「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.27 ★ 中国 「5%成長達成」の裏で習近平が金融界に戒厳令 空振りの「GDPフライング発表」に映る切実

2024年01月28日 | 日記

東洋経済オンライン (西村 豪太 : 東洋経済 コラムニスト )

2024年/1月/18日

1月16日、中国共産党の金融に関する勉強会で演説する習近平国家主席。金融リスクへの現状認識は「戒厳令」を思わせる厳しさに(写真:新華社/アフロ)

不動産不況の長期化やデフレ傾向が懸念された2023年の中国経済。その総仕上げとなるGDP(国内総生産)統計が1月17日の午前11時(日本時間)に公表された。最大の注目点が、実質成長率が「前年比5%前後」という政府目標を超えるかどうかだった。2024年に政府が景気対策にどれだけ踏み込むかの判断材料になるからだ。

発表前日に統計データをポロリ

ところが、発表前日に思わぬ「フライング」があった。スイスのダボス会議で、李強首相が「中国経済は全般的に回復・改善し、2023年の成長率は5.2%前後になる」とあっさり明かしてしまったのだ。

統計数字の事前流出が望ましくないのは中国でも同じだ。2011年には、国家統計局の官僚が発表前の統計データを漏洩した疑いで取り調べを受けたことが報じられている。「目標は達成できる見通し」とほのめかす程度ならともかく、国家指導者が数字そのものを事前に明かすのは異例だ。

それだけ「超過達成」をアピールしたかったのだと思われる。李首相は大規模な景気刺激策に頼ることなく目標を達成したことを強調し、中国経済は「着実な進歩」を遂げているとした。今後の方向性については「高質量(質の高い)」成長を目指すという。「高質量」は習近平国家主席が最近強調している経済政策のキーワードだ。

李首相は、ダボス会議に集まった世界の経営者に向かって対外開放政策の継続を約束した。そのうえで、「過去5年間、対中直接投資の収益率は約9%だった。これは国際的にも比較的高い水準にある。中国市場を選択することはリスクではなく、チャンスだ」と強調してみせた。

理由としては、中国の市場の潜在力の高さがあるという。李首相は「中国の中所得層は現在4億人であり、今後10年程度でその数は2倍の8億人になる」「中国の都市化率はまだ先進国の平均より10ポイント以上低い。また、3億人近い農民工が市民権を得るプロセスを加速させており、住宅、教育、医療などに大きな需要をもたらす」などと好材料を列挙してみせた。

中所得層の拡大も都市化率の向上も、中国政府の「営業トーク」の定番だ。いま中国は海外からの投資を切実に求めている。中国の対内直接投資は2023年7~9月期に統計開始以来初めてマイナスを記録した。李首相としては、成長率の「目標達成」を手がかりに中国経済への期待値を上げたいという思惑があったのだろう。

2023年12月中旬に行われた中央経済工作会議では、2024年の方針の一つとして「経済宣伝、世論の誘導を強化し、『中国経済光明論(中国経済の先行き楽観論)』を高らかに謳う」ことが打ち出された。習主席の側近中の側近として知られる李首相は、統計のフライング発表というかたちで世界に向かって「光明」を謳い上げた。

そのメッセージがダボスに集った経営者にどれだけ響いたかはわからないが、株式市場は冷淡だった。中国の代表的な株式指数である上海総合指数は17日の終値で2833.6ポイントと、前日より2%あまり下落した。

GDP統計と同時に公表された2023年1〜12月の不動産開発投資は前年同期比9.6%減となり、1〜11月から下落幅が広がった。成長率の超過達成くらいでは、不動産不況をめぐる投資家の不安はぬぐえない。IMFは2024年の中国経済の成長率を4.2%と予想しており、2025年以降も成長率の低下を見込んでいる。

習近平主席が異例の会議を招集

李首相が対外的な広告塔としての役割を果たしていたのとまさに同じ日。習主席の姿は北京の中央党校にあった。共産党の幹部候補を育成するための学校で、習主席も国家副主席時代には校長を兼務していた。

