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「天狗の中国四方山話」

”中国の今”~中国に関する耳寄りな話~

No.1590 ★★ エヌビディア、中国向け次期AI半導体は「Hopperにあらず」とCEO表明、Blackwell投入へ 米規制下の中国戦略に重大な岐路、国産化の流れは一層加速も

2025年05月30日 | 日記
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「天狗の中国四方山話」

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JBpress  (小久保 重信:LLPパートナー)
2025年.5月29日



台北で開催された見本市で記者の質問に答えるエヌビディアのジェンスン・フアンCEO(5月21日、写真:ロイター/アフロ)

 半導体大手の米エヌビディア(NVIDIA)の中国向けAI半導体戦略が、重大な岐路に立たされている。

 同社のジェンスン・フアンCEO(最高経営責任者)は2025年5月17日、中国市場向けに性能を調整して提供した「H20」チップの後継となる次期製品について、「Hopper(ホッパー)アーキテクチャーをベースにしたものではない」とする意向を初めて明らかにした(英ロイター通信)。

  この発言に続き、ロイター通信は5月24日、エヌビディアが中国市場向けに、H20よりも大幅に安価な新しいAIチップセットを投入し、早ければ6月にも量産を開始する計画だと報じた。

 H20は、2022年に導入されたHopperアーキテクチャーに基づくチップ。
 これに対し、中国向け新チップは最新世代の「Blackwell(ブラックウェル)」アーキテクチャーを採用し、価格は6500~8000ドル(約90万~120万円)程度になる見込み。

 これは、H20の価格帯である1万~1万2000ドル(約150万~170万円)を大きく下回る。

フアンCEO「これ以上の修正は不可能」、次世代中国向けは新設計Blackwellへ

 5月17日、台湾の民視新聞網(Formosa TV News network)がライブストリームを報じた。

 その中でフアンCEOは、中国市場向け次期チップに関する質問に対し、「それはHopperではない。Hopperをこれ以上修正(modify)することは不可能だからだ」と明言した。

 この発言は、エヌビディアがこれまで取ってきた戦略からの大きな転換を示唆する。

 同社は近年、米政府の規制に対応するため、Hopperシリーズの性能を抑制してきた経緯があるからだ。

  H20は高性能な「H100」をベースに、米国の輸出規制に抵触しないよう性能を落とした中国市場向けの製品だ。

 しかし、このH20に対しても米政府が規制を課したことで、エヌビディアの対応はより困難になっていた。

 フアンCEOの発言は、Hopperアーキテクチャー枠内での性能調整では、もはや中国市場のニーズと米規制の双方を満たすことが限界に達したという認識を示すものとなった。

  そして、5月24日のロイター報道によって、次期中国向け製品の具体的な姿が見えてきた。

 それはBlackwellアーキテクチャーを採用した新しいGPU(画像処理半導体)だ。

 サーバークラスの「RTX Pro 6000D」をベースとし、従来のGDDR7メモリーを使用。先端パッケージング技術であるCoWoS(コワース)は用いないという。

 この仕様により、コストを抑え、米国の輸出規制をクリアすることを目指している。

 中国GF証券はこの中国向け新GPUの名称が「6000D」または「B40」になる可能性が高いと予測している。

H20修正版計画はここでストップ、Blackwellベースの新チップが本命か

 フアンCEOがHopperシリーズではない次期製品の可能性に言及する前の5月9日、ロイター通信は、エヌビディアがH20の性能をダウングレードしたチップを今後2カ月以内に中国市場に投入する計画だと報じていた。

 5月24日の最新報道によれば、同社は結局この計画を断念した。

  これにより、H20の単純な修正版ではなく、Blackwellアーキテクチャーに基づく全く新しい設計が、中国市場向け戦略の本命であることが濃厚となった。

 早ければ6月にも量産開始というスケジュールは、同社がこの状況に迅速に対処しようとしている姿勢の表れだ。

 情報筋によると、エヌビディアはこれとは別に、もう一つの中国向けチップを開発中で、こちらは9月にも生産開始するという。

背景:複雑化した米政府の対中規制、最新の規制要件も明らかに

 一連の動きの背景には、米政府による対中輸出規制の複雑な経緯がある。
 エヌビディアは、バイデン前政権下で導入された輸出規制に対処するためにH100に代わる「H800」を開発した。だがこれは2023年10月に禁輸対象になった。

