた覚えがある。あたふたと立ち上がって会釈した山田の母親に、彼は深々と頭を下げた。
「申し訳ありませんでした。治療費はすべてこちらで持たせていただきます」
「いえ、お気になさらないでください。子供どうしの喧嘩でしょうし……」
 母親も事情を知らないので戸惑っているようだ。それを察してか、彼は長椅子に座っている山田と澪に視線を巡らせると、その正面へまわり目線の高さを合わせるように腰を屈めた。
「二人とも、何があったのか話してくれないか?」
 真面目だが威圧的ではない声音でそう尋ねてくる。当然ながら、彼女の保護者になどなおさら言えるはずもなく、山田はきまり悪さを感じながらふいと目を逸らす。彼女も口をつぐんだまま反対側に目を逸らしていた。
「何を聞いてもこうなんですよ」
 担任が途方に暮れたように溜息をついて言う。
 保護者の男性は表情を変えることなく体を起こした。そして、うつむいたままの澪を見下ろして手を差し出す。
「澪、ちょっとおいで」
 彼女はおずおずと顔を上げた。わずかに濡れた漆黒の瞳が不安げに揺らいでいる。しかしながら決意を固めたようにこくりと頷くと、差し出された手を取り腰を上げ、彼に手を引かれるまま廊下の奥へ消えていった。

 数分ほどして、保護者の男性がひとりで戻ってきた。
 その表情は先ほどまでとあまり変わっていなかったが、何か張りつめた空気を纏っているように感じられた。おまけに体の横では固くこぶしが握られている。おそらく、もう澪からすべて――。
「話を聞いてきました」
 感情を押し殺したような声がそう告げた。
 山田はビクリと肩を震わせると、背中を丸めてうつむき顔をこわばらせる。額には大粒の汗が浮かんできた。今すぐ逃げ出したい衝動に駆られるが、逃げたところでどうにもならないし、そもそも逃がしてくれるはずがない。次第に血の気が引いていくのがわかった。
「澪が言うには――放課後、一緒に日直の仕事をしているときに、彼に不意打ちでキスをされて、驚いて思わず突き飛ばしてしまった、ということらしいのですが」
 全部、知られてしまった。バラされてしまった――。
 山田は青ざめた。それでも彼がどんな表情をしているのか気になり、うつむけていた顔をおそるおそる上げていく。そこには凍てつくような鋭い視線があった。殺される、と本能的に身の危険を感じてしまうほどの。目を逸らしてもなお凄まじい怒気が伝わってきた。
「ちょっとあんた本当なの?!」
 狼狽した母親に胸ぐらを引っ掴んで詰問される。山田はだらだらと大量の汗を流しながら、何も答えず逃げるように顔をそむけた。しかし、そのわかりやすい態度は認めたも同然といえる。
「このバカッ! なんてことを!!」
 母親は山田を怒鳴りつけてバシッと頭を叩いた。そして、乱暴に押さえつけて頭を下げさせると、そのまま彼女自身も深く腰を折って許しを請う。
「本当に、本当に申し訳ありませんでしたっ!!」
「…………」
 澪は橘財閥の令嬢だ。彼女がどう思っているのかはわからないが、保護者がひどく怒っていることは伝わってくる。とても許してもらえるとは思えないくらいに。だとすれば、自分は、家族は、いったいどんな報いを受けるのだろうか。そう考えると急に怖くなってきた。
 沈黙が続く。一向に彼からの返事はない。だが――。
「あの……もういいです……」
 ふいに遠くから弱々しい声が聞こえてきた。振り向くと、澪が少し離れたところで所在なさげに立ち、おずおずと遠慮がちにこちらを覗っていた。
「私も怪我させちゃったし、お互いさまってことで……ねっ?」
 そう言って小首を傾げると、緊迫した空気をやわらげるように微笑んでみせる。ぎこちなくもひたむきに。保護者の男性は息をのんで複雑な表情を浮かべた。

 その後、大人たちで話し合いがなされ、大事になることなく決着した。
 山田の治療費はすべて橘が負担してくれるという。母親はこちらに原因があるのでと断ろうとしたが、橘の方がどうしても引かなかったらしい。ただし、今日の出来事は決して口外しないようにと念を押された。山田を怪我させたことより、山田にキスされたことを知られたくないのだろう。できればなかったことにしたいとでも思ってそうな感じだ。
 澪自身は、どう思っているのだろう――。
 結局、その後も彼女と二人で話をすることはできなかった。気まずさゆえか、保護者の命令か、澪はずっと山田から距離をおいていたのだ。やがて、保護者に肩を抱かれて病院をあとにする彼女を無言で見送る。山田は言葉にならないもやもやした思いを胸に燻らせたまま、わずかに眉を寄せた。


…これまでのお話は「東京ラビリンス」でご覧ください。

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