「金融の高質量な発展を推進するための勉強会」と銘打たれたセミナーの開催はGDP関連報道の陰で目立たなかった。だが、集まった顔ぶれは内外の中国金融ウオッチャーを驚かせた。閣僚・省指導者レベル以上の共産党幹部が勢ぞろいする、異例の規模だったからだ。

ひな壇には習主席のほか、共産党最高指導部である常務委員会メンバーが外遊中の李首相をのぞいて全員集合した。金融のような専門性の高い分野で、これほどの動員がかかることは珍しい。

李首相がダボスで語った明るい未来と、北京で習主席が示した厳しい現状認識のコントラストは強烈だ(写真:ブルームバーグ)

その開幕式で習主席は「中国の金融には国情に適した特色があるべきで、西側の金融モデルとは根本的に異なる」「金融リスク、特にシステミック・リスクの予防と解決に努めるべきだ。金融監督には長い牙とトゲが必要だ」と演説した。尖った言葉づかいから、習主席の危機感の強さが伝わってくる。

1100兆円の隠れ債務が大問題

中国経済の矛盾は金融に集約されている。地方政府は不動産(土地使用権)の売却収入で財政をやりくりし、景気対策のためのインフラ投資の原資にもあててきた。その結果、地方政府の資金調達機関である「融資平台」の債務は増加の一途だ。

中国では地方政府の「隠れ債務」といわれるが、その規模はIMF(国際通貨基金)の推計では2022年の時点で57兆元(約1100兆円)に及ぶ。不動産の値下がりは、こうした構造を根底から揺るがすことになる。

不動産不況のもとで金融リスクが拡大しているなか、習政権は国務院(内閣)から権限を奪って共産党への一極集中体制を築き、危機管理を強化しようとしている。党側には、金融リスクの管理に当たるべき専門家への不信もあるようだ。2023年には金融当局や国有銀行幹部の汚職摘発が続いた。

2023年10月には習主席の肝いりで中央金融工作会議が開催され、「金融強国」の建設に向けて共産党の指導を強化する方針が示された。12月の中央経済工作会議を経て、1月には中国人民銀行(中央銀行)も党の方針にしたがって金融緩和とリスク削減を進めると表明している。金融分野へのグリップの強化ぶりは「戒厳令」とでも形容すべきものだ。

方向性は決まったはずなのに、わざわざ全国から幹部を集めたのは、なぜなのか。中国の金融に詳しい大阪経済大学の福本智之教授(元日本銀行国際局長)は、その意義付けについて「中央金融工作会議の延長線上だが、攻めと守りで金融を強くして、システミックリスクを起こさせないのだというメッセージを伝えたかったのではないか」と分析する。

「攻め」と「守り」のうち、より優先度が高いのは「守り」だろう。「攻め」の内容は中央金融工作会議で宣言された金融強国の建設だ。究極的には、基軸通貨であるドルを握るアメリカに経済の首根っこを押さえられている現状を打破するのが目的だとみられる。かなり長い時間軸での取り組みだ。

一方「守り」では、監督管理の強化とリスク処理メカニズムの確立に強いメッセージを出している。不動産のリスク処理に対してはまだ目立った動きはないが、地方債務への対応に加え、2023年秋から地方金融機関の合併再編が加速している。まさに「いまそこにある危機」を見据えた内容だ。

金融リスクの処理は待ったなし

習政権は、金融リスクの処理は待ったなしという意識を強めているとみられる。2024年には地方政府の債務のリストラ、中小金融機関の清算と合併などが一層進む可能性がある。

習主席のリーダーシップのもと、共産党に権限を一元化することで問題処理のスピード感は増しそうだ。ただ、「西側の金融モデルとは根本的に異なる」部分を強調しすぎて市場メカニズムを活かせなくなれば、経済効率の低下を招くだろう。

金融関連で繰り返し同趣旨の会議を開いている裏には、習指導部に対する国務院や地方の抵抗がありそうだ。水面下での主導権争いの激しさをうかがわせる。中長期での経済政策を定める共産党の重要会議「3中全会」は、2023年中に開かれるとみられていたが、まだ開催のメドがたっていない。