 そこでH20を開発したものの、2025年4月、このH20に対しても輸出ライセンスの取得を義務化。これにより事実上、中国市場でのH20の販売が困難になった。

 その結果、エヌビディアは45億ドル(約6500億円)の在庫を評価損として計上せざるを得なくなった。フアンCEOは150億ドル(約2兆1800億円)の売上機会を失ったと説明した。

  最新の輸出規制では、GPUのメモリー帯域幅にも新たな制限が課された。これはAIワークロードに不可欠なデータ転送速度の指標だ。

 米証券大手ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループの推定では、新規制はメモリー帯域幅を1.7~1.8テラバイト毎秒(TB/s)に制限している。

 H20が4TB/sの能力を持っていたことと比較すると大幅な性能低下となる。
 GF証券は、新しいBlackwellベースのGPUがGDDR7メモリー技術で約1.7TB/sを達成し、規制の範囲内に収まると予測する。

  バイデン前政権末期の1月に発表された「AI拡散に関する枠組み(U.S. Framework for Artificial Intelligence Diffusion)」は、大半の国へのAIチップ輸出を制限することを目的としていた。

 トランプ大統領は、この規則を撤廃する意向を示した。

 フアンCEOも、「これまでのAI輸出規制は誤っている」とし、米国の技術力を世界で最大限に活用することに焦点を当てるべき、との考えを示している。
 その一方で、中国に対する規制は依然、維持・強化されており、対中規制の全体像は依然として流動的だ。

中国市場の重要性とNVIDIAのジレンマ、シェア急落

 フアンCEOは一貫して「中国市場はエヌビディアの成長に不可欠」と公言してきた。

 実際に、米当局がH20に対する新たな輸出ライセンス要件を発表した直後の4月下旬にも北京を訪問し、中国当局者らと会談している。

 エヌビディアの2025会計年度(2025年1月期)における中国市場の売上高は171億ドル(約2兆5000億円)に達し、総売上高の13%を占めた。

  ただ、相次ぐ規制強化により、同社中国事業の収益比率は低下傾向にある。2025会計年度の中国市場の売上高比率13%は、前年の17%、2年前の21%から減少している。

 フアンCEOが台北で記者団に語ったところによると、現在のエヌビディアの中国市場シェアは、米国の輸出規制が影響を及ぼし始めた2022年以前の95%から、50%にまで落ち込んだ。

 主な競合相手は、「昇騰(Ascend)910B」チップを製造する中国・華為技術(ファーウェイ)だ。

 フアンCEOは、「米国の輸出規制が続けば、より多くの中国顧客がファーウェイのチップを購入することになる」と警戒感をあらわにした。

  今回の安価なBlackwellチップの投入計画は、シェアが縮小しつつも依然として巨大な市場を手放すわけにはいかない、というフアンCEOの強い意志と、従来アーキテクチャーでの対応の限界というジレンマの表れと言えるだろう。

中国AI開発、試練と国産化の道 NVIDIAは次世代戦略が焦点に

 米政府による一連の措置は、中国企業のAI開発にさらなる制約を課すことになる。

 高性能AI半導体へのアクセスが一段と困難になることで、開発ペースの鈍化は避けられないとの見方が強い。

 その一方で、ファーウェイ傘下の海思半導体(ハイシリコン)などが開発する中国国産半導体へのシフトが一層加速する可能性がある。

  エヌビディアにとって、Blackwellベースの新チップ投入は、中国市場での成長鈍化を補い、かつ米規制にも対応できる製品ラインアップの構築に向けた具体的な一歩となる。

 フアンCEOの「Hopperではない」発言と、それに続くBlackwellチップの詳細報道は、同社が次世代戦略へと確実に移行しつつあることを示している。

  AI分野における技術覇権を巡る米中の対立は今後も続くとみられる。
 エヌビディアをはじめとする世界の半導体産業、さらにはハイテク産業全体の動向に引き続き大きな影響を与えることになる。

小久保 重信
同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、JBpress『IT最前線』や日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」で解説記事を執筆中。

連載にはダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19~20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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