「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.516 ★ 日本の外食、中国展開加速 需要回復で、100兆円市場を開拓

2024年07月26日 | 日記

NNA ASIA

2024年7月26日

日本の外食企業が中国本土での展開を加速している。中国でも人気の高い日本式の居酒屋やラーメン店で、フランチャイズ方式を通じて積極的に店舗網の拡大に乗り出そうとする企業もある。景気の不透明感を背景に足元では節約志向が強まっているものの、本土の外食需要は回復が続いており、各社は日本円ベースで100兆円を超える巨大な外食市場を狙って出店を急ぐ。【吉野あかね】

ワタミが展開する居酒屋「三代目鳥メロ」の中国本土1号店=広東省深セン市(同社提供)

ワタミ(東京都大田区)は5月、居酒屋「三代目鳥メロ」を広東省深セン市にオープンした。直営店での中国本土への再進出は4年ぶり。

本土1号店「三代目鳥メロ南湖時代店」では、中国のブランド地鶏の一つである「清遠鶏」をチルドの状態で丸ごと仕入れ、串焼きや串揚げをリーズナブルな価格で提供する。座席数は42席。

メニューは日本と同じ味を再現することにこだわり、今後は地元の人が好む味付けの商品も加える方針。ワタミの担当者によると、既に半数以上がリピーターとして来店しているといい、「日本の居酒屋スタイルをそのまま楽しんでいただくというこだわりに対して、強い手応えを感じている」と話す。

8月には上海市に本土2号店を出店する計画。今後は数を増やしやすいフランチャイズでの展開も視野に入れつつ、まずは本土で三代目鳥メロの認知を広げることに注力し、店舗数を増やしていく考えだ。

ワタミは2005年、深セン市に「居酒屋 和民」を出店し、ピークの14年には本土で42店を展開。新型コロナウイルス流行を受けた需要低迷に伴い、20年に本土から撤退したが、「14億人の人口規模は魅力的」(同担当者)として、再挑戦に向けて水面下で準備を進めてきた。

海外事業では価格帯や立地、現地のニーズに合わせた複数のブランドを展開しており、「チャンスがあれば他のブランドでも挑戦することを考えている」と本土事業の拡大に意欲を示す。

■複数ブランド展開も

トリドールホールディングス(東京都渋谷区)は、複数ブランドで本土市場の開拓に乗り出す。

今夏には上海市に焼き肉丼店「肉のヤマ牛」の本土1号店を出す計画。香港など中華圏では将来的にフランチャイズで500店以上の出店を目指す。

肉のヤマ牛は肉の鮮度にこだわり、注文を受けてから来店客の前で焼き上げることでできたての状態で提供するのが売りだ。香港で4月にポップアップ店を出店したのを皮切りに、グローバル展開に乗り出した。

上海市では4月にラーメン店「ずんどう屋」の本土1号店を開業。ずんどう屋は濃厚な豚骨スープと自家製麺した2種類の麺を売りにする。年内には上海市で2号店の出店も計画しており、本土で200店以上のフランチャイズ店を出す構想だ。

■新サービス導入

中国本土市場で新たなサービスを取り入れる企業もある。

FOOD&LIFE COMPANIES(F&LC、大阪府吹田市)が展開する回転ずし「スシロー」は、天津市で今月27日にオープンする店舗に新サービス「デジロー」を導入する。デジローは、回転レーンにすしを流す代わりに、各テーブルに設置された150インチの大型モニターに約200種類の商品を映して流し、タッチして注文すると座席に商品が届く仕組み。日本では昨年9月に取り入れ、海外では中国が初の導入先となる。注文額に応じて遊べるゲームも取り入れる。

F&LCの子会社、北京寿司郎餐飲の松田一成董事総経理によると、中国ではファミリーやカップルなど複数人で利用する客の割合が高く、食事をしながらエンターテインメントとしても楽しめるデジローとの親和性は高いと見込む。飲食店でスマートフォンを使って注文や決済ができるモバイルオーダーに慣れている中国の消費者にとって、デジローのシステムは「受け入れてもらいやすい環境だ」ともみる。回転レーンにすしを流さないことで、食品ロスが減らせるといった利点もある。

まずは天津市の1店舗で導入し、来店客の反応を見ながら既存店などへの導入も検討する。松田氏は「おいしいすしを提供するだけでなく、エンタメ性や先進性という付加価値を付けて顧客の体験価値を向上させたい」と意気込む。

中国での店舗出店も拡大している。スシローは21年に広東省広州市で本土1号店を開業し、広東省や重慶市などに約40店舗を構える。8月以降、北京市でも出店を広げていく考え。

スシローが新店舗に導入した「デジロー」を操作する来店客=24日、天津市

■堅調に伸びへ

中国の外食市場は新型コロナウイルス禍を経て回復傾向にある。旅行人気の高まりを受けた外食需要の拡大などが押し上げ要因だ。

中国本土の飲食業界の売上高は23年に前年から2割増の5兆2,890億元(約114兆円)となり、過去最高額を記録した。24年1~6月も前年同期比7.9%増の2兆6,243億元と伸びを維持している。

今後も右肩上がりで推移する見通しで、中国市場調査会社の艾媒諮詢(IIメディアリサーチ)は、本土の飲食業界売上高が25年に5兆6,712億元になるとみている。

規模が拡大する一方で、外食業界の競争は近年激しくなっている。景気や政策の動向を背景とした接待・会食需要の落ち込みなどが痛手で、本土の飲食店数は20年以降減少が続く。23年末時点の総数は770万店となり、19年時点の900万店超から大幅に減ったとする報告もあり、中でも高級店が打撃を受けているとの指摘も出ている。

足元でも状況は変わらず、中国の飲食業界団体、中国烹レン協会(レン=食に壬)は今年1~6月の外食市場について「飲食店の競争は激しく、閉店率が高まり経営者への圧力が強まった」と振り返った。

日系企業でも撤退の動きが出ており、ハンバーガー店「モスバーガー」を展開するモスフードサービスは6月に中国本土で展開する6店全てを閉店し、本土事業から撤退した。同社は「個人消費の低迷などで不採算が続いており、新型コロナ流行後の売り上げ改善が見込めなかった」と説明した。

消費者は価格に敏感になっており、中国の大手外食チェーンはメニューを値下げしたり、低価格店の出店にかじを切ったりして価格戦略を見直す動きもある。消費者の金銭感覚が変化する中で、北京寿司郎餐飲の松田氏は「初期投資のコストを上げてでも、新しい付加価値を提供する意味は大きい」と狙いを語る。

日本の外食企業にとっては、訪日旅行ブームや日本のアニメやドラマの影響で日本食の認知度が高まっていることが追い風になる。日本の農林水産省によると、日本食を提供する飲食店は23年時点で中国本土に7万8,760店あり、海外では国・地域別で最多。19年の約6万5,000店から大きく増え、コロナ禍で飲食店舗数が減少した市場の流れに逆行した。14億人の人口を抱える中国本土市場の開拓余地は大きい。

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