外資を呼び込むための「対外開放」の旗印と、危機管理を大義名分とした強権発動を両立できるのか。ダボスで李首相が語った明るい未来と、習主席が示した厳しい現状認識のコントラストは象徴的である。2024年は中国経済にとって大きな分岐点になりそうだ。

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No.26 ★ 習近平、孤立…中国海軍が世界から猛批判!そのウラで現実味を帯びる人民解放軍「寝そべり化」の《ヤバすぎる事情》

2024年01月28日 | 日記

現代ビジネス (藤 和彦:経済産業研究所コンサルティングフェロー)

2024年1月18日

中国艦船へ向けられた「疑惑」

photo by gettyimages

 パレスチナのハマスのイスラエル奇襲攻撃以降、激しさを増す「ガザ戦争」だが、周辺の紅海やアラビア海の武装勢力フーシ派の商船への攻撃も国際的な問題に発展している。

前編『ルール無視の「中国海軍」に世界が大バッシング…! そのウラにある「習近平の大粛清」への《ヤバすぎる懸念》』でお伝えしたとおり、こうした中でいま、同海域に展開する中国艦船への批判が高まっている。  

SNSに「昨年11月後半、同海域に派遣されていた中国海軍の艦艇3隻が、商船からの救難信号を無視した事案が発生した」との批判が上がったのだ。  

これは、近くを航行するすべての船が救難に駆け付けなければならないと定める国際法を無視する行為。その真偽はまだ明らかではないが、これを報じた12月27日付のニューズウィーク日本版によれば、アントニー・ブリケン米国務長官が、12月に王毅外相との電話会談で、国際的な責任を果たすよう求めたという。  

 こうしたニュースに触れ、習近平国家主席による軍に対する粛清の動きが関係しているのではないかと筆者は考えている。

人民解放軍に蔓延する「寝そべり族」の憂鬱

 12月29日、全国人民代表大会(全人代)で軍高官9人の代表資格が取り消されたが、槍玉に挙がっているのは核・ミサイル部隊を運用する「ロケット軍」だ。多額の予算が配分されるロケット軍では汚職が蔓延しており、そのせいで同軍の作戦実行能力に疑義が生じている。  習氏は中国軍の立て直しに躍起だが、事態は深刻だと言わざるを得ない。  

不動産バブル崩壊の悪影響が中国軍にも及んでいるからだ。2021年下期以降、地方政府の公務員の給与削減が始まっているが、軍人にも給与削減の波が及びつつある。地方公務員の場合と同様、軍人給与の財源は土地使用権の売却収入に依存しており、不動産市場の不調でこれが当てにできなくなったことが災いしている。  

財政難に陥った地方政府はこぞってリストラを進めているが、そのせいで公務員の間の「寝そべり化」がさらに進むのではないかと懸念されている。寝そべりとは「仕事をしないで寝そべって何もしない」というライフスタイルのことだ。

習近平の「粛清」と政府の「寝そべり化」

政府機関の士気の低下が懸念されている…Photo/gettyimages

 中国では近年、努力をしても報われない社会に絶望する若者の間で寝そべり化が進んだと言われるが、昨年初めごろから「中国政府内でも寝そべり化が始まっている」と指摘されていた。

 毛沢東の手法を強引に踏襲しようとする習近平国家主席に対する反発から、面従腹背に徹し、実質的には何もしない公務員が増殖中だと言われていた。

 給料が減る一方、不動産絡みの汚職の追及が進む状況下で、地方政府の公務員たちは保身のために罪のなすりつけ合いが始まっており、寝そべり化が今後ますます猖獗を極めることになるだろう。  気になるのは「地方政府と同様の状態になりつつある中国軍内部でも寝そべり化が始まっている」との懸念が生じていることだ。

習近平が見る「悪夢」の正体

人民解放軍の寝そべり化は習近平の「悪夢」となりかねない…Photo/gettyimages

 アデン湾に派遣されている中国艦船が自らの任務を放棄しているのは、船長を始め乗組員の間で寝そべり化が始まっているからではないか。  

昨年、中国で起きた労働争議の数は前年の2倍となり、今年はさらに増加することが確実視されている。  国民の不満がかつてなく高まる中、中国軍内で寝そべり化が蔓延すれば、共産党政権にとって悪夢以外の何ものでもない。  

