「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.534 ★ 中国政権中枢でついに「習近平への公開造反」!露骨な首相外しに  李強がブチギレて「習近平礼賛拒否」の内幕…そして解放軍でも不満顕在化

2024年08月02日 | 日記

現代ビジネス (石 平:評論家)

2024年8月1日

習近平礼賛に背を向ける李強首相

李強(右)と習近平  by Gettyimages

中国の李強首相が、とうとう忍耐の限界に達し、「切れて」しまったようだ。18日に閉幕した中国共産党第二十期中央委員会第三会全体会議(三中全会)後の重要会議で、本来、行うはずであったろう習近平国家主席の指導体制への礼賛に「背」を向けてしまったのである。 

 李強首相(=国務院総理)がそのトップを務める、中国の中央政府である国務院が開いた「三中全会の精神を学ぶ会議」でのことだ。 この会議は、国務院だけでなく、全人代常務委員会、政治協商会議、そして中央規律検査員会という中国の最高機関がそれぞれ並行して開催したもの。

7月20日付けの中国共産党機関紙「人民日報」によると、それぞれの会議では、主催者である李強・国務院総理、趙楽際・全人代常務委員会委員長、王滬寧・政治協商会議主席、李希規律検査委員会書記の4氏が各々の会議で「重要講話」を行っている。

そのうち、趙楽際、王滬寧、李希はそれぞれ、各自の会議で、「2つの確立」、すなわち「習主席の指導的地位の確立と習近平思想の指導理念としての確立」に言及し、今では政治の場で欠かせない定番文句を使って習主席への忠誠心の表明を行っている。

中でも王滬寧に至っては、「2つの確立」について「“2つの確立”の決定的意義」を強調すると同時に、「今までの輝かしい業績は全て、習近平総書記の舵取りによるものであり、習近平思想の導いたものである」と、習主席に対する最大限の賛辞を捧げた。

しかし4人の中では唯一、国務院総理である李強は、他の3人とは鮮明の違いを出して見せた。講話の中でこの「2つの確立」に対する言及を全くおこなわなく、また習主席のことをことさらに賛美することもしなかったのである。

長期のいじめに耐えかねたか

本来、この4人の中で、李強こそは首相という習主席に最も関係の深い側近であることから、誰よりも習主席に忠誠を尽くさなければならない立場にあるはずだ。 しかし李首相は、国務院会議という公の場での講話において、しかも人民日報によって公開される形で公然と「2つの確立」を無視した。中国の政治文化において、これはまさに重大な意味を持つ政治的行動であって、李首相による「公開造反」といっても過言ではない。

捉えようによっては、李首相はここで、自分はもはや習主席の側近でもなんでもなく、「習近平の指導地位も習近平思想もクソッタレだ!」と宣言したようなものである。

昨年3月の全人代で国務院総理になって以来、習主席がさまざまな重要な場面で李首相外し、李首相排除を行ってきたことは1月25日に公開した「習近平側近集団で大権力闘争の予兆~早くも李強首相はしご外し、代わりに台頭の蔡奇ら福建組が金融危機対策の指揮権握った」で指摘した通りのことである。 どうやらここに来て、李首相がとうとう忍耐の限界に達して切れてしまったのだろうか。

露骨な李強外し

そして同時に、極めつけの李強首相外し中身が、明らかになった。 この会議の内容が報じられたその2日後の7月22日、人民日報は一面で、今度は三中全会で採択された「さらなる改革深化に関する中共中央の決定」の制作過程に対する習近平主席の説明報告の全文を掲載した。

その中で習主席は、昨年11月の中央政治局会議が「決定」の草案づくりと制作を決定し、自分が「組長」とする制作組(制作チーム)もその時に設置されたと説明した。そして習主席によると、この「制作組」では、自分が「組長」を務める以外に、政治局常務委員の王滬寧・蔡奇・丁薛祥の3名が「副組長」を務めていたという。

つまりここでも、国務院総理の李強氏が排除されているわけである。 しかし本来、2029年までの改革や経済政策の策定に関わるこの「決定」の制定には、国務院総理こそが一番関わるべき人物である。李首相はそこから外されるようなことは本来ならありえない。それでもあえて李首相を「制作組」から排除したことは、要するに習近平主席としてはもはや、政権の最高意思決定には李首相を関わらせないと腹を決めたことを意味する。

しかも、2029年までの政権の方向性に関する政策決定から李首相を排除したことは、要するに今後の5年においても「李首相は要らない」ということになるのだ。これでは、首相の任期が後3年半もあるはずの李首相は今の時点ではすでに事実上の「死刑判決」を受けて完全に「死に体」となっているのである。

こうした事態が起きている中で、今まで散々虐められていても習主席に従順だった李首相がつい切れた模様なのである。問題は、李首相は半ば「公開」で習主席への造反を表したことで、さらに習主席自身が例の「制作組」から李首相を排除したことを自ら公表したことで、2人の対立はすでに公然のものとなり、改善が考えられないものとなったことである。

もちろん、流石の習主席でも相手が首相となるとその首まではそう簡単に切ることはできない。以前、習主席は秦剛外相や李国防相の首を切ったがそれと同じわけにはいかない。李首相は死に体のままで首相職をしばらく続ける可能性もある。しかし2人の対立と相互不信は今後も続く中で、中国の中央政治はますます機能不全に陥って混迷を深めることとなろう。

解放軍も忍耐の限界が近づいている

こうした中で7月27日、解放軍機関紙の「解放軍報」はその二面の「強軍論壇」において、「党内政治生活の低俗化は戒めるべき」との論評を掲載した。 そしてその中では次のような意味深長の言葉が散りばめられていた。

「いま、個別なところでは党内政治生活が正常さを失い、個人は党組織の上に凌駕し、家長制的なやり方で、鶴の一声で物事を決めるようなことが起きている」。 この文章は、「軍」の話としてではなく、「党」を指して「党内政治生活」の不正常さを問題にしているが、そこに指摘した「個人は党組織の上に凌駕し、家長制的なやり方で、鶴の一声で全てを決める」との話は当然、党組織の上に立つ人のことを指している。そして今の中国政治の文脈の中では、これを読んだ大半の人はおそらく、心の中では「あの人のことじゃないのか」と思ってしまうであろう。

つまりこの文章は、ワンマン独裁者習主席のことを暗に批判している可能性があるのである。そして解放軍報の編集責任者がこういった政治的機微を知らないはずはないから、これは軍ぐるみのささやかな「造反行為」である可能性で無いわけでもない。その背後にはやはり、これまでに取り上げた、習近平の軍に対する深い不信感と度の過ぎた軍粛清の展開があるのかもしれない。

どうやら側近の李首相だけでなく、解放軍の習主席に対する忍耐もいよいよ限界を迎えようとしている。内部からの爆発はいずれか現実となっていくのであろう。 ……

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