地獄とは何であるか

マキシム・プイサン神父「地獄（第二の死と云われる永遠の滅び）」『煉獄と地獄』岸和田天主会教会、1925年

１５、地獄とは何であるか？

・地獄に関する誤解及び想像

　まず第一に、多くの人に地獄に関する真の理解をさまたぐる所の誤解と想像を除去せねばならぬ。地獄は決して無学な者たちが想像するところのようなものではない。

・地獄の罰は永遠無窮であること

　地獄の罰は第一に天主と全く離れることで、一度地獄に落ちた者はもはや永久的に天主から離れるのである。これは聖書に記るされた天主の御言葉によるのである。聖マテオは「右に居る者は天国に入らん」との聖一言葉の後につけ加えて「かくて左に居る者にも亦云わん、呪われたろ者よ、我を離れて悪魔とその使いらの為にそなえられたろ永遠の火に入れ」（マテオニ十五’四十一）と申しておる。

　これによってみればまず地獄の罰は二種類で一脈は天主と全く離れることで第二種は永遠に火の苦しみを受ける事である。天主を失うと云うことについて、我々がこの世では一向に苦痛を感ぜぬが、これはつまり我々がその事をよくわからない為にその重大性を知ることが出来ないのである。我々はこの世に於ては、只肉体の快楽及び利益のためにのみ、心を奪われて居るから、罪科に依って天主に背むき天主を失うことはどれ程重大なことであるかよくわからないのである。

　我々がこの世に於ておぼれて居った真理を死に依って明に見る事が出来るようになった時又は、この世に居る間、いろいろの誘惑を受けた金、銀、宝を離れて全く赤裸々の身となり、霊魂がその造主なる唯一の天主......霊魂のために残っている唯一の財産・・・...の前に出た時、霊魂は絶大の希望にかられて、幸福の唯一の源泉である天主の方へ躍進し、始めて天主が霊魂のために、そのすべてであり、唯一の真の財産であり、又その絶対的幸福霊魂を引付ける無限の美であることがわかり、霊魂はあらん限りの力を以って天主に接近一するものである。罪科に依って天主を失い天主を仰ぎ見ることの出来なくなることは実に恐ろしく又取返しのつかぬ不幸である。即ち絶えず、天主を得たいという切なる渇きに苦しめられて、遂に永遠に幸福を得る事が出来ないのである。霊魂は天主と無限の慈愛に引きつけられるからぜひとも天主を得なければならぬと思うのである鋲絶えず天主のつ出しみ深きお勤めに背き遂に改心せず、痛悔せず、この世を去ったのである。よって天主の愛は最後まで、不幸な霊魂に対して止むを得ず正義をもってその霊魂を捨てるのである。

「呪われたる者よ、我をはなれて......」と云う宣告が下されるのである。実にこれくらい恐ろしいことはないのである。



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