軍の寝そべり化がさらに深刻さを増すようであれば、中国の政治危機に発展するのは時間の問題となるのではないだろうか。  さらに連載記事『習近平の大誤算…! 現実味を帯びはじめた「新型コロナ“武漢研究所“流出説」で、トランプが公言する中国への「巨額賠償」、その悲惨な中身』でも、中国が抱える深刻な懸念を詳しく解説しているので参考にしてほしい。

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No.25 ★ 【速報】中国 2023年のGDP成長率は前年比プラス5.2% 政府目標の「プラス5%前後」達成も本格的な景気回復には至らない状況

2024年01月28日 | 日記

TBSテレビ

2024年1月17日

中国国家統計局は、去年1年間のGDP=国内総生産の実質成長率について、前の年と比べプラス5.2%だったと発表しました。政府が目標としていた「プラス5%前後」を達成したとしています。

おととし、移動を厳しく制限する「ゼロコロナ政策」によって成長率が3.0%と低迷したため、その反動によって去年の成長率が押し上げられた格好です。

しかし足元では消費の冷え込みが続いており、本格的な景気回復には至らない状況です。

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No.24 ★ 中国の日系48%、23年に「投資縮小・投資なし」

2024年01月28日 | 日記

NNA ASIA

2024年1月16日

会見に臨む中国日本商会の本間哲朗会長(右)=15日、北京市

中国に進出している日系企業などでつくる中国日本商会は15日、在中国の日本企業のうち、2023年に投資額を減らしたり投資をしなかったりした企業が48%だったとのアンケート結果を発表した。23年9月に実施した前回調査から1ポイント拡大した。企業からは「中国経済の先行きが不透明なため、投資に積極的になれない」とする声が多かった。

アンケートは中国全土の日系企業約8,000社を対象に実施。今回は23年11月23日~12月13日に行い、1,713社から有効回答を得た。内訳は製造業が1,037社、非製造業が665社など。

23年の投資額を「22年より減らす」(25%)と「23年は投資をしない」(23%)の回答は合わせて48%だった。「大幅に増加させる」と「増加させる」の15%(前回調査比1ポイント縮小)を大幅に上回った。「前年と同額」は38%で、前回調査から1ポイント拡大した。

投資を減らすと答えた企業からは、「自社の業績が低迷しており、中国経済の先行きも不透明で投資効果が見込めない」や「東南アジアやインドなどと比較して投資効果が低くなっている」など、中国市場の先行きの不確実性を指摘する声が上がった。

22年と同額とした企業からも、「昨年までは積極的に投資を行ってきたが、中国経済の先行きが不透明なため」や「地政学リスクを考慮して、増額投資はできない」とする声が出た。

一方で、投資を増加させるとした企業からは、「新製品の生産のための工場・プラントの新設。新設備の取得」や「新型コロナウイルス対策の終了に伴う事業拡大を追求」など前向きな見方もあった。

■ビザなし渡航再開希望の声多数

中国の事業環境について尋ねたところ、「非常に満足」と「満足」との回答が54%となり、前回調査から3ポイント拡大した。改善を求める比率は46%で、前回から3ポイント縮小した。

事業環境全体では小幅な改善が見られたが、改善を求める企業からはビザ(査証)なし渡航の再開を求める声が110件上がったとし、商会は「ビザなし渡航の再開が投資拡大につながる」との見方を示した。

中国は23年に新型コロナ対策を事実上撤廃し、日系企業も昨年からビジネスの再開、拡大に動いているが、ビザの問題で日中間の往来が滞っているという。

若手労働者が不足しているという声も多数あり、製造業の現場で人材のミスマッチが起きていることがうかがえると指摘した。

■中国市場、「重要」が5割

24年以降の中国市場の位置付けでは、「一番重要な市場」(26%)と「三つの重要な市場の一つ」(25%)を合わせて51%だった。製造業では、全ての業種(機械、素材、耐久財、半耐久財・非耐久財)でこの比率が50%を上回った。

