「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.33 ★ 中国住宅市場は調整長期化へ、時間をかけた“漢方治療”はさらなる停滞につながる

2024年01月28日 | 日記

DIAMOND online (オックスフォード・エコノミクス 在日代表 長井滋人)

2024年1月22日

販売・建設ペースが示す中国住宅市場の
需給調整に要する年数

販売・建設ペースが示す中国住宅市場の需給調整に要する年数 出所:Oxford Economics

 今後数年の中国経済は、4%程度の成長率維持が精いっぱいではないか──。そう悲観せざるを得ない理由は、行き過ぎた住宅市場の調整が長期化することだ。

 中国の不動産バブルは2021年をピークに調整局面に入り、住宅の販売や着工ペースの減少が続く。多額の借り入れや住宅購入者の前渡し金を原資に住宅開発を進めてきた不動産開発業者は、資金繰りに四苦八苦している。

 この事態に当局の対応はどうか。販売面では、不動産投機抑制策の緩和や銀行への働き掛けで梃入れをしている。建設面では、不動産開発業者が完成住宅の受け渡し前に倒産しないよう、銀行を通じて資金繰りの支援を行っている。

 しかし、このような販売や建設の取引フローの維持だけでは、増え続ける膨大な住宅在庫の処理には「焼け石に水」だ。調整圧力が何年も続くことは、簡単な試算で明らかになる。

 中国国家統計局が推計する販売中の完成住宅在庫を現在の販売ペースで割ると、処理には3.6年要する。ただ、中国は販売後に住宅が完成するケースが多く、未完成物件も勘案すると事態はより深刻だ。

 現在の住宅の建設ペースをならすと59億平方メートルとなるが、販売ペースは10億平方メートル弱にとどまる。この需給のギャップが続くと、現在建設中の住宅を売りさばくには6年を要することとなる。

 これらの試算は、現在の販売ペースが維持できる前提だ。しかしながら、投機的な需要を除いた住宅への実需を人口動態、都市化率、世帯の平均人数を基に試算すると、中長期的に今後、販売ペースは低下傾向をたどることになる。

 中国当局は、金融危機後の欧米のような早期の思い切った不良債権やバランスシートの処理という外科手術は回避し、時間をかけた漢方治療の道を選んだようだ。

 時間をかけた不動産バブルの調整が長期停滞を招くことは、わが国の経験からも明らかだ。加えて、バブル処理の負担を負わされた銀行部門の体力がむしばまれると与信姿勢も慎重になり、停滞に拍車を掛けかねない。


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