CASA 地球温暖化の国際交渉

地球温暖化に関する国際会議の開催期間中、現地から参加レポートをお届けします。

通信3-3  第3回特別作業部会(AWG) 第1日目午後のセッション

2007年05月16日 | SB26通信
午後のセッションではA、B、Cの順で以下の発表がありました。
A エネルギー効率と低炭素エネルギー
・ Mr. R.Baron(IEA)「エネルギー効率と環境政策」
・ 本部和彦氏(経済産業省大臣官房審議官)「削減可能性の評価に関する日本の視点」
・ Mr. Hugi Olafsson(アイスランド))「低炭素社会に向けて」

B. 二酸化炭素以外からの排出と森林などからの吸収源
・ Mr Harry Clark (ニュージーランド).「酪農業部門の削減可能性について」
・ Mr.Louis Verchot (ICRAF)「農業からの削減可能性について」
・ Mr. Thomas Kolly (スイス) 「将来の気候変動枠組み」

C. 部門別アプローチの整理
・ Ms. Nicole Wilke (EU).「EUの排出量取引について」
・ IPCC

日本の報告「削減可能性の評価に関する日本の視点」

特別作業部会での日本の報告の要点は以下の通りです。
・ 日本の歴史的な省エネの努力
-過去30年でGDP辺りの原単位は37%改善
・ 新・国家エネルギー戦略での排出削減の中期的目標
-エネルギー効率を30年までに30%改善
-運輸部門の石油依存を30年までに80%減らす
-原子力発電の割合を30年以降30-40%に維持
・ ボトムアップと部門別のアプローチ
-経団連の自主行動計画で削減実施
-アジア太平洋パートナーシップでセクター別の技術移転を実行する予定
・ 長期的な研究と開発への投資
・ 期待される技術(省エネ、原子力、新エネルギーなど)
・ 地球規模での削減可能性の評価
-鉄鋼産業には多くの削減可能性がある
-炭素集約的な製品が貿易でやりとりされている
-貿易のやりとりで排出の漏れ(リーケージ)を防ぐためには地球規模での削減評価が必要
結論:
・ (鉄鋼、セメントなど)排出の多い部門と技術に基づいて地球規模で排出削減可能性を評価する必要がある
・ 専門家の視点が重要。エネルギー専門家を含めたタスクフォースを作ることをひとつのオプションとしてあげる
・ 透明かつ共通して使える削減可能性の評価方法が必要である

残念ながら、日本の報告は国ごとの総量排出削減の議論が抜け落ちていました。鉄鋼やセメントなどの部門別の削減可能性と、部門別の評価方法に議論を移しています。今の状態では、今年の12月にインドネシアのバリで開催されるCOP13までに日本を含めた先進国の削減について議論を進めようとする意思は見えません。

報告を受けて行われた質疑応答からいくつか取り上げます。
Q. 日本はエネルギー効率を2030年までに30%改善すると言っているが、どの部門で削減するのか?また、それでどれくらいの温室効果ガスが削減されるのか?(中国)
A. どの部門でどれくらい削減するかということについては、正直なところ分からない。これから詳細を議論するところ(日本)
Q. 地球規模での削減可能性をさぐるというのはどういうことか?(南アフリカ)
A. この10年で経済、排出量も大きく変わった。将来の約束は、地球規模の視点から議論されるべきだ。企業が排出上限のない途上国に出ていって排出量が結果として地球規模で増加することがないように、セクター別アプローチが重要地球規模で削減を探るというのは、例えば日本から中国への技術移転などを通して削減していく必要があるということ。また、アジア太平洋パートナーシップは、技術移転を進められるよい仕組みだ(日本)
Q. 炭素市場は革新的な技術開発にどの程度役立つと考えるか?炭素市場は低い費用でできる技術に手を伸ばすだけ。技術開発予算が増えないと、炭素市場の運営にどのような悪影響が生じるか(日本)
A. 技術への研究と開発の公的投資は確かに1980年レベルから半減した。しかし、民間投資は数字に含まれていない。エネルギー部門の民営化が進んだといえ、この公的投資の減少は埋め合わされていない。長期的には大変懸念される。炭素市場は、技術を広めるのには役立つが、技術の研究と開発には公的資金の投入が大事で長期的戦略が必要。しかし、既に商業化されている技術を広めるのには、炭素市場が大事。(IPCC)
Q. EUの排出量取引について、①航空輸送からの排出などについて、EU域外の事業者についてどのように扱われるのか?②EU排出量取引と他の排出量取引はつなげる基準はどういうものか?(韓国)
A. 飛行機からの排出については、EUから出発する便について排出量取引でカバーしようと考えている。また、他の排出量取引制度とのリンクは、モニタリングの条件、遵守のしくみ、義務的な排出上限が課されていることなど、EUの制度とマッチするものでなければならない(EU)
Q. 自発的な(ボランタリー)対策について、IPCCはあまり削減効果がなかったということであるが、低炭素社会を実現するにはもっと規制的措置が必要ということと理解してよいか?(バヌアツ)
A. 自発的な取組みは、ほとんどの国でうまくいっていない。または、実際に削減されたかどうかということが明確ではない。ただ、日本とオランダでは例外があった。しかし、基本的には排出量取引制度や税といったものが真剣に考えられる必要がある。

上記の議論の後で、議長は今日議論で出てきた点を12項目にまとめ、この項目を土台に明日、さらに議論がなされることになりました。

通信2-3 第3回特別作業部会 2日目

今日は午後18時から20時まで特別作業部会が開催されました。



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