一方、24年の景況予測に関する設問では、「悪化」(12%)と「やや悪化」(27%)を合わせて39%で、「改善」と「やや改善」の25%を上回った。「横ばい」は37%だった。

中国日本商会の本間哲朗会長(パナソニックホールディングス副社長)は北京市で開いた会見で、アンケート結果について「日本企業は中国で成長できる空間を確立しており、前向きに中国市場を捉えている」と話した。

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No.23 ★ 中国、デフレ懸念が深刻化 国内需要が低迷する中、輸出攻勢を強め、世界で貿易を巡る緊張が悪化も

2024年01月28日 | 日記

The Wall Street Journal Stella Yifan Xie

2024年1月16日

Photo:NurPhoto/gettyimages

【香港】中国が近年にない深刻なデフレに陥っている。世界第2位の経済大国の需要低迷は、全世界に悪影響を及ぼしかねない。

 多くの中国人が経済の先行きを懸念し、支出に消極的だ。12日発表の公式データによると、中国の12月の消費者物価指数は3カ月連続で下落、生産者物価指数も15カ月連続のマイナスだった。

 モルガン・スタンレーのエコノミストは中国の現状を1998年のアジア金融危機以来「最長かつ最も深刻」なデフレと表現。アジア金融危機では過熱したアジア各国の景気が後退し、回復するのに何年もかかった。

 西側の多くのエコノミストは最近まで中国で多少のデフレが起きることを歓迎していた。中国からの輸入品のコストが下がり、他地域のインフレ圧力の緩和につながったからだ。昨年の米国のインフレは一年を通じておおむね減速傾向が続いたが、12月には若干加速した。

 しかし西側のインフレ懸念が緩和する中、中国のデフレがさらに大きな懸念材料となった。デフレは中国で経済的苦境が続いていることを示しており、同国に進出している西側企業の売り上げが減少する可能性がある。

 また中国企業が過剰在庫の輸出攻勢を一段と強め、西側企業と競争を繰り広げ、貿易を巡る緊張がさらに悪化する恐れもある。



 欧州連合(EU)は昨秋、中国が安価な電気自動車(EV)を市場に大量に流入させているとして、中国政府の補助金が果している役割について調査を開始した。太陽光発電など他産業の企業も同様の懸念を示している。

 アブソリュート・ストラテジー・リサーチの新興市場担当エコノミスト、アダム・ウルフ氏は「中国の根強いデフレまたは極めて低いインフレによって貿易黒字が増加し、世界の他地域との間でより多くの貿易摩擦が生じる恐れがある」と述べた。

 こうした状況を受けて物価の下落を反転させ、成長を取り戻す取り組みの強化は中国政府にとってさらに喫緊の課題になりつつある。より強力な刺激策がなければ中国経済は1990年代に日本が経験したような負債デフレのスパイラルに陥りかねない。日本では物価の下落を受けて企業が賃金を削減し、消費者が購入を先送りした結果、需要がさらに低迷してデフレが進むという悪循環が起きた。

 モルガン・スタンレーの中国担当チーフエコノミスト、ロビン・シン氏は中国の「刺激策の規模とスピードが重要だ」と指摘。「デフレが長引けば長引くほど、大きな刺激策が必要になる」と述べた。

 中国税関当局が12日に発表した直近の貿易データはこうしたリスクの一部を浮き彫りにした。12月の輸出は前年同月比2.3%増と若干弾みがついたが、輸入は低調で、国内の消費者はまだ支出に慎重なようだ。

 貿易データによると、2023年の貿易は一年を通じて不調で、輸出は前年比4.6%減と7年ぶりに減少。米国向けの直接輸出は2019年以来初めて減少に転じた。米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを実施し、中国製に代わる製品を他から調達する米購入者が増える中、需要の後退を反映した。

 中国は西側から制裁を科されているロシアと関係を強化することで失った貿易を部分的に補った。昨年のロシアとの2国間貿易は過去最高の2400億ドル(約34兆8300億円)に達した。大量のガソリン車を含め、中国からロシアへの輸出は46.9%増加し、ロシアから中国への輸入も12.7%増えた。

 しかしノムラのエコノミストは「中国企業はロシア市場で存在を確立しているが、こうしたハイペースは2024年末まで続きそうにない」と指摘した。

 2023年の中国の貿易黒字は8230億ドルで、過去最高だった前年の8780億ドルからわずかに減少した。



 世界の他地域の需要が安定する中、アナリストは今年は昨年ほど輸出が中国経済の足を引っ張ることはないとみているが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)下やそれ以前の中国の景気が活況を呈していた頃のように輸出が成長の柱になるとは考えていない。世界の成長は依然として弱含んでおり、地政学的な緊張から西側企業は引き続き中国のサプライヤーに代わる調達先を探している。

 モルガン・スタンレーのシン氏は「中国が自国の経済問題を解決するのに輸出に頼ることができる時代は終わった」と指摘。政策当局は緊縮財政を放棄し、経済を消費主導にリバランスして、輸出以外に成長を後押しする方法を見つける必要があると述べた。

 中国ではコロナ規制解除後の経済活動の回復が失速。首脳陣は何カ月も国内需要を再喚起しようと躍起になっているが、消費者は不動産市場の低迷と若年失業率の高さに警戒感を強め、支出を減らし貯蓄を増やしている。

 それでも中国人民銀行(中央銀行)は昨年、中国のデフレは一時的との認識を示唆した。エコノミストがより強力な景気刺激策を繰り返し求めているが、政策当局者は消費者需要を押し上げる可能性のある現金給付など、家計の直接支援は行っていない。

 中国国家統計局が12日に発表したデータによると、12月の消費者物価指数は前年同月比0.3%下落したが、下落幅は11月の0.5%から縮小した。変動が大きいエネルギーと食品を除いた12月のコアインフレ率は0.6%だった。

 多くのエコノミストはデフレ圧力がそう簡単には反転しないとの認識を示している。

 ソシエテ・ジェネラルのアジア担当チーフエコノミスト、ウェイ・ヤオ氏は中国の消費者物価の上昇率は年末までに1%まで回復する可能性が高いが、価格への下方圧力はすぐには緩和しないと予想した。

「われわれの見解では、国内需要の低迷による中国のデフレ圧力はかなり長く続く可能性がある」と同氏は話した。

 2023年通年の消費者物価の上昇率は0.2%と中国当局が設定した3%前後の目標値を大幅に下回り、2022年末のコロナ規制解除後にインフレ率が急上昇するという1年前に一部が示した予想は実現しなかった。

 12月の生産者物価指数は前年同月比2.7%下落し、2022年10月以来15カ月連続でマイナスとなった。11月は3%の下落だった。

 中国国家統計局によると、石油価格の下落と一部の工業製品の低調な需要が生産者物価を圧迫した。

 中国当局は利下げや民間の企業経営者向けの優遇税制措置など成長を回復させるための措置を講じている。10月にはインフラプロジェクトに資金を供給するため1370億ドルの国債を追加発行した。

 こうした対策にもかかわらず、最近のデータを見る限り中国経済は7-9月期(第3四半期)に成長が改善したものの、その後は勢いを失っているようだ。複数の調査によると、工場やサービスセクターの活動は縮小している。また、新築住宅販売は引き続き低迷している。

 世界の投資銀行は今年の中国の経済成長率を4~4.9%と予想している。これは世界基準で見ると相対的に高いが、以前の中国と比べると著しい減速だ。多くのエコノミストは中国政府が5%前後という目標を維持するとみており、今後さらなる刺激策が講じられる可能性がある。

 シティのエコノミストは先月、顧客向けのメモで、デフレ懸念があることから中国が今年4-6月期(第2四半期)から政策金利を引き下げる可能性があると述べた。 「デフレ、信頼感、活動の間で起こり得る悪循環を避けるのに政策をちゅうちょする時間はない」とシティは述べた。

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